【医療の仕事に迫る!】”命のエンジニア” 臨床工学技士って?

医療職という言葉を聞いて、どんな職種を思い浮かべるでしょうか?実は医療職と一口に言っても20種類以上もあるんです。今回はその中でも、“命のエンジニア”とも呼ばれる臨床工学技士について紹介します!

今回お話をお伺いした人

森ノ宮医療大学 医療技術学部 臨床工学科 講師/臨床工学技士 大久保 さやか 先生

兵庫県立大学大学院 応用情報科学研究科 修士課程修了。その後、本学臨床工学科にて講師として勤務。インターベンション認定技師。大阪府技士会所属、CIVIT委員。

“命のエンジニア、臨床工学技士ってこんな仕事!

臨床工学技士は、医学の進歩につれて医療機器も高度化し、医学的、工学的な知識を持って機器を操作できる専門家が必要となったことを背景として誕生したため、国家資格となって40年弱のまだまだ新しい医療職。血液浄化装置、人工心肺装置、人工呼吸器といった生命維持管理装置を安全かつ的確に操作・管理するスペシャリストとして、“命のエンジニア”と言われることもあります。それゆえ単に疾患を抱えているだけでなく、重症度が高い患者さんに携わることが多く、生死に関わる専門性の高い医療職とも言えます。例えば、手術室に入って人工心肺装置(一時的に心臓を停止させて血液循環を代替する装置)を操作したり、腎臓の働きが低下し、不要な水分や老廃物を排出できなくなった人のために透析装置を操作したりします。

したがって誰もが臨床工学技士にお世話になることがあるわけではないため、看護師や理学療法士に比べるとあまり知られていない医療職となっているのです。でもいざ生命維持管理装置が必要となった時、助けてくれるのが臨床工学技士ということでもあるんです!

実は、臨床工学技士の需要は増えています!

ところで、厚生労働省により20244月から医師の働き方改革に関する新制度が制定されたのはご存知でしょうか?現代では医療ニーズが変化、多様化し、少子化に伴う医療の担い手の減少が進んでいます。そのため医師の負担が増加し、医師の長時間労働に頼るという構造が出来上がっています。このままでは医療の質・安全が確保されなくなることが見込まれるため、厚生労働省により、地域医療提供体制の改革や他の医療職へのタスクシフト/シェアが現在推し進められているんです。確かにお医者さんっていつも病院にいて、すごく忙しいイメージですよね…。

臨床工学技士は手術室に入って医師と一緒に業務を進めることが多い職種。そのため、このタスクシフト/シェアの影響が大きいんです。内視鏡を例にあげると、これまで機器管理の一環で内視鏡を洗浄することはありました。しかし今回のタスクシフトにより、医師の指示の元、鏡視下手術(細長いビデオカメラを手術部位に挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら行う手術)の際、これまで医師が行っていた視野確保のためのビデオカメラの操作を臨床工学技士が代替することが明文化されました。これは、今までよりオペレーションに入り込んだ責任ある業務を任されるようになったということでもあります。そういった背景から臨床工学技士の業務も拡大しているため、医師の働き方改革が掲げられる前と比べると臨床工学技士の需要は増えているんです!

臨床工学技士は日本独自の資格

医師や看護師といった資格は海外にもありますが、臨床工学技士という資格は日本にしかありません。もしアメリカで日本の臨床工学技士と同じ仕事をしようとした場合、hemodialysis technician(透析業務)、perfusionist(体外循環業務)、operating room techinician(手術室業務補助技術者)など複数の職種が必要となります。また中国では、臨床工学技士という職種はありませんが、日本で臨床工学技士の資格を取って中国に行けば、医療機器メーカーなどへの就職がかなり有利になるというケースもあるんだとか。こういったことからも、やはり日本の臨床工学技士の仕事は専門性が高いことがわかりますね。

エンジニアと聞くと男性が多いイメージだけど、女性もいるの?

臨床工学技士の男女比は男性:女性=31くらいで、まだまだ女性技士の数は少ないです。待遇面に男女差はあまりありませんが、例えば子どもができた場合、夜勤や緊急のオペへの対応は難しいため、これまでの働き方を維持できる人は少ないのが現実です。そのため女性の場合は、結婚や出産をするまでは総合病院で働いて、結婚や出産を機に透析クリニックのような夜勤やオペがない環境で働く人が多いです。現在でも臨床工学技士として総合病院で臨床現場に立つ大久保先生にお聞きしたところ、社会的な課題として、時短勤務では終業時間が短縮されている場合がほとんどかと思いますが、子どもがいる女性は保育園の送迎など様々な事情があります。そのため決められた時間の時短勤務だけでなく、フレックスタイム制などが広く採用されると、より働き続けやすくなるのではと感じているそうです。

まとめ

今回は“命のエンジニア”臨床工学技士を紹介しました。臨床工学技士のお世話になることがないのが一番ですが、いざとなったときにはこういう人に助けてもらうんだということを知っておくと少し安心ですね。医療現場で活躍していてもまだまだ知られていない医療職がありますので、セラピアでは順次紹介していきたいと思います!

記事をShareする!

  • X
  • Facebook
  • Line

関連記事

記事一覧に戻る