【医療の仕事に迫る!】地域住民の健康管理に貢献!「保健師」ってどんな仕事?

2025.02.28

新型コロナへの対応や災害派遣などで、世間からたびたび注目を集める「保健師」。看護師国家試験と保健師国家試験の両方を合格することで得られる国家資格です。現在全国で約4万人が保健師として働いており、予防の観点から地域住民の健康を支えています。今回は、そんな保健師の仕事内容ややりがいに迫ります!

今回お話をお聞きした人


森ノ宮医療大学 看護学部 看護学科 助教 / 笹井 佐和子 先生
看護師・助産師の資格を取得し、助産師として大学病院で勤務した後、「未熟児・医療的ケアが必要な新生児のその先に携わりたい」という思いで保健師資格を取得。その後行政保健師(神戸市)や病院保健師として健康支援に従事し、2023年4月より現職。
 

保健師ってどんな仕事?

保健師には、働く場所によって行政保健師・産業保健師・病院保健師の3つの区分があります。

➀行政保健師

保健師全体の7~8割を占める行政保健師は、都道府県や市町村(の行政機関)で公務員として働いています。

都道府県で働く保健師が従事する保健所業務では、健康課題の調査や感染症関係の助言、研修会の実施など、住民が健康的に暮らすための街づくりや都市開発の観点から集団に向けたアプローチ を行います。健康課題にはすでに起こっている問題(寝たきり者が多いなど)から今後起こりうる課題(軽度認知症患者の増加、家族の介護負担の増大など)、より健康に豊かに暮らしたい住民の願いなどさまざまな種類があり、保健師は地域のデータベースからの情報把握だけでなく、住民健診や家庭訪問などで直接住民の声を聴くことにより、課題を把握しアセスメントを行います。多くの課題がある中で優先性を判断し、次に行うべき施策を検討するのも保健師の重要な仕事です。

市町村で働く保健師が行う市町村業務では、地域住民の家庭訪問や乳幼児健康診査の実施、子育て相談など、住民に身近なサービスを提供します。相談を聞くだけでは分からない困りごとや生活背景を知って支援に役立てるため、積極的に家庭に足を運んで1人ひとりに寄り添った支援を行っています。

また行政保健師は、災害が起きた地域に派遣されることもあります。例えば2011年に起きた東日本大震災では多くの保健師が東北地域に派遣されましたが、笹井先生によると神戸市から派遣された保健師は「阪神淡路大震災があった地域の保健師」としての経験を活かし、被災直後から年単位で地域の復興支援を続けてきた とのこと。地域ごとに積み上げられてきたノウハウを伝承することもできる仕事です。

②産業保健師

産業保健師は、企業に所属して社員やその家族の健康管理を行います。健康診断の結果を基に受診の勧奨や指導・相談の実施、休職者の復職支援や復職後の面談を行うことが主な業務です。産業医と連携し、身体面だけでなくメンタル面でも社員の健康をサポートしていきます。その他にも、産休・育休、介護休暇、病気休暇などの制度の利用や復職後の社員の健康や生活を支える制度について、会社全体に向けて発信することもあります。

「健康経営」という言葉が社会全体に根付いてきたこともあり保健師を雇用する企業は増加していますが、1つの会社に所属する保健師の数は非常に少ないため、1人で多岐にわたる業務をこなす必要があり、実務経験豊富な保健師が求められています。

③病院保健師

病院保健師は、病院やクリニックに所属して健康診断の実施 や保健指導に携わります。また、生活習慣病などで入院されている方の退院に向けたフォローアップも行っています。行政保健師や産業保健師と違い多くの医療職が集まる病院で勤務するため、患者さんを治療するという一つの目標に向かって医療チーム全体で協力して仕事を行うことができる点が一つの特徴です。
また、地域包括支援センターで活躍する保健師もいます。介護支援専門員や社会福祉士などの他の専門職とともに、高齢者の地域での生活を支える仕事を担っています。

保健師に向いている人って?

保健師は、福祉・地域・行政などさまざまな職種や立場の方と関わりながら仕事を行います。特に困りごとを持つ地域住民の相談対応や家庭訪問を行う行政保健師は、育った環境や考え方が全く自分と異なる方と関わる機会がとても多いです。そのため、他者の生きてきた歴史や経験を理解した上で協働 する力を持った人はとても向いている仕事です。いろいろな経験をして知見を広げておくことで、仕事をしていく中でも、「自分自身の人生経験が役立った」と感じられる場面があるかもしれません 。

また保健師は、地域や会社全体など集団に対して働きかけることが多い医療職であるため、健康分野での集団へのアプローチに興味がある人に向いている仕事です。他にも行政保健師であれば都道府県や市町村ごとにカラーがあるため、その地域に精通していることが大きな強みになります。

保健師のワークライフバランス

シフト制で夜勤が前提であることが多い看護師に対して、保健師の仕事は土日にしっかり休むことができ、日勤のみであることが多いのが大きな魅力です。また行政保健師なら公務員、産業保健師なら企業の社員(保健師を雇用する企業の多くは大企業)として働くことになるため、給与も安定しており、福利厚生も充実していることが多いです。保健師は、仕事とプライベートの両立をめざす方にぴったりの医療職です。

まとめ

笹井先生によると、「時代の変化に伴う法改正や制度の変更により、保健師に求められることは変化し続ける」とのこと。近年は子どもと女性の自殺増加が大きな課題として挙げられているなど、まだまだ社会的弱者の声を掬い切れていない現状があります。保健師の仕事 は結果が見えづらい側面もありますが、将来起こりうる悲劇を防ぐために必要不可欠です。健康な社会をつくるために日々奮闘する保健師に、今後も注目していきましょう!

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