「すみませーん!」
飲食店で店員さんを呼んでも、なかなか気づいてもらえない。
私のことです。
隣にいる友人は自分より小さな声なのに、店員さんがすぐに振り向くのはなぜ?
今回はそんな疑問について、言語聴覚士の先生に聞いてみました。
※専門的には「通る」声は「響く」声と呼ぶため、文中もそのように記載しています
今回お話をお伺いした人
森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部言語聴覚学科 准教授/言語聴覚士 南都 智紀 先生
広島県立保健福祉大学卒業後、県立広島大学総合研究科保健福祉学専攻 修士課程修了(修士)。大阪大学歯学研究科口腔科学専攻 博士課程修了(博士)。森之宮病院、兵庫医科大学病院、京都先端科学大学を経て、2024年4月より現職。臨床に注力する一方、県立広島大学大学院では口腔運動と発話の研究、大阪大学大学院では口腔運動と嚥下(飲み込み)の研究を行い、口腔運動のトレーニング法開発に取り組んでいる。※取材時
声量じゃなかった!「響く声」の正体
「響く声は、大きな声と似て非なるもの」と南都先生。
響く声に関係する3つの要素をご紹介します。
①呼吸
声を出すためには、肺から送り出される息が重要な役割を担います。
そのため姿勢や体格、胸やお腹の筋力などが影響します。
猫背になったり浅い呼吸になったりすると、十分な息の力が伝わらず、響きにくい声になるそうです。
以下は、発声時の呼吸量を計測した写真。
息を吸うと波が上昇し、吐くと下降します。
しっかり息を吸って発声した際(下)は、声が長く続いていることが分かりますね。
息を吸わずに発声した時
十分に息を吸って発声した時
②声帯の閉じ方
喉には声帯という、声を出すための器官があります。
声を出すときには、左右の声帯が近づいてほぼ閉じた状態になり、その間を息が通り抜けることで声帯が振動し、声がつくられます。
この際、声帯が大きく開くと空気が漏れ、かすれたような声に、適度に閉じると空気の振動が効率よく伝わり、響く声になるのです。
南都先生の声帯(丸部分)
音声を波形で比較すると違いは一目瞭然。
響く声は縞模様が規則正しく並び、低音から高音まで安定して発声していることが分かります。
一方、響かない声は縞模様がまだらになっていました。
波形の比較。左:響かない声(縞が乱れている)、右:響く声(縞模様が規則正しく並ぶ)。※横軸は時間、縦軸は周波数
咳やくしゃみをする際、思ったより大きな声が出てびっくりしたことはありませんか。
あれは、肺にたまった空気が締まった声帯を一気に通るためだそうです。
③声帯の張り
声帯に適度な張りがあると、肺から送られる空気のエネルギーがしっかり伝わり、響く声に。
逆に柔らかすぎると、息のエネルギーが吸収されるため、十分な声帯振動が起こらず響きにくい声となります。
声帯の張りは生まれつきの要素もありますが、意識的に調整することも可能です。
軽く喉を締める感覚で、適度な力を入れると、少し響きのある声が出るそうです。
声帯の働きや発声の状態を評価する機器
声帯が緊張した時と、リラックスした時の状態を比較しています。
声の大きさが同じでも、声帯が緊張したとき(下)は「声門下圧(声帯の下の圧力)」が高まっていることがわかります。
声帯がリラックスしているとき
声帯が緊張したとき
響く声=良い声、ではない?
ここまで聞くと、「響く声をめざそう」と思いますよね。
ところが南都先生いわく、一概にそうとは言えないとのこと。
響く声は遠くまで届く一方で、人によっては圧迫感を感じることもあります。
そのため南都先生は、患者さんと話すとき、あえて響きを抑えた柔らかい声を使うこともあるそう。
また授業中も響く声だけでなく、学生の様子に合わせて使い分けをしているんだとか。
さらに驚いたのが取材中、先生からあった
「カツオさん(私)の声は安心感があります。」
の一言。
思わず「えっ?」と聞き返してしまいました。
声がコンプレックスだった私にとって、その言葉は意外だったからです。
人とじっくり話す場面では、むしろ安心感を与える声になることもある。
「通らない声」を改善することだけが正解ではない、と気づかされました。
あなたの声にも"役割"がある
お店で店員さんを呼ぶとき。
プレゼンで話すとき。
家族や友人と話すとき。
求められる声は、それぞれ少しずつ違います。
「もっと大きな声を出そう」と力むより、「どんな声なら相手に届きやすいか」を意識してみる。
それだけで、コミュニケーションは少し変わるのかもしれません。
……とはいえ、店員さんを呼ぶたびにドキドキする私としては、ピンポンが置いてあるお店には、これからもお世話になりそうです。
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【この記事を書いた人】
カツオ
三度の飯より釣りが好き。三度の飯は麺が好き。な元サッカー審判員(ついに40代突入)
