月経はそれに伴う諸症状や経血量、周期など人によって様々です。ただ、自分の月経が人と比べてどうなのか客観的に知る機会はあまりないですよね。それゆえ何か悩みを抱えていても、我慢したり、こんなものだろうと思っていることはありませんか?最近は、コロナ禍で経済的な理由等により生理用品を購入できない女性がいる「生理の貧困」が問題化したこともあり、社会的にも月経についての注目度が高まっています。今回は鍼灸治療の観点から月経痛などのセルフケアやツボをご紹介しつつ、月経をどう考えることが大事なのかもお伝えしたいと思います!
今回お話をお伺いした人
森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科
助教/鍼灸師 仲村 正子 先生
経歴:浜松大学(現常葉大学) 健康鍼灸学科を卒業し、鍼灸師免許取得。明治国際医療大学 大学院 修士課程を修了(修士(鍼灸学))、森ノ宮医療大学 鍼灸学科助手を経て、2020年4月より現職。経絡経穴学(ツボ)の授業を担当。研究分野はレディース鍼灸や鍼灸の安全性。
月経痛の対処法を知らない人が多い
月経痛で悩んでいる人はたくさんいるなかで、対処法として鍼灸治療が有効であることを知っている人はまだ少ないです。鍼灸で月経痛の治療を行う患者さんは、腰痛や肩こりなど他の理由で鍼灸院に行った際、問診で月経について聞かれ、月経痛に対しての治療を始めるというケースが多いです。月経に関する問診では、月経周期や月経時の痛みの程度、質(キリキリした痛みか重だるい感じかなど)、経血の色などを確認します。鍼灸は東洋医学にもとづいて、おもだるい痛みはエネルギーや栄養が弱い状態で、強い痛みがあるときは冷えやストレスによる血の滞りが起こっていると考えて、それに合った治療をしていきます。もちろん、問診の中で子宮内膜症などの疾患の可能性があると判断した場合は、鍼灸治療と併せて婦人科等の受診をすすめることもあります。
月経痛に効くツボってどこ?
月経痛と言っても腹痛や腰痛、頭痛など様々な痛みがあると思います。そういった痛みに有効と考えられているツボで一番おすすめなのが、三陰交(さんいんこう)です。その他にも痛みのタイプや強さごとにおすすめのツボが変わります。次の図を見てご自身の月経痛タイプを確認してみてください!
この図にあるツボに、市販のお灸を置いてもいいですし、ドライヤーお灸といって、ドライヤーの温風をツボの周辺にあてることでお灸に似た効果が期待できる方法もあるそうです。やけどしないよう注意しながらやってみてくださいね。
月経周期を整える鍼灸治療は?
月経が来ない、周期が乱れている(月経不順)という方には、三陰交と陰陵泉(いんりょうせん)に鍼を打ったり、電気を流したりする治療を行います。また、腰にあるツボの腎兪(じんゆ)と大腸兪(だいちょうゆ)も効くとされています。仲村先生の授業を受けている学生で、月経が来ないんですと相談され、施術した次の日に来たというケースもあったそうです!実は月経不順の方の中には、月経が来ない方が楽だからと放置していることも結構あるんだとか。月経不順の原因としては過度なダイエットやストレス、子宮や卵巣などの病気などがあります。実は月経不順は本人だけでなく社会的にも重要な問題で、月経が来ないと将来子どもがほしいと思ったとき妊娠できない可能性もあり、少子化にもつながっていくのです。産婦人科等で早めに相談しましょう!
PMS(月経前症候群)にも効く?
月経中だけでなく、PMSに悩まされているという人も少なくないと思います。PMSにはめまいや頭痛など身体的症状と、イライラなど精神的症状の両方があります。鍼灸ではPMSを予防するという考え方で、月経開始予定日の1週間前頃(排卵日の直後)から円皮鍼(えんぴしん)というシールタイプの鍼を三陰交に貼っておくと、イライラが和らぐなど精神的な症状には有効だったという結果がでています。円皮鍼はドラッグストアなどでも手軽に買えるので、PMSに悩んでいる方は一度試してみてください。
みんなで考えよう月経のこと!
月経は女性自身が向き合うのはもちろん、家族、周りの人々、社会全体にも理解されるようになることで、女性たちが月経期間を含めた日常をより健康的に過ごせるようになるのではと仲村先生は言います。そのため、仲村先生の授業では男子学生にナプキンをつけてもらう体験をしたり、ナプキン以外にも生理用品の選択肢は色々あると伝えたりしています。今はパートナーや家族と月経の周期や月経中の体調を共有することが出来るアプリもあるそうです。こういったアプリを使ってみたり、この記事で紹介されているツボを周りの月経に悩む女性に紹介していただいたりすることで、みんなが過ごしやすい社会への第一歩になれば幸いです。