【トレーナー志望者必見】現役トレーナーが語る、現場のリアルと資格取得のポイント

2024年、スポーツの話題は大谷翔平 選手の活躍で持ち切りでしたね。ある試合で、2塁ベースへスライディングし肩を痛めた際、すぐに駆け寄ってきた球団スタッフとの会話が事細かに報道され、その様子を見聞きされた方も多いのではないでしょうか。その際にやりとりしていたスタッフが、今回のテーマであるスポーツトレーナー(以下、トレーナー)です。今回はそんなトレーナーについて、森ノ宮医療大学の小田先生にお話しを聞いてきました。

今回お話をお伺いした人

森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 講師/小田 啓之 先生

鹿屋体育大学体育学部卒業後、同大大学院体育学研究科修士課程、大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科満期退学後、履正社医療スポーツ専門学校スポーツ学科 教員を経て2023年より現職。保有資格はNSCA-CPT、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、中学校・高等学校教諭一種教員免許状(保健体育)など。研究テーマは「スポーツ障害における筋腱メカニクス」。現在も教鞭をとる傍ら、週末はパーソナルトレーナーとして活躍中。

スポーツトレーナーの仕事

一口にトレーナーといっても、その内容は多岐にわたります。
対象者の筋力や持久力向上を主に行うストレングストレーナーや、体調管理や故障予防を中心に行うコンディショニングトレーナー、これらに加え怪我の応急処置や現場復帰のサポートも行うアスレティックトレーナー、怪我の治療を行うメディカルトレーナーなど、対象の目的によってさまざまです。またこれらを個人契約により1対1で行うトレーナーをパーソナルトレーナーとよびます。

その分、後に紹介する資格も多様な種類があるため、これからトレーナーをめざす方は、自分がどのようなトレーナーになりたいのかを明確にし、そのために必要な資格を選択することが大切です。

雇用されるチームや個人によって治療やリハビリ、トレーニングなど、求められる内容が異なります。そのため就職の際は、ミスマッチが無いように注意が必要です。
ただし実際は「何でも屋」のような役割を担うことも多く、決められたことだけやればいい、というものではないそうです。また自分の専門以外の種目を担当することも多いため、競技特性の理解も求められます。

現場のリアル

プロチームとアマチュアチームの大きな違いは、在籍するトレーナーの数だそう。プロは複数のトレーナーが手分けして担当するのに対し、アマチュアは1人ですべてを見ることが多く(しかも選手数はアマチュアの方が多いことがほとんど)、しかも多様なニーズに応える必要があるのが特徴です。

待遇面では、チームの規模や成績、スポンサー収入などによるものの、経験や実績を積むまでは日本の平均年収を下回ることが多いそう。またほとんどが単年契約です。
競技によりますが一般的に、練習や試合の前後2時間程度ずつ準備や選手のアフターケア等を行うほか、チームが休養日でも自主トレーニングを行う選手がいる場合は帯同する必要があるので休日返上となることもあるなど、休みはほとんどないのが実情です。
それでも、二人三脚となりサポートした選手が最高のパフォーマンスを発揮する姿を、最も近くで見ることができるのがトレーナーの魅力だと言えるでしょう。

スポーツトレーナーへの道

小田先生に、日本でトレーナーとして活動するための方法を3つ教えていただきました。特に3つ目は最近少しずつ増えているルートなので、これからトレーナーをめざす人は要チェックです。

1.求人情報をチェックする

一般的な就職活動同様、求人情報を探す方法です。シーズン前に情報が公開されることが多いですが、シーズン途中にも情報が出ることがあるので、常にチェックしましょう。

2.紹介を受ける

現在、最も主流なのがこの方法です。すでにトレーナーとして活動している人などのもとへ求人情報が届き、その人が適任と思う人を推薦します。日ごろからさまざまな人と繋がりを作っておき、情報が届いた際に推薦してもらえる関係を築いておくことが必要です。学生の方は先生に相談してもいいでしょう。

3.インターンに参加する

最近増えてきているのが、1か月程度インターンとしてチームに帯同し、そこでの様子を基に採用に至るケースです。互いに人となりや現場の雰囲気が掴めるので、安心して入職することができます。シーズン終了後のキャンプ前などに募集が出ることがあるので、チームのWEBサイトなどをチェックしてみましょう。

資格の種類

実はトレーナーになるためには、資格取得は必須条件ではありません。自分(トレーナー)とそのサポートを必要とする選手がいれば、それは立派なトレーナーです。
とはいえ専門的な技術・知識が必要な仕事であるため、それを有することを証明し、社会的な信用を得るためには、資格が必要となります。また海外では、資格によって収入が変わることも。
ここでは代表的な資格をいくつかご紹介します。先述したように、自身がめざすトレーナー像から逆算した資格を選びましょう。

