過ごしやすい秋が終わりつつ、だんだんと寒くなってきましたね。家や外出先では暖房の利用が増えていき、これから屋内外の気温差がどんどん大きくなります。そんなとき、発症することがある「寒暖差アレルギー」。実は、筆者は2年前に発症しました。
今回は、寒暖差アレルギーについて、「アレルギーの専門家」である安部先生に詳しくお話を伺いました。
今回お話をお伺いした人
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森ノ宮医療大学 看護学部看護学科 教授/安部 辰夫 先生
大阪大学大学院 医学系研究科卒、医学博士。専門は免疫学、アレルギー内科学、病理学。大阪大学 医学部 第三内科分子免疫研究部門 研究員を経て、2016年4月より現職。
寒暖差アレルギーとは?実はアレルギーではなかった!
冒頭にもある通り、寒暖差アレルギーは急な温度変化によって起こり、一般的には7℃以上の気温差があると発症しやすいとされています。名前に「アレルギー」と入っていますが、実際はアレルギーの一種ではありません。正式には「血管運動性鼻炎」と呼ばれ、鼻の粘膜にある血管が、急な温度変化の刺激に反応することで症状が現れます。では、なぜ「寒暖差アレルギー」と呼ばれているのか?それは、アレルギーに似た症状が出るからだそう。
―寒暖差アレルギーの症状とは
(よくある症状)
・鼻水やくしゃみ
・蕁麻疹
(ときどきみられる症状)
・喉の痛み
・肌のチクチク感
・倦怠感 など
症状が鼻水だけなら一見風邪のようにも見えますが、寒暖差アレルギーの場合は鼻水が透明でサラサラしているのが特徴です。風邪の場合、鼻水は粘り気があって黄色っぽくなることが多いので、そこが見分けるポイントです。また、鼻水と一緒に蕁麻疹が出る人も多いです。筆者も最初は両腕に赤くて痒いブツブツが出て、掻きたいのを我慢するのがとても辛かった記憶があります…。
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―最新の研究でわかった本当の原因は?
残念ながら、寒暖差アレルギーの根本的な原因はまだ解明されていません。現在わかっているのは、温度差によって症状を引き起こすヒスタミンという炎症物質が分泌されることまでで、なぜヒスタミンが分泌するのかはわかっていないのです。
<関連記事:アレルギーのメカニズム>
ただし、研究が進む中で、温度や触覚を感じる受容体※が大きく関係していることがわかってきました。特に、2021年のノーベル賞で注目された「TRPチャネル」というタンパク質の遺伝子群が、寒暖差アレルギーに関わっている可能性があるとされています。今後の研究にも期待ですね…!
受容体…体が外から受ける刺激を察知する部分
―診断と治療の方法は?
【診断】
特に蕁麻疹が出た場合はアレルギー科がおすすめですが、アレルギー科は大きな病院にしかないことが多く、紹介状が必要な場合もあります。まずは、近所の皮膚科を受診するとよいでしょう。鼻水だけの症状でもひどい場合は、耳鼻科でも検査や診断を受けることが可能です。
診断には血液検査を行います。アレルギーの場合には、IgE抗体という物質が血液中に現れます。一方、寒暖差アレルギーはアレルゲンが原因ではないため、IgE抗体は検出されません。つまり、「IgE抗体が出ないのにアレルギーに似た症状がある」場合、寒暖差アレルギーと判断されるのです。
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【治療】
原因がまだ完全に解明されていないため、一度発症すると根本的に治すのは難しいとされています。処方された抗ヒスタミン剤を服用すると症状は和らぐでしょう。
寒暖差アレルギーと上手に付き合うために
根本的な原因がまだ不明なため、寒暖差アレルギーそのものを完全に防ぐのは難しいのが現状です。発症した場合は、症状とうまく付き合っていくことが重要なので、安部先生おすすめの対処法をご紹介します。寒暖差アレルギーは温度差で起こるため、できるだけ急な温度差を避ける工夫をしましょう。
①外出時はマフラーや手袋、マスクなど保温効果の高いアイテムで体を温める。
②重ね着をして、気温の変化に合わせて服を脱ぎ着できるようにする。
③体を内側から温める漢方薬を飲む。
④お風呂のときは脱衣所をあたためておき、入浴後は急に体が冷えないようにするなど、環境にも注意する。
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(少しやりすぎでしょうか…)
寒い時期の蕁麻疹には注意!思わぬ病気が隠れていることも…
寒暖差アレルギーだと思っていたその蕁麻疹、痛みを伴っていませんか?実はそれ、他の病気の可能性があります。実は、寒さをきっかけに現れる「クリオグロブリン」という抗体が血管に付着し、「クリオグロブリン血症性血管炎」という重病を発症しているケースもあります。この病気は治療が遅れると炎症が全身に広がり、呼吸困難や筋肉が動かなくなるなど重症化することもあるのです。診断には、寒暖差アレルギーと同様の血液検査で、クリオグロブリン抗体を調べます。寒暖差アレルギーによる蕁麻疹はかゆみを伴うのに対し、クリオグロブリン血症性血管炎は痛みが強いのが特徴です。
まとめ
鼻水や蕁麻疹などの症状が出たとき、軽い場合は市販薬で様子をみたくなるかもしれません。しかし、重い病気が隠れていることもあり、放置すると悪化するリスクもあります。自己判断せず、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
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【この記事を書いた人】
コーヒーソムリエ
コーヒーがあるとき~(^^)ないとき~(_ _)の生粋の大阪人。保幼小の教員免許をもつ子ども大好きフルタイムワーママ。
