頭をぶつけた選手が「大丈夫です」と立ち上がる。そんな光景を見たことはありませんか?
スポーツ現場では、試合を続けたい気持ちやチームへの責任感から、多少の不調を我慢してしまう選手も少なくありません。
打撲や捻挫であれば、実際にプレーを続けられることもあります。
しかし、脳震盪(のうしんとう)は違います。
見た目では判断できず、時には生命にかかわることも…。
今回は、そんな脳震盪の危険性と競技復帰の考え方について、スポーツトレーナーの小田先生に伺いました。
今回お話をお伺いした人
森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 准教授/小田 啓之 先生
鹿屋体育大学体育学部卒業後、同大大学院体育学研究科修士課程、大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程修了後、履正社医療スポーツ専門学校スポーツ学科 教員を経て2023年より現職。保有資格はNSCA-CPT、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)など。研究テーマは「スポーツ障害における筋腱メカニクス」。現在も教鞭をとる傍ら、週末はパーソナルトレーナーとして活躍中。※取材時
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脳震盪とは何か
脳震盪とは、頭部や体に大きな力が加わり、その衝撃で脳が揺さぶられることで起こる障害です。
脳が揺れることで神経が引き延ばされ、一時的に脳の働きに異常が生じます。
場合によっては、その損傷した状態が定着してしまうことも。
MRIなどの画像検査で異常が見つからないこともあるのが、怖いところです。
脳震盪というと「気を失うもの」というイメージを持つ人もいますが、実際には意識消失を伴わないケースも多くあります。
症状としては、頭痛やめまい、吐き気、視野の異常などのほか、見当識障害と呼ばれる症状が現れることがあります。
例えば、スポーツ中の脳震盪の場合、
・今日の日付が言えない
・試合会場が言えない
・試合経過(得点状況や前半、後半など)が言えない
といった状態です。
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さらに次のような症状はRed Flag(危険なサイン)と呼ばれ、脳出血(急性硬膜下血腫)など命に関わる重篤な病気が隠れている場合もあります。
ためらわずに119番通報してください。
・嘔吐
・意識障害(呼びかけや刺激に対応できない)
・けいれん
・物が二重に見える
・手足のしびれや脱力
・興奮状態や異常行動
・強い頭痛や頭痛の悪化
「大丈夫」は危険。脳震盪の確認と復帰
脳震盪の対応を難しくするのは、選手本人の「大丈夫」という言葉。
選手は試合中や大会期間中は、「まだプレーできる」「チームに迷惑をかけたくない」という思いから、症状を軽く伝えてしまうことがあります。
これに対応するためスポーツ現場では、医師やトレーナーなどが、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)、AVPU、SCAT6(※)など客観的な指標を用いて確認を行います。
また脳震盪で最も警戒しなければならないのが「セカンドインパクト」。
これは最初の衝撃から十分に回復しないうちに、再び頭部へ強い衝撃を受けることで起こります。
回復途中の脳は非常にデリケートな状態。
その段階で再受傷すると、重い後遺症が残ったり、時には生命に関わったりするケースも報告されています。
だからこそ、「大事な試合が近いから」「本人が出たいと言っているから」という理由で復帰を急がせてはいけません。
一般的に脳震盪の回復には少なくとも7〜10日程度かかります。
そのため以下のように段階的に運動量を増やし、復帰に向けて焦らず慎重に回復を進めることが重要です。
①24時間の安静
②軽い有酸素運動
③走る、ドリブルなどの競技動作
④コンタクトのない練習
⑤通常練習
⑥競技復帰
なお、脳震盪の発生が多いラグビーでは、トップレベルになると「選手の頭部受傷履歴を記録し、その影響を検証するシステム」が整備されているそうです。
このような先進的なアプローチは、他の競技でも参考になりますね。
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正しい対処法をチーム全員に共有しましょう
脳震盪への対応で最も大切なのは、「試合に出場させること」ではなく「選手を守ること」です。
脳震盪は見た目では分かりません。
選手本人が大丈夫だと思っていても、脳は回復していないかもしれません。
選手が将来も競技を続けられるために、「大丈夫」の一言を鵜呑みにせず、選手に関わる大人——保護者、指導者、トレーナーなど——が同じ認識を持ち、客観的な指標に基づいて判断する。
その協力こそが、スポーツ現場で起こりうる重大な脳損傷から、選手を守ることにつながります。
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【この記事を書いた人】
カツオ
三度の飯より釣りが好き。三度の飯は麺が好き。な元サッカー審判員(ついに40代突入)
