すっかり寒くなり、冬の訪れを感じる今日このごろ。のどの痛みや咳、感染症などが気になる季節になってきました。実は、感染症の発症には、いくつかの条件がそろう必要があることをご存じですか?今回は、私たちにとって身近な「インフルエンザ」をテーマに、日本生命病院の感染症看護専門看護師に感染予防の極意をお聞きしました。クリスマスや年末年始など楽しい予定が続くこの時期、一人家でお留守番…なんてことにならないよう、自身の健康を守りましょう!
今回お話をお伺いした人
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公益財団法人日本生命済生会 日本生命病院
感染対策室 副室長 感染症看護専門看護師 大野典子さん
大阪府立大学大学院看護学研究科博士前期課程修了(看護学修士)。2009年感染症看護専門看護師認定。
感染は「偶然」ではなく「6つの要素」がそろって起こる
感染症は、ウイルスや細菌、真菌、寄生虫などの病原体が体内に侵入し増殖することで発症します。これらは、Chain of infection(感染の6つの要素)によって成立しており、どれか一つでも断ち切ることができれば、感染を防ぐことができます。なかでも、体の外から対策できる最終防衛ラインとなるのが「⑤侵入口」。インフルエンザウイルスは口や鼻などの侵入口から、数10分程度で体内(細胞内)に侵入するとの報告もあり、ここをしっかり防ぐことが、感染予防にとって重要となります。
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【Chain of infection(感染の6つの要素)】
➀病原体(ウイルス・細菌など)
②感染源(病原体が生存・増殖する場所:感染した人、環境など)
③排出口(病原体が感染源から出る出口:咳・くしゃみ・排泄物など)
➃感染経路(病原体が移動する道:飛沫、接触、空気など)
⑤侵入口(病原体が体に侵入する入り口:口、鼻、目などの粘膜や傷口)
⑥感染を受ける人(※感染リスクはその人の免疫力などに影響する)
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なぜ冬は感染しやすい?ウイルスが広がるメカニズム
病原体であるウイルスはヒトや動物の体内(細胞内)でしか増殖できず、体外に排出されると時間の経過とともに徐々に感染力が低下していきます。これを「不活化」といい、それにかかる時間は数時間~数週間とウイルスによって様々です。特に冬は空気が乾きやすく、乾燥に強いインフルエンザウイルスが生き延びやすくなります。さらに、飛沫が乾き軽くなることで、落下に時間がかかり、より拡散しやすくなります。
こうした状況下では、まだ感染力を持つウイルスが他の人の口や鼻の粘膜に付着しやすくなり、体内に侵入するリスクが高まります。さらに、空気が乾燥すると私たちの鼻や喉の粘膜も乾きやすくなり、ウイルスを防ぐバリア機能が低下するため、より感染しやすい状態になります。また、最終的に、体内に侵入した病原体が感染症を引き起こすかどうかは、ワクチン接種による抗体の有無や、年齢などによる免疫力の差など、感染症を受ける人の免疫状態によって大きく変わります。冬はインフルエンザウイルスが活動しやすく、感染しやすい環境が整う季節のため、より一層の対策が必要です。
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感染症を防ぐ~日常生活のポイントとは?~
体の外から対策
・マスクで飛沫を防ぐ
体内から排出されるウイルスは、唾液などの水分に包まれた「飛沫」として排出されます。咳やくしゃみによる飛沫を防ぐ、また他人への拡散を防ぐには、最も手軽で効果的な方法です。また、マスクの着用で注意したいのが、顎の下にずらすなどの付け方。これは付着した飛沫を顔や首に広げてしまうためNGです。
・手洗い
外から持ち込んだウイルスは、まず手洗いで落とすのが基本。アルコール消毒もインフルエンザウイルスには有効です(ウイルスの種類によって効果は異なります)。また、過度な洗浄は、手荒れの原因や、侵入してくる病原体の防御壁となる常在菌を減らしてしまうため、肌のバリア機能が弱くなることも。「過度な清潔より、ほどよい清潔を」と大野さん。食事前は必ず手洗いをし、体内に侵入させないようにしましょう。
体の中から対策
・免疫力を高める
体内に侵入してきたウイルスから体を守ってくれるのが「免疫力」です。栄養バランスのとれた食事、十分な睡眠、運動など、規則正しい生活を行うことで、免疫力を高めることができます。また、唾液や胃酸などの体液には、ウイルスを退治する成分が含まれています。よく噛んで食べ、こまめに水分をとることで、体が本来もつ防御機能を発揮しやすくなります。
・インフルエンザワクチン
ワクチンを接種すると、体内に抗体がつくられ、感染時の重症化を防いでくれます。接種してすぐに効果が出るわけではなく、抗体ができるまで約4~6週間ほどかかり、その効果はおよそ3~4カ月間持続します。例年A型は12月〜1月、B型は2〜3月に流行するため、11月ごろの接種がおすすめ。また近年では、鼻にスプレーするタイプの点鼻ワクチンも登場し、注射が苦手な子どもでも接種しやすくなっています。
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大野さんからのメッセージ
私が感染対策でお伝えしたいのは、まず「自分の体を大切にすること」です。食事・睡眠・入浴・休息といった、日々の基本的な生活習慣を整えることが、感染を防ぐ第一歩になります。病院では重症化してから受診される方が少なくありませんが、私は少しでも不調を感じたら、思い切って休むことも大切な感染対策だと考えています。感染症の広がりを示す指標(再生産数)では、インフルエンザの場合、ひとりの感染者が平均で1~3人にうつすとされています。こういったことからも「自分のため、そして周囲のために休む」という意識を持つことが大切です。特別なことをしなくても、日々の「当たり前」を丁寧に続けることが、最大の予防になります。この冬も元気に過ごせるように、一人ひとりができる感染対策を心がけましょう!
公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院
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1924年7月、財団法人「日本生命済生会」設立。日本生命本館内に事務所を設置して診療を開始。1931年6月、名門緒方病院の土地・建物を継承し、大阪市西区新町に「日生病院」を開院(当初は24床で開始)。2018年4月30日、大阪市西区江之子島に新築移転。病院名称を「日生病院」から「日本生命病院」に変更し、現在に至る。
所在地|〒550-0006大阪市西区江之子島2丁目1番54号
病床数|一般350床
診療科|
循環器内科、消化器内科、内分泌・代謝内科、呼吸器・免疫内科、血液・化学療法内科、脳神経内科、腎臓内科、消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、心臓血管外科、産婦人科、小児科、神経科・精神科、脳神経外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成再建外科、放射線診断・IVR科、放射線治療科、麻酔・緩和医療科、リハビリテーション科、救急総合診療科、検査診断科、病理診断科、予防診療科
診療センター|
救急総合診療センター、がん治療センター、女性骨盤底センター、糖尿病・内分泌センター、消化器内視鏡センター、血液浄化センター、脳機能センター、乾癬センター、ニッセイ予防医学センター
その他|
病院機能評価認定病院(3rdG:Ver.2.0)
ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)推奨病院
卒後臨床研修評価機構(JCEP)認定病院
人間ドック・健診施設機能評価認定病院(Ver.4.0)
DPC対象病院
大阪府がん診療拠点病院
地域医療支援病院
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【この記事を書いた人】
アニメっ子
アニメ鑑賞で毎日エナジーチャージ。漫画・映画・韓ドラも愛してやまない、泣けるシーンには秒で落涙する20代女子。
