【医療の仕事に迫る!】チーム医療で患者をサポートする “緩和ケアチーム”って?【コラボ企画】

「チーム医療」という言葉を聞いたことがありますか?今、医療現場では、一人の患者さんに対して様々なスキルを持つ医療スタッフが連携し、協働しながら治療・ケアに取り組む「チーム医療」の重要性が高まってきています。今回は、患者さんの様々な苦痛を和らげる緩和ケアのスペシャリストが集まった、日本生命病院の「緩和ケアチーム」を取材!麻酔・緩和医療科医の花田さん、緩和ケア認定看護師の土井さん、医療ソーシャルワーカーの松栄さんにお話を伺い、仕事内容とともに、チーム医療で行う緩和ケアについて、現場のリアルな声をお届けします!

今回お話をお伺いした人

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院
麻酔・緩和医療科 部長/花田 留美さん
1991年徳島大学医学部医学科卒業、高松赤十字病院で手術麻酔とともにペインクリニック診療も研修。1994年から箕面市立病院 大阪大学医学部附属病院で手術麻酔に従事。2010年より日本生命病院 麻酔・緩和医療科に勤務し、手術麻酔、ペインクリニック診療ともに緩和ケアチームに所属し、緩和医療にも携わる。2017年4月より現職。

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院 あったかサポートセンター(緩和ケアチーム専従看護師)
緩和ケア認定看護師/土井 美奈子さん
1995年広島県尾道市医師会看護専門学校卒業。2010年広島大学大学院保健学研究科附属先駆的看護実践支援センター認定看護師教育部門修了、緩和ケア認定看護師取得。2015年から宝塚市立病院 緩和ケア病棟に従事。2020年より日本生命病院 緩和ケアチームに所属し、緩和ケアチーム専従看護師として活動。

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院 医療福祉相談グループ
医療ソーシャルワーカー/松栄 優子さん
1997年日本福祉大学社会福祉学部卒業。1999年社会福祉士、2004年介護支援専門員取得。2004年4月より日本生命病院に勤務し現在に至る。

ー 緩和ケア・緩和ケアチームって?

花田:まず、緩和ケアというのは、がんの診断後、告知、治療開始から並行して行います。痛みなどの身体的苦痛だけでなく、告知による精神的な苦痛、そのほか病気に関することだけでなく、仕事や生活の不安といった社会的苦痛についても支援します。日本では、ターミナルケアとして主にがん患者のための終末期医療と考えられてきましたが、診断、治療の開始時期から主治医の先生とともに様々な苦痛に対して患者さんや家族をサポートしていきます。最近ではがんだけでなく、透析や心不全の末期患者など生命を脅かす病気の患者さんのケアに当たることも緩和ケアの一つと考えられています。

土井:私たちはその緩和ケアの専門チームです。患者さんの治療は主治医をはじめ主科で痛みのケアも含めた治療が行われています。しかし、それでも痛みがコントロールできない場合や、専門性が必要となる場合は、専門チームである私たちがサポートします。

松栄:よく患者さんから心配されるのですが、当院では緩和ケアが必要だからといって主科や主治医が変わることはありません。私たちは様々な苦痛に関して一緒にサポートしていくチームです。

ー 緩和ケアチームにはどんな人がいますか?

土井: 日本生命病院は麻酔・緩和医療科医師、神経科・精神科医師、緩和ケア認定看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、公認心理師、また、日本生命病院ならではというと、看護部の専門チームであるリンクケアナースも加わり、チームで患者さんやご家族のケアに当たります。うちではまだできていないですが、ここにリハビリの先生も入って治療できればいいですね。

ー チームでどうケアされていますか?

土井:まず主治医から緩和ケアチームに依頼があり、麻酔科医と緩和ケア認定看護師が患者さんに問診を行います。麻酔科医が問診を行うのは、患者さんの多くが身体的苦痛を抱えているためです。日本生命病院では直接介入型のケアを行っているため、緩和のための薬の処方も行います。

松栄:例えば、通常の痛み止めでは痛みが緩和しない場合、医療用麻薬を使用することがあります。その処方には専門性が必要なこともあるため、こちらで対応するといったような感じです。また身体症状以外にも、精神的、社会的苦痛を抱えている患者さんへは、精神科医やソーシャルワーカーが対応するなど、患者さんの症状や悩みに合わせ、チームメンバーが相互に連携しながらケアを行っています。


花田:治療方針については、チームメンバーに加え、主治医や病棟の看護師とともに、週に1度カンファレンスを行い決定しています。私たちは病棟看護師とは違い、各病棟を回りながら、担当患者さんを診察しています。そのため、病棟での様子をよく知っている主治医・看護師と情報共有を行い、患者さんに合わせたケアができるよう対応しています。

ー 多職種と関わってケアを行っていますが、チームで働く際に気を付けていることは?

