【うぅ、おなかの調子が…】この時期に気を付けたい食中毒

春過ぎて夏来にけらし…うんぬんかんぬん。もうすぐ夏ですね!そんな夏の前におとずれる梅雨。じめじめしているこの時期は、洗濯物が乾かないし、髪がまとまらない、食べ物も傷みやすい。そうです、食中毒に気を付けるべきシーズンです!!そこで今回は食中毒について、耳よりな情報をお届けします。

今回お話をお伺いした先生

森ノ宮医療大学 医療技術学部 臨床検査学科 助教/臨床検査技師 松尾明彦 先生
九州大学医学部保健学科検査技術科学専攻を卒業し、臨床検査技師の資格を取得。その後、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 修士課程修了(人間健康科学)。京都大学医学部附属病院での勤務を経て、2023年4月より現職。

食中毒とはなにか?

食中毒とは、病原微生物(細菌・ウイルス・寄生虫など)や有毒、有害な物質が含まれた食品を口から摂取することで、下痢や嘔吐、場合によっては発熱といった症状が起きることです。松尾先生によると、原因となる病原微生物の特性によって夏場に増えやすいもの、冬場に増えやすいものがあるそうです。

夏の細菌、冬のウイルス。季節で違う増えやすい病原微生物

夏場になると、細菌が原因の食中毒が発生しやすくなります。細菌の生育を促す環境というのが、温度:ヒトの体温と同じ37℃前後、湿度:70%と潤っていて湿気があるところ。このような環境を細菌が好むため、まさに梅雨の時期が当てはまります。
冬場になると、ウイルスが原因の食中毒が発生しやすくなります。食中毒の原因ウイルスの多くは低温、乾燥した環境を好むので、夏場よりも活動が活発になります。(ちなみに寄生虫は通年で注意が必要です。)

代表的な食中毒ってどんなの?

■細菌性の代表例

・カンピロバクター

加熱が不十分な鶏肉を食べたときに発症するケースが多くあります。カンピロバクターに汚染された食品を食べて、菌が体内に入り腸管上皮細胞に侵入することで症状があらわれます。潜伏期間は2~5日程度なので、忘れた頃に症状があらわれることも。カンピロバクターは加熱したら死滅する菌なので、鶏肉はしっかり加熱することが大切です。

・サルモネラ属菌

サルモネラ属菌は家畜 (牛、豚、鶏など) の腸管に生息しているため、主に加熱不足の卵や肉が原因となりやすいです。潜伏期間が10~48時間ほどで嘔吐、下痢、発熱などの症状がみられます。生肉や卵を扱った調理器具はしっかり洗浄することが大切。また、古くなった卵は生で食べるのは控えましょう。

・腸管出血性大腸菌(O157)

家畜の腸管に常在していることがあるため加熱不十分な牛肉、糞便を介して汚染された生野菜を食べたときに菌が腸管内に入り、毒素を産生して症状が出ます。特に子どもは症状が重くなるケースがあるので、気を付けたいもの。この菌は75℃で1分以上加熱すると死滅するので、しっかり加熱をしましょう。

・ウェルシュ菌

土壌や家畜の腸管にいる菌で、野菜や肉に付着していることがあります。ウェルシュ菌は芽胞(耐久性の高い細胞構造)を形成する菌で熱に強く、100℃で数時間の加熱をしても死滅しません。また、偏性嫌気性という性質があり酸素のないところで発育するため、鍋に入ったカレーなどの底の方で増殖しがち。常温で「冷めるまで置いておこう」のつもりが半日放置してしまった場合、どんどん菌が増えることに。そうなると食べる時に再加熱しても菌を死滅させることができず、ヒトの腸に入って毒素を産生し下痢などを引き起こします。加熱したから安心と思いこんだらだめ。加熱しても生き残る菌もいます。調理時には野菜はよく洗い、お肉は調理直前に冷蔵庫から出して調理しましょう。

・黄色ブドウ球菌

常在菌といってヒトの鼻腔や皮膚に存在し、健康な状態であれば悪さをしない菌。調理前の手洗いが不十分で手に菌が付着していた場合、その手でおにぎりを作ると菌がおにぎりに移ることに。これを常温で長時間置いたままにすると、おにぎりの中で菌が増殖して毒素を産生し、この毒素を摂取することによって食中毒が起きてしまいます。潜伏期間が30分~6時間と比較的すぐに症状が出るのが特徴です。この毒素は熱に強く100℃で30分加熱しても無害化されません。

■ウイルス性の代表例

・ノロウイルス

食中毒が起こる原因の半分がノロウイルスによるものといわれています。みなさんも耳にしたことがありますよね?多く起きているのは、加熱不十分の牡蠣を食べたとき。潜伏期間は約48時間なので、牡蠣を食べて2日後くらいにイテテ…となることが。ウイルスは冬場に多いとはいえ、夏にも起こり得るものなので、1年中気を付けたいですね。

対策できることは?覚えておきたい予防のポイント

厚生労働省から食中毒予防の三原則が公表されています。それが「つけない、増やさない、やっつける」の3つ。「つけない」は、まず食品に触れるときにはしっかり手を洗い、清潔な調理器具を使用すること。これは基本中の基本です。また、生肉や生野菜を調理した後に使用したまな板を洗わず次の食品を調理したとき、二次汚染が起きるケースもあるため気を付けましょう。「増やさない」は、調理後の食品を常温で長時間放置しないこと。常温で長い時間置いておくと、どんどんウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌は増殖します。冷めたら冷蔵庫で保管しましょう。「やっつける」は、加熱をすること。すべてとは言えないものの、火を通すことで菌やウイルスを死滅できるケースは多くあります。熱でやっつけることが、食中毒予防に繋がります。
厚生労働省 食中毒:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html

さいごに

夏場におにぎりやお弁当を持ち歩く場合、保冷剤がマストアイテム!松尾先生もお弁当を持つとき、必ず保冷剤をお弁当箱の上に置き、保冷バッグに入れて持ち運ばれているそうです。食中毒の予防策として、ぜひ取り入れたいですね!!また、「加熱しても死滅しない食中毒菌があること、細菌が食品で産生する毒素の中でも熱に強い毒素があることを知っておいてほしい」と松尾先生は強調されていました。みなさんも食中毒に注意してこの季節を過ごし、元気に夏を迎えましょう。ちなみに松尾先生の好きなおにぎりの具は鮭、お弁当のおかずでは豚の生姜焼きがお好きだそうですよ。

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