看護師が伝えるユマニチュードというケア技法について

2026.01.09

大切な人が入院したとき、あるいは介護が必要になったとき、「大切な人を、ちゃんと人として扱ってくれるだろうか」と不安になったことはありませんか。医療や介護の現場では、不安から治療やケアを拒否してしまう方や、認知症などの影響で意思疎通が難しい方も少なくありません。そうした場面で、どうすれば人として大切にされていると感じてもらえるのか——その問いに、具体的な技法で応えるのが「ユマニチュード」です。
この技法は、医療や介護の専門職だけでなく、家族などの介護に関わる人、そしてこれから医療の世界を目指す人にとっても、ケアの本質を考えるヒントになります。今回は、看護師としてユマニチュードの研究を行っている先生に、その理念と実践についてお話を伺いました。。

今回お話をお伺いした人

森ノ宮医療大学 看護学部 看護学科 助手/看護師 松村 比呂子 先生
大学病院で脳神経外科・消化器外科病棟の看護師として勤務した後、2019年より森ノ宮医療大学で実習助手として看護基礎教育に従事。2023年から現職。認知症高齢患者へのケアにおけるユマニチュードの有効性について研究を行っている。

ユマニチュードとは?

ユマニチュード(Humanitude)は、フランスで開発されたコミュニケーションを基盤とするケアの技法です。“人間らしさを取り戻す”という意味をもち、相手を一人の人として尊重する関わりを大切にします。この技法には、「5つのステップ」という特定の流れが存在し、見る・話す・触れる・立つことを「4つの柱」と考え、患者さんの状態に合わせた心身の回復や機能維持、そして寄り添いを目的として使われます。主に認知症ケアとして知られていますが、不安や恐怖を抱えているすべての患者さんに応用できる技法です。

ユマニチュードの良い点・課題点

医療や介護の現場で悩みとして多いと言われるのが患者さんの拒否。松村先生も臨床では、ケアを行おうとしても拒否されて実施できなかったり、どうしても行わないといけないケアでは、嫌がる患者さんを拘束して行う場面を目にしたりすることがあったそうです。ケア拒否は看護師の力不足から生まれるものではなく、患者さんの不安や恐怖が表れた行動です。ユマニチュードは、拒否を仕方ないものとして受け止めるのではなく、人としての尊厳を大切にし、関わり方そのものを見直すことで、拒否の軽減が期待できる技法として注目されています。ここでは、ユマニチュードの良い点と課題点をまとめます。

■良いところ
・ケア拒否の頻度が減る
丁寧な声かけや視線の合わせ方によって安心感が高まり、清拭、オムツ交換、点滴固定、口腔ケアなど、拒否が起こりやすいケアでも協力を得られる場面が増える。
・ケアを行う人のストレス軽減にもつながる
「拒否されるかも…」という不安や負担が軽くなり、暴言・暴力の減少にもつながることで、心身の負担を軽減できる。
・スタッフ全員で統一したケアができる
技法が具体的で体系化されているため、経験年数や年齢に左右されず、一定の質でケアができる。

■課題点
・時間が必要
ユマニチュードは丁寧さが重要なため、時間を要する。急性期病棟や多忙なシフトでは「やりたいけれど、今は難しい…」という状況が生じる。
・スタッフ全員が続けないと効果が薄れる
「昨日の人は丁寧だったのに…」と、患者さんの不安を増幅させる可能性がある。
・患者さんによっては適用が難しい場合もある
視線が合わない、立位保持ができないなど、技法をそのまま使いづらいケースも存在する。

ユマニチュードの手順と意識すべきポイント

ユマニチュードは“何をするか”だけでなく、“どのように関わるか”を重視します。その実践は、4つの柱を土台として、5つのステップで行います。どの段階でも共通するのは、“あなたは大切な存在である”と伝えることと、関わり方で患者さんの孤独感や不安を和らげることです。ここでは、実践する際の手順と意識すべきポイントをご紹介します。

①出会い(見る・話す・触れる)
患者さんを驚かせないよう、正面から近づき、目を合わせて優しく声をかけ、手の甲など見える部位にそっと触れる。
②承認(見る・話す・触れる)
穏やかな視線と肯定的な言葉、やさしい触れ方で、「あなたを大切に思っています」と伝え、信頼関係を築く。
③知覚の連結(見る・話す・触れる)
これから行うケアを言葉で説明しながら実施し、表情や反応を確認する。
④ケア・処置(4つの柱すべて)
患者さんに行うべきケアを、声かけと触れ方に配慮しながら、不安や痛みを軽減することを意識して行う。可能な場合は、筋力維持や骨粗しょう症予防などの意味も込め、患者さんに寝たきりではなく立ちあがってもらうことも促していく。 
⑤再会の約束(見る・話す・触れる)
「これで終わりますね」「また来ますね」と伝え、安心感と信頼の余韻を残します。

松村先生からのメッセージ

ユマニチュードは、「あなたを大切にしている」という思いをケアとして可視化できる技法です。すべてを一気にではなくても、一つずつを丁寧に積み重ねることで、これまでケアを拒否していた方が穏やかな表情で受け入れてくださるようになり、コミュニケーションが楽しくなるはずです。その変化に触れるたび、患者さんを一人の“人”として大切にする看護の姿勢をあらためて実感し、自然と自分自身のことも大切にできるようになっていきます。ユマニチュードが、患者さんにもケアを行う人にもやさしいケアでつながっていくことを願っています。

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【この記事を書いた人】

Θ(シータ)

Θに似ているたらこくちびるが由来。1歳の女の子パパをしています。

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