「あんたも歳やな」はウソだった!?知られざる筋肉痛の謎

夏の海水浴や秋の運動会シーズンになると、週明けに職場で「昨日めちゃくちゃ動いたけど、まだ筋肉痛が来てない…。もう若くないんだなあ…。」と楽しかった思い出とともに話す方がいますが、これって本当なのでしょうか。今回はそんな疑問を、身体の動き・パフォーマンスの向上の仕組みを専門に研究している、信江先生にお聞きしてきました。 

今回お話しをお聞きした人

森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 講師/信江 彩加 先生
博士(スポーツ科学)。身体運動に関する神経・筋機能メカニクスの解明をテーマに研究を行う。20194月に森ノ宮医療大学 入職、20234月より現職。

筋肉が動く仕組み 

そもそも筋肉って、どんな仕組みで動くかご存じですか?ゴムのように伸びたり縮んだりする動きを想像される方が多いと思いますが、実はもっと複雑なんです。

※厳密にいうと内臓も筋肉ですが、ここでは一般的にイメージされる「大胸筋」や「上腕二頭筋」などの骨格筋に絞ってお話ししています 

筋肉は解剖していくと外側から筋膜→筋線維→筋原線維という構成になっており(実際はもう少し細かな組織がありますが割愛)、筋原線維はミオシンとアクチン、太さが異なる2種類の線維によりできています。
この2種類の線維が互い違いに重なるように配置され、それぞれの長さは変わりませんが、互いに隙間でスライドすることで筋肉全体の長さを変えることができます。

筋肉痛ってなに? 

それでは今日の本題、筋肉痛について。筋肉痛とは、先にご紹介した筋線維が筋力トレーニングをはじめとする運動により微細に傷つき、それが治る過程で炎症が生じる際に痛み物質が発生するため起こると考えられています。ちなみにこの際、筋肉が大きく傷ついた状態を肉離れと言います。

筋線維は傷つき回復する過程で、以前よりも強く、大きな状態になろうとする性質があり、これを利用して身体を大きくすることができます。ボディビルダーはじめ筋骨隆々な方の身体の中では、何度もなんども筋線維が傷つき回復しているんですね(筋線維さん、お疲れ様です)

なお、筋肉痛を治す方法は、まずは身体を休ませること。そして触ったときに熱感がなければ温めたりストレッチが効果的なので、お試しください。運動制限はありませんが、通常より弱くなっている状態のため、無理は禁物ですよ。 

「歳をとったから筋肉痛がくるのが遅くなる」は本当? 

「歳をとったから筋肉痛がくるのが遅くなる」
信江先生いわく、実はこれについては明確なエビデンスがなく、現段階では加齢により筋肉痛が来る時期が遅くなるとは明確に言えないんだそう。ただ可能性として考えられるのは、加齢によって筋肉内の毛細血管が細く・少なくなっている、または運動不足により毛細血管が活用できておらず、その結果、治し始めるのが遅くなることで痛み物質が発生する時期が遅くなる、という一説があるとのこと。
どちらにしても加齢によるものなので複雑な気持ちですが、これを読んだ皆さんはぜひこれから話をする時には「昨日めちゃくちゃ動いたけど、まだ筋肉痛が来てない…。毛細血管が少なくなって来てるんかなあ…」と言うようにしましょうね。

余談ですが、関西の方にはおなじみの「毛細血管がいっぱいつまってるところ、わーきー!!」ですが、脇は毛細血管が多い箇所ではありませんので、たくさんトレーニングしても大丈夫ということにはなりませんのでご注意を。 

効果的なトレーニング 

最後に、筋肉が大きくなりやすいトレーニングをご紹介します。普段はあまり意識しませんが、筋肉が力を発揮する際は3つの収縮様式があります。

アイソメトリック(等尺性):力が拮抗し、見かけ上は動きがない状態

コンセントリック(短縮性):筋肉が縮まりながら力を発揮する状態

エキセントリック(伸張性):筋肉が伸ばされながら力を発揮する状態

このうち最も大きな力が発揮されるのがエキセントリックだと言われ、トレーニングの際はこの動きを意識的に行うと筋肥大に効果的です。日常の動きでいうと、荷物をそっと下ろす、階段や下り道をゆっくり降りるなど、「ギリギリ耐えているけど、少しずつ限界に向かっている…」ような動きです。
あれ、この動作ってもしかして…奥さんの買い物に付き合って、大量の荷物持ちをさせられてしている時のお父さんの腕じゃないですか!全国のお父さん、これからは家族サービスと見せかけて、自分の筋力トレーニングのため家族とイ○ンモールに行きましょう!たくさん買い物をして家族は大喜び、お父さんも気づけば丸太のような逞しい腕になっているかもしれませんよ。

※ただし、エキセントリックの運動は筋肉痛が生じやすいのでご注意を。

記事をShareする!

  • X
  • Facebook
  • Line

関連記事

記事一覧に戻る