スポーツに励む子どもたちとその保護者にとって、成長期の食事は身体の発達だけでなく、将来の可能性を大きく広げる鍵になります。
今回はプロサッカークラブ・セレッソ大阪の下部組織(以下:アカデミー)で、食の専門家としてパフォーマンス向上を支える管理栄養士であり公認スポーツ栄養士の方に、家庭でも実践できる「食べる力」の育て方を伺いました。
今回お話をお伺いした人

セレッソ大阪アカデミー管理栄養士(日本ハム株式会社スポーツ事業推進部)/櫻井 郁美さん
新卒で3年間、他業界で勤務したのち、食や栄養への関心から管理栄養士へ転身、幅広い現場で栄養管理に携わる。2016年よりスポーツ分野に活動の場を広げ、公認スポーツ栄養士の資格を取得。現在は日本ハム株式会社スポーツ事業推進部に所属しセレッソ大阪アカデミーにて、選手のパフォーマンス向上やコンディショニングを目的とした栄養指導や管理を担当。専門職として選手個々の状況や目標に応じた食事・栄養面の支援や、集団に向けた栄養教育を行っている。
成長期の選手を支える“食の基礎力”
櫻井さんは、プロをめざし全国から選手が集まるセレッソ大阪アカデミーで、小学生から高校生まで幅広い年代の選手へ、次のような栄養指導を行っています。
<小学生>…“成長のために食べる”を重点に   
<中学生以上>…“競技力向上のために食べる”ことを意識
 栄養指導の様子
栄養指導の様子
栄養指導では、5つの料理グループ(※)を毎食揃えることを基本とし、“何を食べるか”だけでなく、“いつ・どれだけ食べるか”まで、選手個々に応じた適切な食習慣形成のためのサポートを行います。
また保護者向けに指導風景の録画・配信や講習会も実施し、家庭との連携も図っているそうです。
選手一人ひとりが理解し実践できるようになるため、櫻井さんたち管理栄養士は幅広く活動されているんですね。
※「5つの料理グループ」役割と摂取のコツ
①主食|ごはん・パン・麺など:エネルギー源。食べられる量が少ない時はふりかけやお茶漬けにする、パンとコーンフレークを組み合わせる等で工夫。
②主菜|肉・魚・卵・大豆製品:成長に不可欠。朝食からしっかり摂るため、トーストと飲み物だけといった構成にせず、ハムやソーセージ・卵を乗せるなどの工夫を。1食に複数種類(肉・魚・卵・大豆製品のおかず)を取り入れるのが理想。
③副菜|野菜・海藻・根菜類など:体調の安定やケガ予防。1食で最低2品(具沢山の汁物も活用)を心がけましょう。
④乳製品|チーズ・ヨーグルトなど:成長や水分補給、体調維持。朝食や補食に積極活用を。
⑤果物|りんご・いちごなど:乳製品同様に成長や水分補給、体調維持。朝食や補食に積極活用を。
<関連記事>栄養素についてはこちらの記事もどうぞ
体を作る栄養素~理解すればあなたも理想の体型に?~
少食・偏食も“工夫次第”
食が細い、好き嫌いが多い――そんな悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
アカデミーには小学生年代からご飯を400g食べる選手もいます(!)が、櫻井さんは
「無理に食べなくても、補食(※)や食べ方の工夫(前項に記載)でカバーするのも立派な方法」
と話します。
また、苦手克服には
・調理法を変える
・同じ栄養素が摂れる別の食材を選ぶ
・食べられたときには褒める
といった工夫が効果的です。
プロ選手の実例も選手の心に響きます。
たとえば田中駿汰 選手(2025年度キャプテン)は豆類が苦手でしたが、身体に良いからと納豆を食べるようにしているそう。
またアカデミー出身の北野颯太 選手(現:FCレッドブル・ザルツブルグ/オーストリア)は、一人暮らしをきっかけに自炊に挑戦。朝食もしっかり摂るために、味噌汁づくりからはじめたんだとか。
こうしたエピソードからは、「プロになる=自分の体を管理すること」という意識の芽生えが感じられますね。
※3食以外に軽食で栄養素を摂取すること
<関連動画>櫻井さんが出演されているこちらの動画で、田中選手の納豆に関するエピソードを見ることができます
日本ハム 食とスポーツのオウンドメディア「Food×Sports」
コンビニや外食の活用方法
そうは言っても忙しい毎日。コンビニや外食を利用することもあるでしょう。
ここではその際に意識すべきことをご紹介します。
コンビニの場合
おにぎりやうどんに、茹でた鶏肉や豚肉が添えられたサラダ、豚汁を組み合わせ主食・主菜・副菜を揃えましょう。
これにヨーグルトやバナナ、冷凍フルーツなどを足せば、5つの料理グループが揃います。
外食する場合
栄養バランスの取れた定食スタイルのお店を選ぶのがおすすめ。
パスタや丼ものを選ぶ場合は具材がたくさん乗ったメニューを、ハンバーガーやサンドイッチの場合はフレッシュな野菜や胚芽パンを使ったものを選ぶとよいでしょう。
サイドメニューをサラダにするのも◎。
ジャンクフードを“悪者”にしない考え方
中高生の間食の定番、ジャンクフード。中には自分へのご褒美として食べる方もいるのでは。
これらは「完全に禁止するのではなく、“よく考えて食べる”ことが大切」だそう。
体脂肪や体重など身体のコンディション、食べる頻度やタイミング、食べた後の行動(いつもより有酸素運動を増やすなど)を考慮して上手に付き合いましょう。
それでも、食への意識が高まり栄養バランスを整えることで「最後まで走り切れた」「集中力が続いた」と実感した選手は、自然とジャンクフードを控えるようになるとか。
付き合いで月に1回ラーメンを食べることすら、ためらっている選手もいるそうで、そのプロ意識には感服します…(筆者は週3回ラーメンを食べています)。
練習や試合前日から当日の理想の食事とは
アカデミーでは、試合など活動前後の食事にも細かく指導を行います。
具体的には以下のような内容(午後に試合など強度が高い活動があると想定)。
スポーツを行う際は、ぜひ参考にしてみてください。
活動前日
・5つの料理グループを揃えながら、糖質(ごはん・パン・果物・いも類など)をしっかり摂る
・消化吸収への配慮と安心・安全の観点から、油ものや生もの、慣れない食材や、調理後時間が経ったものは控える
活動当日
・3〜4時間前までに「活動前日」で紹介した内容の食事
・1時間前までにおにぎりや果物、以降はゼリー飲料やスポーツドリンクなどで水分・糖質を補給(※)
・試合中(サッカーの場合ハーフタイム)にもバナナやゼリー飲料でエネルギー・糖質を補う
※午前中に試合がある場合も同様。低強度の活動を午前中に行う場合は、普通の朝食でも問題ありません(ただし影響がない程度の量)
活動後
・疲労回復と筋肉の分解を防ぐため、糖質とたんぱく質(肉・魚・卵など)を組み合わせて摂る
<関連記事>水分補給についてはこちらをご覧ください
【熱中症対策】夏を健康に乗り切るための習慣づくり