凡例|特:特徴 認:認定機関 主:主な取得条件・受験資格 合:合格率 W:WEBサイト

鍼灸師(はり師・きゅう師)
特|怪我の治療だけでなく、コンディショニングにも用いることができる
認|厚生労働省
主|高等学校卒業後、大学や専門学校などの養成校に通い、受験資格を得る
合|約70%
W|公益社団法人 日本鍼灸師会

| 理学療法士
特|怪我からの復帰に必要なリハビリテーションのほか、けが予防の指導や動きづくりを行う
認|厚生労働省
主|高等学校卒業後、大学や専門学校などの養成校に通い、受験資格を得る
合|80%前後
W|公益社団法人 日本理学療法士協会

| 柔道整復師
特|脱臼や捻挫、骨折の応急処置のほか、復帰までのサポートなども行う
認|厚生労働省
主|高等学校卒業後、大学や専門学校などの養成校に通い、受験資格を得る
合|約65%
W|公益社団法人 日本柔道整復師会

| 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
特|ストレングス、リハビリ(メディカル)、コンディショニングなど幅広く対応することができる
認|日本スポーツ協会
主|満20歳以上で日本スポーツ協会加盟団体からの推薦を受け、講習・実習に参加または養成校に通い受験資格を得る
合|約10%
W|公益財団法人 日本スポーツ協会

| JATI-ATI 日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者
特|筋力・持久力UP、体力ベースを上げるストレングストレーナーに重点をおく
認|日本トレーニング指導者協会
主|協会が実施する講習会に参加
または養成校に通い受験資格を得る
※一部資格取得者は講習免除となる場合があります
合|約70%
W|特定非営利活動法人 日本トレーニング指導者協会

この他、特にユース年代のチームからは、教員免許や教員経験を求められることもあるそう。自身の強みを明確にすることが大切ですね。
なお、ここまでご紹介した資格は、日本国内でのみ有効なものですが、次にご紹介する資格はすべて国際ライセンスです。そのため海外でも活動を考えている方にとっては強い武器となるでしょう。

国際ライセンスを取得すれば、海外での活躍も!

| NATA-ATC (全米アスレティック・トレーナーズ協会公認アスレティックトレーナー)
特|アメリカでは国家資格として、看護師などと同じ準医療従事者として扱われる。日本人の取得者は200名に満たない
認|全米アスレティック・トレーナーズ協会
主|日本の大学卒業後、アメリカの大学で大学院修士課程(NATA-ATCが取得可能な大学院)を修了する
合|約85%
W|全米アスレティック・トレーナーズ協会

| NSCA-CPT(全米ストレングス&コンディショニング協会認定パーソナルトレーナー)
特|アスリートのパフォーマンス向上をめざしたパーソナルトレーナーの資格で、日本国内でも認知度が高い
認|全米ストレングス&コンディショニング協会
主|高等学校卒業または高等学校卒業程度認定試験(旧:大学入学検定試験)に合格する
合|81%(2023年度)
W|特定非営利活動法人 NSCAジャパン

| NSCA-CSCS(全米ストレングス&コンディショニング協会認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
特|パフォーマンス向上を目的とした、筋力強化やコンディショニングに強い
認|全米ストレングス&コンディショニング協会
主|学士以上の学位取得または高度専門士
合|48%(2023年度)
W|特定非営利活動法人 NSCAジャパン

| NASM-PES(全米スポーツ医学アカデミー認定パフォーマンス・エンハンスメント・スペシャリスト)
特|アメリカの理学療法士により作られた資格のため、メディカル面に加え、動作改善に強い
認|全米スポーツ医学アカデミー
主|4年制大学またはスポーツトレーナーや医療系専門学校を卒業し、オンライン講習を受講する※日本国内での受験が可能
合|非公開
W|株式会社JAPAN WELLNESS INNOVATION NASM事業部

| NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会公認パーソナルフィットネストレーナー)
特|アスリートだけでなく一般の方の健康や、ビジネススキルやマーケティングについても学ぶことができる。日本国内の認知度が高い
認|全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会
主|高等学校卒業または高等学校卒業程度認定試験(旧:大学入学検定試験)に合格する
合|約55%
W|NESTA(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)

これからトレーナーをめざす方へアドバイス

多くのトレーナーはチームに雇われながらも、プロ選手同様に個人事業主として契約し活動しています。そのため年度末には確定申告が必要ですし、税や様々な補助制度など、お金についての知識が必要になります。これらは働き出して必要になってから勉強することもできますが、できることなら学生のうちに行った方がよいと小田先生は言います。
また、途中にも出てきましたが、トレーナー活動はある種の自己犠牲が必要な面もあります。さらに求人が出るタイミングにあわせ、素早くチャンスをつかみに行くことも時には必要です。そのため、無理がきく若いうちに積極的に挑戦し経験をつむことが、最も大切だそう。
さらに、ダブルライセンス(例:鍼灸師+アスレティックトレーナー)を取得することで、トレーナーとして活躍の場を広げ、幅広く対象者のサポートをすることができます。

ニュースを賑わすあの選手の活躍は、それを支えるトレーナーあってのもの。
ぜひ夢をかなえてください!

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