生理痛や月経前症候群(以下、PMS)、避妊の悩みは、多くの女性にとって身近で切実な問題です。その解決策のひとつとして注目されているのが「ピル」。効果がある一方で、副作用等が気になるという声も少なくありません。今回は産婦人科医の先生に、ピルのしくみや効果、注意点について伺いました。女性だけでなく、男性の方にもぜひ知ってほしい内容です。
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今回お話をお聞きした人
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地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター
産科・婦人科 主任部長 竹村昌彦先生
大阪大学医学部卒。医学博士取得後ハーバード大学/マサチューセッツ総合病院内分泌研究室にてリサーチフェロー。帰国後は大阪母子保健総合医療センター、大阪警察病院などを経て、2005年より現職。大阪大学臨床教授、日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学会女性医学暫定指導医、日本女性婦人科腫瘍学会腫瘍専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本周産期・新生児医学会周産期専門医ほか。
ピルとは?
ピル(経口避妊薬:OC)は、主に妊娠を防ぐために服用する薬です。女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが含まれており、これらの量を調節することで排卵を抑えます。避妊成功率は正しく服用すれば約99%。また、排卵が抑えられることで月経痛やPMSの改善、経血量の減少といった副効果もあります。
ピルには目的によっていくつかの種類があります。
●自費診療のピル(避妊目的)
いずれも避妊を目的とした経口避妊薬(OC)ですが、以下の効果も期待できます。
・低用量ピル:月経痛、過多月経やPMSなどの改善
・中用量ピル:生理日の調整
・ミニピル(プロゲステロンのみを含む):月経症状緩和効果
・アフターピル:緊急避妊
●保険適用(治療目的)
・LEP製剤: 月経困難症や子宮内膜症の治療
※医療機関によって処方可能な種類が異なるため、受診前にホームページなどで確認しておくと安心です。
排卵とピルが働くしくみ
通常、排卵は脳から出されるホルモン(卵胞刺激ホルモン(以下FSH)、黄体化ホルモン(以下LH))の指令により、卵子が成熟し、排卵が起こります。この時卵巣から女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が分泌されます。しかしピルの服用により一定量の女性ホルモンが持続的に供給されると、脳は「すでに女性ホルモンが十分にあるので、排卵の準備は必要ない」と判断し、卵巣への指令を止めます。その結果、卵子が育たず、排卵が起こらなくなる――これがピルの基本的な働きです。
〈詳しいしくみはこちら〉
①脳から卵巣へ、FSHが分泌される
②その刺激で、卵巣からエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌され、卵胞(卵子を包む袋)が育つ
③卵子が成熟し、エストロゲンが一定量を超えると、脳から排卵を促すLHが分泌される
④卵巣から卵子が飛び出す(排卵)
⑤排卵後、卵胞は黄体になり、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌する
⑥プロゲステロンにより、子宮内膜がさらに厚くなり、受精卵が着床しやすい状態になる
⑦妊娠しなかった場合、プロゲステロンが減少し、子宮内膜が剥がれて月経となる
※排卵までの過程は、脳と卵巣が互いに情報を送り合いながら、ホルモン量を調節します。
産婦人科医に聞きました!ピルのQ&A
ピルについての気になるあれこれを竹村先生に聞いてみました。
Q.どんな方に勧めますか?
A.避妊が必要な方、副効果を求める方
日本では避妊をコンドームに頼る傾向がありますが、男性側の使用が不十分だと避妊効果は大きく低下し、一般的な使い方では1年間で約20%(5人に1人)が妊娠する可能性があります。つまり、女性側は避妊の確実性を自分でコントロールできない方法といえます。だからこそ、女性自身が「避妊の確実性を自分で担保できる方法」を考え、選択肢を持つことがとても重要です。コンドームは性感染症予防には不可欠ですが、避妊の確実性を高める手段として、ピルは女性が主体的に選択できる有力な選択肢になります。
また、月経痛・月経量・PMSなどに悩む人にも効果的です。症状が大きく改善したという方も多数います。治療として保険適用できる薬もあるため、つらい症状がある人は一度相談してみると良いでしょう。
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Qどこで処方してもらえる?
