もし病気や事故で神経を損傷し、思うように体を動かせなくなってしまったら――。そんな時、リハビリを通して再び動く力を引き出し、回復への道を支えるのが神経系分野の理学療法士です。見えない神経の働きを読み解き、一人ひとりに合ったリハビリを行う専門家の仕事とは?今回は、その魅力に迫ります。
今回お話をお聞きした人
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森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 理学療法学科 教授/理学療法士 木内隆裕 先生
金沢大学医学部保健学科を卒業後、京都で理学療法士として勤務。その後、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻、日本学術振興会特別研究員DC2を経て、2013年4月より、森ノ宮医療大学保健医療学部(現 総合リハビリテーション学部)理学療法学科に着任。2024年4月より現職。※取材時
まずは知っておこう!理学療法士の仕事と専門性
理学療法士とは、病気やケガ、加齢などによって難しくなった「起き上がる」「立つ」「歩く」といった基本的動作能力の回復や維持を支えるリハビリテーションの専門職です。運動を通して筋力やバランス能力、心肺機能、神経機能などの改善を目指す「運動療法」と、温熱や電気刺激などを用いて痛みの軽減や体機能の改善を図る「物理療法」を組み合わせ、一人ひとりの状態に合わせたリハビリを行います。
理学療法士という国家資格は一つですが、こうした共通の知識や技術を土台に、実際には下図のようなさまざまな専門分野で活躍しています。
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神経系の理学療法とは?
神経系理学療法の対象となるのは、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患、脊髄損傷や頭部外傷など、脳や神経に障がいが生じた患者さんです。こうした病気では、脳から筋肉へ運動の指令を伝える神経の働きが損なわれるため、体を思い通りに動かしにくくなるほか、感覚やバランス、認知機能などにも影響が及ぶことがあります。そのため神経系理学療法では、「神経」という視点から体の状態を捉え、機能の回復や日常生活に必要な動作の獲得を目指してリハビリを行います。
関連記事:こちらをご覧ください。
脳卒中:https://therapia.morinomiya-u.ac.jp/category/senior-health/post-78.html
パーキンソン病:https://therapia.morinomiya-u.ac.jp/category/senior-health/post-32.html
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残された神経を生かして、「できる動き」を増やし、その質を磨く
脳や神経は、一度大きく損傷すると完全に再生することが難しく、以前とまったく同じ動きを取り戻すことは難しいとされています。しかし、脳から体へ運動の指令を伝える神経の道筋は一つではありません。一部が損傷しても、残された回路を働かせることで、再び体を動かせる場合があります。さらに、人の脳には、動きを繰り返し練習することで神経回路の働きを高め、新たな回路を形成する「神経可塑(かそ)性」という性質があります。
神経系の理学療法では、こうした力を生かしてリハビリを行います。例えば、指先の細かな動きが難しくても、腕全体を使ってコップを持つなど、残された力を生かして日常生活に必要な動きを身につけていきます。目指すのは、「元どおり」ではなく、その人が持つ力を最大限に生かし、「できる動き」を増やしながら、その質を磨いていくことです。
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「見えない神経」を読み解き、リハビリにつなげる
では、どの神経回路が働いているのか、どうやって見極めるのでしょうか。
神経回路そのものは、直接見ることができません。そこで理学療法士は、カルテや脳画像から損傷部位や程度を確認するとともに、姿勢や歩き方、手足の動き、筋肉の緊張など、体に現れるわずかな変化を丁寧に観察します。医師や作業療法士、言語聴覚士などとも連携し、さまざまな情報から「どの神経回路が働いているのか」「どのような動きを練習すれば動きやすくなるのか」を考え、実際の反応を確かめながらリハビリの方法を探っていきます。
目に見えない神経の働きを、さまざまな情報や体の反応から読み解き、一人ひとりに適したリハビリへとつなげる。そこに、神経系理学療法に携わる理学療法士ならではの専門性と面白さがあります。
関連記事:こちらをご覧ください。
作業療法士:https://therapia.morinomiya-u.ac.jp/category/medical-work/post-37.html
言語聴覚士:https://therapia.morinomiya-u.ac.jp/category/medical-work/post-4.html
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最新技術が広げる神経系理学療法の可能性
近年、神経系理学療法の分野では、ロボットやVR(バーチャルリアリティ)、※非侵襲的(ひしんしゅうてき)な脳刺激装置など、さまざまな最新技術の開発が進んでいます。
中でも注目されているのが、脳波などを利用したBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)です。脳は、体を動かそうとイメージするだけでも、運動したときと似た脳波を出します。例えば、脳卒中で指を動かしにくくなった患者さんが「手を握る」動作をイメージすると、その脳波をBMIが読み取り、手に装着した機器が握る動きを補助します。こうして、脳の「動かそう」という働きと実際の動きを結び付ける練習を繰り返すことで、神経回路が刺激され、運動機能の回復に繋がることが期待されています。
こうした技術の進歩は、これまで回復が難しいとされてきた重度の障がいをもつ患者さんにも、新たな可能性をもたらしています。
※手術をせずに、頭の外側から脳を刺激できる
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「わからない」からこそ面白い!神経系理学療法の魅力とは?
脳や神経の世界には、いまだ解明されていないことが数多くあります。ほとんど歩けない患者さんが自転車には乗れたり、体が傾いている患者さんが寝転ぶとまっすぐになったり――。そんな不思議な現象に出会うことも、神経系理学療法では珍しくありません。
「だからこそ面白い。『なぜだろう』『どうすればもっと良くなるのだろう』と考え続け、未知の領域に挑み続けられることが、この仕事の魅力です」と木内先生。
神経系分野で活躍する理学療法士は、日々新しい知見や技術を学びながら、一人ひとりの患者さんに向き合っています。答えが一つではないからこそ、考え続ける面白さがあり、その積み重ねが患者さんの「動ける」を支えています。進化を続ける神経系理学療法と、その最前線で活躍する理学療法士に、これからも注目です。
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【この記事を書いた人】
アニメっ子
アニメ鑑賞で毎日エナジーチャージ。漫画・映画・韓ドラも愛してやまない、泣けるシーンには秒で落涙する20代女子。