食べることが、強くなること―櫻井さんからメッセージ―
「プロ選手の中には、“もっと早く食の大切さに気づいていれば…”と話す方も少なくありません。若い年代から意識することで、プロへの道が開け、その後の競技人生も大きく変わる可能性があります。まずはできることから始めてみてください。」
と、櫻井さんは語ります。
美味しいものを食べることは人生を豊かにします。
セレッソ大阪の育成現場からは、さらに一歩踏み込み、“一皿が未来を変える”――そんなメッセージが伝わってきました。
株式会社セレッソ大阪(英文表記:CEREZO OSAKA CO.,LTD)

1957年創部のヤンマーディーゼルサッカー部を前身とし誕生。1993年に大阪サッカークラブ株式会社の設立と公募により決定したチーム名「セレッソ大阪」を発表。大阪市・堺市をホームタウンとして活動し2017年にはルヴァンカップと天皇杯で初タイトルを獲得。育成組織の充実にも力を注ぎ、セレッソ大阪から海外へ羽ばたいた南野拓実ら多くの日本代表を輩出。2023年12月には設立30周年を迎え、地域と共に歩むクラブとして成長を続けている。
所在地:〒546-0034大阪市東住吉区長居公園1-1
事業内容:
(1) サッカー等のスポーツの興行
(2) サッカー等スポーツスクールの企画・運営
(3) サッカー技術の指導ならびにサッカー選手および指導者の養成
(4) スポーツ用品、玩具、衣料・・・等の販売
(5) サッカーおよび他のスポーツに関する各種催しの入場券およびスポーツ施設利用券等の販売
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セラピア | Instagram
【この記事を書いた人】
カツオ
三度の飯より釣りが好き。三度の飯は麺が好き。な元サッカー審判員(ギリギリ30代のアラフォー男)
 
        