A.産婦人科・クリニック・オンライン診療などで入手できます
特に産婦人科では、子宮がん検診や超音波検査で筋腫・内膜症の有無なども確認できるため、より安心して利用できます。
Q.副作用と注意点を教えてください
A.項目にわけてお答えします
●副作用
服用初期に吐き気・頭痛・気分の変化などが出ることがありますが、多くは2~3か月で落ち着きます。
●血栓症のリスク
ピルに含まれるエストロゲンには血液凝固作用があるため、血栓症を心配する方もいますが、ピルによるリスクは高くありません(女性で最も高まるのは妊娠中で、ピル使用時の約10倍といわれます)。ただし、血栓症リスクは服用開始時が最も高いとされ、再開と中断を繰り返す服用はリスクを高めるため避けましょう。近年はプロゲステロンのみを含むミニピルも利用でき、血栓症リスクを抑えたい人にとって有力な選択肢になっています。
●飲み忘れ
ピルは毎日決まった時間に飲むことが重要です。飲み忘れると避妊効果が下がり、体調に影響が出ることもあります。
●他の薬の影響
抗生物質の一部や、その他いくつかの薬ではピルと一緒に飲むことで、避妊効果が下がるものがあります。日ごろから内服していない薬を使用する場合には、医師あるいは薬剤師に相談してください。
●服用できないケース
服用が可能であるかは、年齢や体重、既往歴なども影響してきます。
・喫煙者(35歳以上で1日15本以上)
・血栓症の既往
・前兆のある片頭痛
・肥満(BMI30以上)
は禁忌とされ、一般的なピルは服用ができません。このような方でもプロゲステロンのみを含むミニピルでは内服ができることがあります。
いずれにしても服用開始前には必ず医師と相談することをお勧めします。
Q.がんとの関係は?
A.いくつかの種類のがんに関係することがあります
ピルは子宮体がん・卵巣がんのリスクを下げることがわかっています。
一方、乳がんをすでに発症している場合は、腫瘍の増殖を促す可能性があるため使用できません。子宮頸がんについては因果関係が明確でないものの、統計的にはHPV感染と関連がみられるという報告があります。
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Q.服用すると不妊になる?
A.ピルが不妊の原因になることはありません
ピルは長期間服用しても、服用をやめれば自然に排卵は再開します。
一方で、不妊の原因の一つである子宮内膜症は、月経回数が多いほどリスクが高まりますが、ピルにより排卵を抑えることで、その発症や進行を防ぐ効果が期待できます。現代の女性は初潮年齢の早まりや出産回数の減少により、生涯の月経回数が100年前の5倍以上に増えています。ピルのようなホルモン剤に抵抗を感じる方もいますが、むしろ現在の月経状態こそが自然とはいえず、ピルはそれを調整する手段といえます。
ピルは「妊娠を妨げる薬」ではなく、「将来の妊娠を守る薬」としても有効な選択肢です。
竹村先生からのメッセージ
ピルの認知は徐々に広がってきましたが、「飲んでいる=遊んでいる」という古い偏見はいまだ残っています。月経痛に悩む若い方が家族や周りに相談しても「生理は痛くて当たり前」と言われ、改善できることを知らずに我慢してしまうケースも少なくありません。
私がみなさんにお伝えしたいのは、「生理痛がつらいのは“普通”ではない」ということです。適切に治療すれば痛みはきちんと改善します。ピルは月経困難症や月経不順の改善だけでなく、子宮内膜症の予防や将来の不妊リスク低下にも役立ちます。月経が安定していれば高校生からでも服用できるため、避妊目的に限らず、生理管理の手段としても検討してほしいです。
今後は日本でも海外と同様に、ピルの薬局購入が可能となるなど、より利用しやすい環境が整っていくと考えられます。だからこそ、若い世代に限らず、すべての方が「性」について正しい知識を持ち、自分の体と向き合う機会を持ってほしいと思います。
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【この記事を書いた人】
アニメっ子
アニメ鑑賞で毎日エナジーチャージ。漫画・映画・韓ドラも愛してやまない、泣けるシーンには秒で落涙する20代女子。
