【医療の仕事に迫る!】妊娠中から産後まで!「助産師」ってどんな仕事?

2025.03.31

日本国内で2024年に誕生した赤ちゃんの数は約72万人。尊い命の誕生を支えているのが助産師です。
今回はそんな助産師の仕事内容や魅力に迫ります!

今回お話をお伺いした人

看護師・助産師 中西 伸子 先生
兵庫大学、奈良県立医科大学を経て森ノ宮医療大学就任。助産師の教育にエネルギーを注ぐと同時に助産師会に所属し、東大阪班の班長として地域の母子支援にも尽力。2023年には大阪府看護事業功労者として表彰、2024年には一般社団法人日本家族計画協会 会長賞を受賞。地域の妊産褥婦に寄り添うとともに、母子とその家族の支援に携われる助産師を育てている。

助産師の仕事内容は?

助産師の仕事といえば、出産時の分娩介助をイメージされる方が多いのではないでしょうか。実は助産師の仕事は分娩介助だけではなく、女性や家族の健康支援など多岐にわたっています
病院で働く助産師の場合、妊娠反応検査の段階から妊婦と関わります。妊娠初期は4週に1回、24週を超えると2週に1回、36週になると毎週診察がありますが、その時に行われる妊婦への保健指導でも、妊娠中の生活や出産に向けたアドバイスをしたり、不安を抱える妊婦の相談に乗ったりします。
出産の場面では、母子ともに安全に出産できるように寄り添い、分娩介助をします。無痛分娩の場合も麻酔管理を除いたほぼ全ての介助を助産師が行います。無痛分娩では陣痛の波を感じにくく、妊婦がいきむタイミングが分かりづらいため、麻酔医と協力したより高度な介助技術が求められます。

また、出産後の育児不安を払しょくするために寄り添うのも助産師の大切な役目です。出産前の妊婦との関わりでは、退院後育児をサポートしてくれる人がいるか確認し、もしいなければ産後ケア制度(出産を終えたばかりのお母さんの体のケアや赤ちゃんのお世話をする支援事業)の活用につなげていきます 。
産後ケア施設として登録している病院や助産院でショートステイ、宿泊、アウトリーチ(家庭訪問支援)などのサービスを、市の補助のもとに母児いっしょに利用できます。そして産後の入院期間には、母乳育児に向けた支援や育児技術を指導します。

病院や助産院で分娩介助を主に行う助産師以外にも、助産師会に所属し、産後ケア施設や地域の保健センターなどで働き、地域に根付いた母子の支援を行っている助産師もいます。他にも小・中学校、高校などに出向き、命の不思議さと大切さを伝える性教育を行っているのも助産師です。

開業権を持っています!

助産師資格を取得することで、助産院の開業権を得ることができます。助産院と一口にいっても、お産ができる助産院と産後ケア専門の助産院、両方兼ね備えた助産院があります。それぞれの特徴を説明します!

① お産ができる助産院(産後ケアも可能な助産院もあります)

正常分娩が可能な妊婦が出産することができます。
近年は病院で出産する人が大半ですが、お産に対するこだわりを持って助産師による自然分娩がいいと助産院を強く希望される方もいらっしゃいます。そんな妊婦の希望を叶えるため、助産院では妊婦の個別性や家族を含めた支援を大事にしています
バースプラン(理想の出産計画)をかなえ、一人ひとりに寄り添った出産をサポートし、家族での立会出産や産後も育児不安がないように育児技術の支援も行っています。またマタニティヨガやベビーマッサージなど、特色を打ち出した産前産後のサービスを実施する助産院もあります。
分娩を取り扱う助産院は医療法に基づき嘱託医・嘱託医療機関を定めています。さらに分娩時は、複数の助産師でかかわり安心安全な助産ケアを提供しています。

② 産後ケアを専門とした助産院

出産後のお母さんの育児不安や、赤ちゃんのお世話を助ける産後ケア事業を専門に行う助産院です。出産後すぐのサポートがない場合や出産で心身にダメージを受けたお母さんが休息を取っている間、助産師が代わりに赤ちゃんのお世話をします。滞在期間は数時間のショートステイから1か月以上の宿泊型まで、施設によってさまざまなので、お母さんのニーズに合わせて選べます。
地域や家族・親戚との関わりが減り、育児において周囲からの助けを得られない妊婦が増加した現代社会のニーズに合わせ、このような産後ケアに特化した助産院も増えてきています。

助産師に求められる力は?

助産師資格は看護師資格を持っていないと取得できない資格です。助産師は分娩介助などを1人で担う部分が多いため、個人の責任が重く、より判断力が求められます。また、妊婦にとって出産は一生に1~数回しかない、子と自分の命がかかった一大イベントであるため、1回1回の分娩介助にその方が満足のいく、安全なお産にすることが助産師の使命です。
助産師として何百回もの分娩介助に携わってきた中西先生でも、出産後赤ちゃんが元気に泣いてお母さんと喜びの対面ができた姿を見るたびに無事分娩を終えられた安堵感でほっとするそうです。

また助産師は妊婦の強い味方であるため、妊婦に寄り添うコミュニケーション力も求められます。妊娠中から産後にかけて、身体の変化や育児に対する不安を抱える妊産褥婦の気持ちや言葉に出せないしんどさを思いやりながら接することが、信頼関係を築くための鍵です。

助産師をめざす皆さんに中西先生からメッセージ

助産師に向き不向きはありませんが、人に寄り添うことがより求められる職業です。自然にふれるなどさまざまな経験を通して自分の感性を磨き、色んな人と話をして聞く姿勢を身につけてください。相手を思いやり、そして自分のことを大事にできることも重要と考えます。妊婦と出会った瞬間に「この人に出産をゆだねたい」と思ってもらえるような笑顔の素敵な助産師になれるといいですね。
また助産師は体力勝負の職業でもあるので、自分の健康にも気を付けてくださいね。

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