先日、久しぶりに眼科検診を受けた私。
ポンッと風が出る検査が無かったり(あれ怖いですよね)、「上?下?」と返答することなく覗いただけで視力測定が完了してしまったりと、昔と違う検査方法にとても驚きました。
こうした目に関する検査・訓練・ケアを担うのが「視能訓練士」です。
視能訓練士は1971年に誕生した比較的新しい国家資格で、全国でもまだ約2万人しかいません。
今回は大阪急性期・総合医療センター(以下、急性期)ではたらく視能訓練士の十河さんに、具体的な仕事内容や現場での役割、そして最新機器について伺いました。
今回お話をお伺いした人
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター 視能訓練士主任/視能訓練士 十河 響子さん
2005年大阪医療福祉専門学校視能訓練士学科を卒業後、眼科専門病院に11年間勤務。
一般眼科検査を始め、斜視弱視・円錐角膜・屈折矯正治療や多焦点眼内レンズなど幅広い業務に従事する。2015年認定視能訓練士取得。2016年より大阪急性期・総合医療センターに勤務、2025年より現職。
視能訓練士の仕事内容
視能訓練士の主な仕事は次の4種類。
・検査
・訓練
・ロービジョンケア
・検診
視力検査や眼圧測定、眼底(目の奥の方)写真の撮影など、“目の検査”を機器を用いて迅速に行い、治療方針の判断に必要なデータを医師に提供します。
また、弱視・斜視の訓練、視覚障がいのある方へのロービジョンケア(※)、学校や企業の検診など、その領域は多岐に渡ります。
十河さんがはたらく急性期では白内障・緑内障・加齢黄斑変性など、失明リスクのある疾患のほか認知症やALS(筋萎縮性側索硬化症)の方など、一般の眼科では対応が難しい患者さんも多く受診されるため、検査時にはより工夫が必要となります。
※ロービジョンケア:視覚障がいのある方が、よりよい生活を送るための支援
支援の例)
・遮光眼鏡の処方
羞明(眩しさを感じやすい疾患)の方に、なるべくコントラストを低下させず眩しさのみを軽減出来る眼鏡を処方。日傘や帽子の活用の提案も
・ロービジョングッズの選定
拡大鏡(ルーペ)や拡大読書器の選定、署名や読書時の行の把握に役立つタイポスコープ、音声時計などの案内
・便利グッズの紹介
ご飯粒や豆腐など白いものがわかりやすい黒い茶碗やまな板、黒地に白色の数字が書いてある定規など、身近にある商品を使った工夫の提案
・スマートフォンの活用提案
アプリやスマートサイトの活用、文字を大きくする・黒白反転させるなどの機能を紹介
進化する最新機器 ― 覗くだけで分かる目の状態
日々進化するさまざまな医療機器。その進化は患者さんや医療従事者の負担軽減にもつながっています。
中でも急性期の眼科では以下のような最新機器を駆使し、日々の業務を行っています。
▮撮影するだけで眼球の角膜内にある細胞数を計測できる機器
角膜内皮細胞を短時間で測定でき、治療前後の状態把握がより精密に行えます
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▮従来の眼底撮像機器の約4倍の範囲を撮影できる広角眼底カメラ
一度の撮影で網膜の広いエリアを確認でき、疾患の見逃し防止に役立ちます
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▮眼球を“輪切り”にしたように断面を捉えられるOCT(光干渉断層計)
眼球表面の凹凸や網膜層の厚みまで詳細に確認でき、緑内障や黄斑疾患の診断に欠かせない存在です
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こうした機器のおかげで、これまで時間と技術を要していた検査が、今では数秒の撮影で完了します。
私自身が体験した「覗くだけで完了する視力検査」も、この技術革新の一つなのだと分かりました。
ただし、機器が自動化されたとはいえ、データの意味を読み解き「診断に必要なデータが取れているか」を判断するのは視能訓練士の経験と専門性によります。
使える時間や情報が増えた分、患者さんの状態を見極めながら、より高い精度で病態を見抜く力が求められています。
目から覗く、リアルな血管
目は、血管を直接観察できる唯一の臓器です。
眼底写真を撮ると、“のぞき窓”のように網膜に張り巡らされた血管がそのまま映し出されます。
血管が細くなっていたり、出血の跡があったり、むくんで見えたり──。
こうした血管の状態は、目の病気だけでなく、糖尿病や高血圧といった病の症状であることも少なくありません。
十河さんは「目の検査は、その人の全身状態を見抜くはじめの一歩になる」と話します。
病が進行してからでは治療が難しくなることもあるため、視力に問題がなくても、定期的な眼科検診を受けましょう。
今回の取材で印象的だったのは、急性緑内障発作の患者さんのお話。
強い痛みで救急搬送されることもある、危険な病気です。
十河さんが担当された患者さんも、来院時はほぼ見えていない状態のため車椅子で来院したものの、検査と手術によって歩いて帰られたケースもあるそう。
日ごろの定期的な検査により、重症化する前に発見することの重要性が感じられました。
“見え方”を支える医療専門職として
視能訓練士は、検査の背景にある疾患を予測し、患者さんの状態に合わせて最適な検査を行う専門家です。
認知度はまだ高くなく資格保有者も足りていない状況ですが、見え方の異変を早期発見・回復し、患者さんの生活の質を守る重要な存在です。
最先端の機器と専門性を組み合わせながら、人々の「見える」を支えている——そんな視能訓練士の仕事の奥深さを改めて実感しました。
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター
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1955年1月、11の診療科、病床数330の「大阪府立病院」として開院。2003年10月、病院名を「大阪府立急性期・総合医療センター」に変更。2006年4月、地方独立行政法人大阪府立病院機構設立に伴い、大阪府から事業移行し、現在に至る。各種センターの開設等、高度な専門医療が提供できる環境を整え、多様化するニーズに応えている。2010年からは森ノ宮医療大学と連携協定を締結し、高度な医療・医学教育を共有し、保健医療・看護・健康増進・福祉等にかかわる地域課題に積極的に取り組んでいる。
所在地 | 大阪市住吉区万代東3丁目1番56号
病床数 | 865床
診療科 | 総合内科・感染症科、呼吸器内科、消化器内科、心臓内科、糖尿病内分泌内科、腎臓・高血圧内科、脳神経内科、免疫リウマチ科、血液・腫瘍内科、小児科、新生児科、精神科、皮膚科、消化器外科、乳腺外科、小児外科、呼吸器外科、心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、産科、婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成外科、歯科口腔外科
急性期医療部門 | 救急センター(TCU)、脳卒中センター(SCU)、心臓血管センター(CCU)、救急初期診療センター(ER部)、小児医療センター(NICU・GCU)、四肢外傷治療センター
高度医療センター | 腫瘍センター、消化器内視鏡センター、肝がん治療センター、糖尿病・生活習慣病センター、腎移植センター、大阪難病医療情報センター、パーキンソン病治療センター、関節リウマチ・バイオサポートセンター、乳がん治療・乳房再建センター、低侵襲心血管治療センター、人工関節センター、子宮筋腫治療センター、子宮脱治療センター、前立腺がん治療センター、IVRセンター、PET核医学センター、遺伝診療センター、生殖医療センター、総合リハビリテーションセンター
<大阪急性期・総合医療センター公式WEBサイト>
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【この記事を書いた人】
カツオ
三度の飯より釣りが好き。三度の飯は麺が好き。な元サッカー審判員(ギリギリ30代のアラフォー男)
