認知機能は貯金できる?-認知症との向き合い方-

最近物忘れが増えた、親が何度も同じ話をする、これってもしかして認知症?…日常の些細なことからそんな風に感じている人も多いのではないでしょうか?今回はそんな認知症の予防方法や、認知症かも?と思ったらどうすればいいのかご紹介します!

今回お話をお聞きした人

森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 作業療法学科 学科長(教授)松下 太 先生
1990年に作業療法士国家資格取得後、病院や介護老人保健施設にて高齢者や認知症の人のリハビリテーションに従事する。2001年四條畷学園短期大学講師。2016年森ノ宮医療大学教授。2018年三重大学大学院医学系研究科生命医科学専攻認知症医療学講座博士課程修了(医学博士)。2022年より現職。2001年に養成校の教員となってからも、若年認知症支援の会「愛都の会」副代表をはじめ、特別養護老人ホームや重度認知症デイケア、認知症初期集中支援チーム等で認知症の人の支援に関わり、現在は大阪市地域包括支援センター連絡調整事業スーパーバイザーとしても活動中。一般社団法人日本作業療法士協会代議員。一般社団法人大阪府作業療法士会監事。※取材時

認知症を知る

認知症は病名ではなく、脳の機能低下によって日常生活に支障をきたす「状態」の総称で、現時点では根本的な治療方法は確立されておらず、進行性であることが特徴です。この状態を引き起こす原因となる認知症の種類には、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」といったものがあります。

加齢による老化現象との違い

加齢による物忘れが年単位でゆっくり進んでいくのに対し、認知症は進行が早いため、物忘れが半年前~1年前より明らかにひどくなっている場合は要注意だそうです!また認知症でも手足の震えなどの運動障害や幻視などの症状が出る場合もあるため、そういった症状が自分や周囲の方に見られる場合も認知症の疑いがあります。

認知症予防に効果的なこと

認知症になるのは怖いと思ってらっしゃる方も多いと思いますが、その本質については「究極の老化現象」とも考えられています。例えば人間が皆150歳まで生きるとして、そこまで生きても全員がガンにはならないが、認知症には全員なるという考え方です。つまり誰しも老いればいつかは認知機能が低下し、認知症になるとすれば、どうすれば認知症の発症を遅らせることができるのでしょうか?

認知機能は貯金できる?「認知予備力」を鍛える

脳には認知予備力というものがあります。これは脳の神経ネットワークが豊かで、病気や加齢の影響を受けても認知機能が低下しにくい能力を指します。この能力は「認知機能の貯金」とも呼ばれ、子どもの時に思考活動を通じてどれだけ脳が鍛えられたかということが重要になるそうです。思考活動としては、読書、運動、パズルやブロック、会話などを通じたコミュニケーション(社会活動)が効果的とされています。もう子ども時代なんてとっくの昔に終わったよという大人の皆さん、これらの活動はいつから始めても遅すぎるということはないそうなので、今日からぜひ実践してみてください!

認知機能や脳トレについて詳しく知りたい方はこちら↓

Let’s脳トレ!脳を鍛えて認知機能を活性化させよう!

食生活のポイント

バランスのいい食事を心がけるのはもちろんですが、老化の原因である酸化(細胞のサビ)を抑制するのに効果的なものとして、特におすすめなのが次の2つです。

 良質な油:脳の老化や血管の硬化を防ぐ作用があるDHA(ドコサヘキサエン酸)やオメガ3脂肪酸を含む青魚、オリーブオイルなどがおすすめ
 ポリフェノール:ポリフェノールには強力な抗酸化作用があるため、赤ワイン、ブルーベリー、イチゴなどがおすすめ

認知症かな?と思ったら

自身や周囲の方に認知症と思われる症状があった場合、以下のような場所に行って状態を確認してもらうことができます。近年は、認知症の進行を抑える薬(点滴)も開発されているので、早期発見・早期治療が大切になります。

 物忘れ外来:総合病院やクリニックに併設されていることが多く、様々な検査を受けて、認知症か否か診断してくれます。その後の治療方法の提案や専門病院も紹介してくれます。
 地域包括支援センター:いきなり病院に行くのは怖かったり、ご本人が受診をためらわれている場合などに相談に乗ってもらえる場所です。各市町村に設置されていて、ケアマネジャーなどの専門職の方が状態を丁寧に聞き、これからの方針を一緒に考えてくれます。

周囲の人がすべき接し方

認知症になっている人は自分が変わっていっていることに気づいていないかというと、そうではなくて、ご本人も何かおかしいと感じ取っているだろうと松下先生。ただ、自分でも分かっていても、恥ずかしさや怖さがあって、それを口に出せないケースが多いそうです。ではそういった認知症の症状がある人に対して、周囲の人はどうすればいいのでしょうか?

 傾聴と受け止め:例えば財布がないから、「誰かに盗まれた!」という妄想に対し、「そんなわけないだろう!」と真っ向から否定せず、「どうしてそう思ったの?」とまず理由を聞き、落ち着いて話を聞くことが大切。
 病気としての認識:認知症の症状がある状態ということを念頭に置き、普通の会話のルールで接するではなく、感情を受け止める姿勢をとる。
 役割の維持:「できない」と決めつけるのではなく、「何ができるか」を見つける。例えば、火をかけたのを忘れるからと料理自体をやめさせるのではなく、材料切りは本人に任せるなどの工夫をし、生活の継続を支援する。

 

松下先生からのメッセージ

認知症は先述したように、「究極の老化」の一種であるため、誰しもなり得ます。だからこそ、他人事と考えるのではなく、自分事と捉えることで患者さんへの理解や優しさが生まれていきます。ご家族で認知症かな?と思っても、家族だからこそどうしたらいいかわからないという状況に陥りがちです。そんなときは地域包括支援センターなど客観的にアドバイスをくれる人を頼りましょう。早めの対応が、ご本人と家族双方の幸せにつながっていきます。また、万が一認知症を発症したとしても、本人の意思と尊厳が尊重され、地域住民・家族・専門職が支え合いながら、安心して役割やつながりを持ち続けられる地域共生社会となることを願っています。

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【この記事を書いた人】

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kuwapan

お酒が全く飲めないのに、何軒もハシゴして美味しい物を探すのが大好きな一児の母。

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