【コラボ企画】医療の進化を体感!ダビンチ体験会で見た医療の明日

2024年12月12日(木)、日本生命病院で医療従事者を対象に実施された「ダビンチ体験会」に参加してきました。
ダビンチとは手術支援ロボット「Da Vinci」のことで、これを用いた手術が近年増加しています。体験会では、院内外の多数の医療従事者が、これからの医療に不可欠となるであろうロボット支援手術について、学びを深めていました。
今回はそこで体験してきた、ダビンチの凄さと最新のロボット支援手術についてご紹介します。

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院

1924年7月、財団法人「日本生命済生会」設立。日本生命本館内に事務所を設置して診療を開始。1931年6月、名門緒方病院の土地・建物を継承し、大阪市西区新町に「日生病院」を開院(当初は24床で開始)。2018年4月30日、大阪市西区江之子島に新築移転。病院名称を「日生病院」から「日本生命病院」に変更し、現在に至る。

所在地|〒550-0006大阪市西区江之子島2丁目1番54号
病床数|一般350床
診療科|
循環器内科、消化器内科、内分泌・代謝内科、呼吸器・免疫内科、血液・化学療法内科、脳神経内科、腎臓内科、消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、心臓血管外科、産婦人科、小児科、神経科・精神科、脳神経外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成再建外科、放射線診断・IVR科、放射線治療科、麻酔・緩和医療科、リハビリテーション科、救急総合診療科、検査診断科、病理診断科、予防診療科
診療センター|
救急総合診療センター、がん治療センター、女性骨盤底センター、糖尿病・内分泌センター、消化器内視鏡センター、血液浄化センター、脳機能センター、乾癬センター、ニッセイ予防医学センター
その他|
病院機能評価認定病院(3rdG:Ver.2.0)
ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)推奨病院
卒後臨床研修評価機構(JCEP)認定病院
人間ドック・健診施設機能評価認定病院(Ver.4.0)
DPC対象病院
大阪府がん診療拠点病院
地域医療支援病院

<日本生命病院 公式WEBサイト>

ここがすごいよ、ダビンチ!

ダビンチは、メスや鉗子を装着する4本のロボットアームをもつ「ペイシェントカート」、それを操作する「サージョンコンソール」、映像を映し出し手術スタッフと共有する「ビジョンカート」から構成されます。

ペイシェントカート

これらはWi-Fiなど無線ではなく有線で接続されており、操作不能などの事故を防いでいます(過去には他の手術支援ロボットにおいて、海底ケーブルをつなぎアメリカとフランス間で手術が行われた実績も!)。
ペイシェントカートの各アームは、患部付近にいくつか開けられた8~12mmの切開創から患者さんの体内に入り、先端に装着されたメスや鉗子を用いて手術を進めます(※)。

※機械は人間が操作し、自動で動くことはありません
アームの先は、こんなに小さく細い!

各アームは独立した動きが可能で、270°の可動域を持つため、人間の手より精緻な手術が可能。そのため、これまでやむを得ず摘出していた臓器や組織を残すことで、機能を温存できる症例も増えています。
またアームの動きすぎによる事故を防ぐため、操作者の手元の動きはコンピュータ処理にて手振れ補正が行われた上で、約3分の1に縮小調整されます。
取材を行った私たちも操作をさせていただきましたが、直感的に操作できるため、まるで自分の手のように動かすことができました。

指先の動きがアームに伝わります
操作画面はこんな感じ

従来の手術と比較して、患者さんの傷口が小さくすむのが特徴で、これにより以下のようなメリットがあります
・出血が少ない
・合併症が起きにくい
・術後の痛みも少なく、退院が早くなる
また最近は、傷口が1か所ですむモデルも発売されており、より患者さんの負担を少なくする改良が進んでいます。

その他、詳細はこちらよりご覧ください
インテュイティブサージカル|日本支社

日本生命病院の事例

ダビンチは10年前までは全国で100台程度しかありませんでしたが、近年は急速に導入が進み、2024年11月現在は約750台が稼働しています。
取材させていただいた日本生命病院では2018年に導入され、産婦人科・泌尿器科・消化器外科でダビンチを用いた手術が実施されています。特に、産婦人科には多くの医師が在籍し、ロボット支援下手術件数において大阪府下トップクラスの実績です。経験豊富なスタッフの下、安心して手術を受けることができます。

取材当日、消化器外科の山下先生にお話をお伺いすることができましたので、気になる疑問をお聞きしました。

日本生命病院 消化器外科担当部長(ロボット支援手術担当) 医学博士/山下 晋也 先生

-ダビンチを用いた手術は、通常の手術と何が異なりますか
難しい点の1つに、画面に映る視野外でのできごとに、通常の手術より注意を払う必要があることが挙げられます。画面の外で器具が動いたりすると、知らないうちに他の組織を傷つけてしまいかねないので、気を遣います。
また、アームの先の部品を交換する際は、そのアームが使用中でないことを、何度も確認して事故を防ぐ必要があることも、ロボット手術ならではの注意点だと思います。

-ダビンチだからこそできた手術ってありますか
ダビンチは、腹腔鏡手術(※)では不可能な動きができることが、大きな特徴です。直腸がんの患者さんの手術を行った際、その方は肥満体型だったのですが、この特徴を活かし、人工肛門を作らずに手技を行うことができました。
通常の開腹手術や腹腔鏡手術では不可能だった手術で、ダビンチだから実現できた症例でした。

※ダビンチのように小さく複数箇所切開し、腹腔鏡を挿入して腹腔内の様子をテレビモニターに映して観察しながら行う手術。鉗子が直線的なため動きが制限される。
操作者は初めてダビンチを操作していますが、自然な動きです

-どんな患者さんが対象となる?
当院では、ロボットでできる手術は原則として、ロボットで行います。傷も小さく入院期間も短く済む上、実はロボットを使っても追加の料金がかからないので、安心して受けていただけます。もちろん、患者さんの希望があれば、その限りではありません。

-使用者は資格が必要?
少し前は内視鏡の技術認定が必要でしたが、現在はダビンチを使用するための特別な資格はありません。そのかわり決められた講習を受け、本番に備えます。一例目は操作に慣れた先生の指導下で手術を行う必要があります。また、助手にも専門の講習が準備されています。
医療機器メーカーとも連携し、機械的なエラーにもすぐに対応できる体制になっているため、これまで当院では1件の事故も起こっていません。

-今後の可能性
現在は限られた症例でしか使用されていませんが、さまざまなエビデンスが揃ってくると対象症例も増えていくことが期待されます。また機械そのものも、現在は押す・引っ張るなどの動きに対し抵抗が感じられないため、術者が経験から想像しています。これが実際に抵抗を感じられるよう、機械の改良が進められているそうで、これによりさらに安全に手術を行うことができるようになるはずです。

まとめ

筆者は仕事柄、ダビンチのことは耳にすることはありましたが、実物を見たことはありませんでした。今回、実際に目の当たりにすると、その雰囲気に圧倒されながらも、医療機器に見えない不思議な感覚を感じましたが、動くところを見たり操作してみたりすると、最新の医療機器であることを実感。

実は取材前、ロボットに手術されることに不安な気持ちがありましたが、人の手では不可能な手術も実現できることに加え、事故を防ぐための機能や工夫により安心して手術を受けることができると感じました。同時に、これからますます発展していくこと間違いなしのロボット支援手術について、さらに動向を追いかけたくなりました。
これからどんどん、ロボットを使用して行う手術は増えていくと予想されるため、今のうちに正しい知識を身に付けておいてはいかがでしょうか。

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