土井:コミュニケーションですね。自分の考えをどのように伝え、どうしたらいいのか聞くこと。また、それをきちんとチームメンバーや患者さんに伝えないといけないので、コミュニケーションがうまくいくように心がけています。

松栄:チームは多職種で動くので、どうしても意見や方針に相違が生まれることがあります。その食い違いから患者さんを混乱させてしまうことが無いよう、ケアにあたって何を目標にするのか、また各チームメンバーの想いも理解した上で対応できるよう、しっかりと共通認識を持つことが大切だと思っています。緩和ケアはどんな症状であっても、診断後、治療初期から行うものなのですが、患者さんの中には緩和ケアと聞くと「もう死ぬのか…」と思われる方が多い。だから、そうではなく、治療中、患者さんらしく過ごしてもらえるよう全員でサポートするという認識を共有し、ケアに当たることを大切にしています。

花田:同じ症状でも、やっぱり患者さんによって対応の仕方って少しずつ違います。そのすり合わせはきちんとチーム内でしておく必要があると思っています。

ー 医療職を目指す方へ「チーム医療」を行う上でのアドバイスがあれば

土井:やっぱりコミュニケーションですね。今、特にそう感じます。医療職はやはり人と人との関わりが大切なので、自分の価値観で話すのではなく、相手がどう感じているのか、自分が話したことに対して、相手はきちんと応えてくれるのか。そういう「受ける・伝える」というコミュニケーション力を基盤にしてほしいと思います。

松栄:コミュニケーションはもちろん、想像力も持ってほしいと思います。言われた言葉が本当にそのままの意味なのか、実はそうではないのではないかといったことを、いかに想像し汲み取るかが大切です。また、それぞれのプロが自分の仕事を遂行するには、目の前のことだけでなく、それを行った後の状況も想像しなければなりません。私はよく研修医の方に「話せる医者になってください」とアドバイスしています。きちんと相手に伝わるように伝えられるか。このスキルをぜひ身につけてほしいです。

花田:私はコミュニケーションももちろんですが、それぞれがそれぞれの職種のプロになってほしいと思います。どうしても医者がリーダー的な役目になることが多いですが、意見や提案があったときに、「それはこうしたほうがいいんじゃないか」といったような、各職種の立場から、意見を言い合える対等な関係でありたいと思っています。そのために、しっかり能力を磨いてほしいですね。ぜひ頑張ってほしいです!

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院
1924年7月、財団法人「日本生命済生会」設立。日本生命本館内に事務所を設置して診療を開始。1931年6月、名門緒方病院の土地・建物を継承し、大阪市西区新町に「日生病院」を開院(当初は24床で開始)。2018年4月30日、大阪市西区江之子島に新築移転。病院名称を「日生病院」から「日本生命病院」に変更し、現在に至る。

所在地|〒550-0006大阪市西区江之子島2丁目1番54号
病床数|一般350床
診療科|循環器内科、消化器内科、内分泌・代謝内科、呼吸器・免疫内科、血液・化学療法内科、脳神経内科、腎臓内科、消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、心臓血管外科、産婦人科、小児科、神経科・精神科、脳神経外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成再建外科、放射線診断・IVR科、放射線治療科、麻酔・緩和医療科、リハビリテーション科、救急総合診療科、検査診断科、病理診断科、予防診療科
診療センター|救急総合診療センター、がん治療センター、女性骨盤底センター、糖尿病・内分泌センター、消化器内視鏡センター、血液浄化センター、脳機能センター、乾癬センター、ニッセイ予防医学センター
その他|病院機能評価認定病院(3rdG:Ver.2.0)
ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)推奨病院
卒後臨床研修評価機構(JCEP)認定病院
人間ドック・健診施設機能評価認定病院(Ver.4.0)
DPC対象病院
大阪府がん診療拠点病院
地域医療支援病院
<日本生命病院 公式WEBサイト>

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