「オーラルフレイル」という言葉を聞いたことがありますか?
「フレイル」とは、加齢にともない心身の機能が低下し、要介護の一歩手前にある状態を指します。筋力や体力の低下だけでなく、認知機能や社会的活動の減少も含まれます。
一方、「オーラルフレイル」とは、話す、噛む、のみこむ、おいしく感じる、など普段当たり前に口でしていることに、ささいではあるけれど何となく「気掛かり」を感じることが増える状態(口腔機能が衰えた状態)のことを言います。
今回は、オーラルフレイルのなかでも特に「噛むこと」に注目し、口腔顔面領域の神経解剖学を専門とする先生にお話を伺いました。
今回お話をお伺いした人
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森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 学部長、副学長 教授/歯科医師 森谷 正之 先生
大阪大学歯学部助手、大阪大学大学院 歯学研究科講師を経て2008年に森ノ宮医療大学へ入職、2022年より現職。解剖学を担当。 ※取材時
口だけでなく足腰のフレイルを予防するために、通勤時にはエスカレーターは使わず階段派。
オーラルフレイルのセルフチェック
オーラルフレイルは簡単にチェックできます。
下記の5つの質問のうち、「はい」が2つ以上あるとオーラルフレイルといえます。
・半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?
・お茶や汁物等でむせることがありますか?
・口の渇きが気になりますか?
・普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか?
・自身の歯は、19本以下ですか?
(さし歯・金属をかぶせた歯→自分の歯、インプラント→自分の歯ではない)
参考サイト:オーラルフレイルを知っていますか? | 日本老年歯科医学会
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オーラルフレイルは、“口の機能が健常な状態(いわゆる「健口」)”と“口の機能低下”との間にある状態。オーラルフレイルの状態にあると、将来の全身のフレイル、要介護認定、死亡のリスクが高いことがわかっています。
しかしながら、フレイルの段階で気づいて適切な対処をすることで、健常な状態に戻ることは可能です。
「噛むこと」が脳に与える影響
小さいころ「よく噛んで食べなさい」と注意されませんでしたか?
実は、しっかり噛むこと自体がオーラルフレイルの予防になるのです。そしてそれが脳にも良い影響を与えます。
咀嚼(そしゃく)とは、食べ物を噛む運動のことです。
この運動には、歯、舌、口の粘膜、咀嚼筋(噛むときに働く筋肉)、歯根膜(歯を顎の骨と結合する薄い膜)など、口や顔面からのさまざまな感覚情報が関わっています。なかでも重要なのが、咀嚼筋の「伸び」を受容するセンサーと、歯根膜にある歯にかかる力のセンサーです。これらのセンサーは、顎の位置や噛む力を脳に伝えることで噛む運動を調整します。
例えば、硬いものを噛むときには強い力を、柔らかいものを噛むときにはそれに応じた力を発揮するよう、脳が自動的に調整します。こうした感覚と運動の精密な連携によって、私たちは意識せずにスムーズな食事を行っているのです。
また、噛むことで得られた情報は、脳の情動(喜怒哀楽のような感情)をつかさどる場所にも伝わります。そのため、しっかり噛んで食事をすると、「おいしい」「楽しい」「心地よい」といった感情が生まれます。 つまり、噛むことは単に栄養を取り込むための動作ではありません。食事の感覚や楽しさにも関わる、重要な行為だといえます。歯周病などが原因で歯がなくなると、咀嚼筋や歯根膜からの情報が減るなど変化することになります。
関連記事:歯周病についてはこちらをご覧ください
人生100年時代のオーラルケア
先述したようにオーラルフレイルは、口だけの問題にとどまりません。
またさらに、口の機能が低下すると、次のような影響が出てしまう可能性があります。
・栄養を適切に取れず、体が弱ってしまう
・話しづらくなり、他の人たちとのコミュニケーションに消極的になり社会的に孤立してしまう
オーラルフレイルが進行すると、全身の健康や社会生活にも影響を及ぼして、今の生活を維持することが困難になることもあります。
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「自分の歯でしっかり噛み、食事をおいしく味わえる状態を保つことは、心身の健康と幸せな生活を支える一つの要素です。」と、森谷先生。
オーラルフレイルにならないことが一番です。そのためには、日常生活での小さな変化に気づくこと、「意識」することが大切です。若い時から自分のカラダの変化について「意識」する習慣を身につけておくことで、何十年も先の自分の生活の質が変わってきます。また、ある程度の年齢になっても「もう年だから・・・」と諦めたり放置したりすることなく、専門家のサポートを受けながら機能維持を心掛けることで、今の生活を送り続けることができます。
まずは今日の食事で、いつも通りに「おいしく」食べることができているかどうか、「意識」することから始めてみてください。
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【この記事を書いた人】
ばんどう
関西マインドを習得したい関東出身の40代女子。ボケようとしても肝心なところで噛んでしまうのが悩み。
