瞑想がルーツ、マインドフルネスってどんなもの?

秋は夕暮れ、と清少納言は遺しています。夕暮れに漂う風に秋の気配を感じますね。秋分の日を過ぎ、夜が長くなっていきます。些細な心配ごとや不安、夜に考えるとどんどん膨れ上がりませんか?今回はみなさんに「マインドフルネス」をご紹介したいと思います。

今回お話をお伺いした先生

森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 作業療法学科 助教/作業療法士 上野慶太 先生
大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 修士課程修了(保健学)。専門は身体障害作業療法、老年期作業療法、神経生理学。研究テーマは「慢性疼痛における脳波活動の特徴解析」ほか。作業療法士として社会福祉法人みささぎ会藤井寺デイサービスセンターでの勤務等を経て、2025年4月より現職。

マインドフルネスとは何か?その歴史

人はこれまでの経験や予測により、様々な物事を過剰に考えてしまうことがあります。マインドフルネスとは、過去や未来には目を向けずに「今この瞬間に意識を向ける」こと。好き嫌いや良し悪しなど、自分の考えや感情は含めず、今この瞬間に感じている体験や感覚を受け止め観察するというものです。これによりメンタルヘルス(うつ・不安・ストレス)や疼痛の解消、睡眠改善、集中力向上に一定の効果があると報告されています
歴史としては仏教思想、東南アジアで実践される瞑想から発展したといわれています。1970年代にジョン・カバットジン博士が臨床アプローチとしてのマインドフルネスを確立。これにより医学・心理学への応用が始まり、1979年にマインドフルネス・ストレス軽減法(以下、MBSR)を開発しました。その後も発展し、2000年以降に脳波や機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などマインドフルネスの研究が盛んに行われています。

ジョン・カバットジン博士が開発したMBSR

MBSRは、期間が8週間、グループセッションを週2.5時間×8回、個人トレーニングを1日に45~60分、それをほぼ毎日…とボリュームがあるプログラムとなっています。期間中「ボディスキャン瞑想」、「レーズンエクササイズ瞑想」、「座る瞑想」、「マインドフルムーブメント(ヨガ)」、「歩行瞑想」など様々な方法で今を観察しますが、すべての方法を行わなくとも効果は期待できると考えられる、と上野先生はおっしゃいます。今回はボディスキャン瞑想のやり方を教えていただきました。

レーズンの見た目、手触り、香り、味などをじっくり観察する、といった方法も。

ボディスキャン瞑想をしてみよう!

ボディスキャン瞑想とは、足先~頭のてっぺんまで、身体感覚に意識を向けて「今」を観察する瞑想。脳が自動的に予測してしまうことをやめ、ストレスへの反応性を下げることが狙いです。以下の流れを45分かけて行うようジョン博士は提言していますが、もっと短い時間から始めても構いません。

①    仰向け、または椅子に座ってラクな姿勢をとります。

②    呼吸は浅くても深くても問題なし、空気の出入りを感じましょう。

③    目を閉じて、足先から「靴下の締め付け具合どうかな、今日ゆるいかな?」「キツイの履いているな」と意識を向けます。

④    少しずつ注意を上に向けていき「ふくらはぎが浮腫んでいるな」「血が流れている感じがするな」と観察します。このとき感情には目を向けず、ただ事実を感じるように行います。

⑤    さらに少しずつ注意を上に向けます。胸であれば「鼓動しているな」「呼吸で胸が膨らんでいるな」といった事実を観察してください。

⑥    頭のてっぺんまで進めたあと、全身を1枚の紙みたいなものと考え、呼吸によって柔らかく波打っている、とのイメージを持ちます。

⑦    最後には呼吸に意識を向け、ゆっくり目を開けてください。

「今ここにある事実」にのみフォーカスすることで、不安やストレス、痛みが緩和されます。また、睡眠改善や集中力アップに繋がるというデータもあります。

Pain Reprocessing Therapy -痛みへのアプローチ-

最近の研究において、慢性の痛みの一部は「脳の痛み処理の仕組み」が関与すると考えられています。(もちろんケガや炎症、神経の障害といった根本的に原因があるものも存在します。)これまでの経験からの予測、痛みが起こることへの恐怖や不安により、本来以上の痛みを感じているケースがありますが、マインドフルネスを用いた疼痛再認識療法(Pain Reprocessing Therapy、以下PRT)で痛みを適切に解釈することにより、慢性疼痛の悪循環を断ち切ることができる可能性があります。あるデータではPRTを受けた患者さんのうち、約66%が治療後に痛みが消失またはほぼ消失と報告されています。

最後に

日本と比較して欧米はよりマインドフルネスが医療・教育分野を中心に普及しています。上野先生はマインドフルネスと疼痛について研究しておられ、「日本でももっと広まってほしい」とおっしゃっていました。
勉強や仕事などでストレスを感じたり、心配ごとを抱えたりするのは、誰にでもあることですよね。そんなとき「今この瞬間に存在する事実」に目を向けてみてください。きっと少し気持ちが軽くなり、よいメンタルを保つこともできるはず。さらに慢性の腰痛などに悩む方にも有効である可能性があります。秋の夜長にぜひ取り入れてみてください。

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【この記事を書いた人】

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はくまい

美味しいごはん(とお酒)が大好き!ごはんのために働き、ごはんのために眠る!!今日もカロリーと幸せを噛みしめ、数字より気持ちで生きる30代おなご。

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