【医療の仕事に迫る!】社会制度の専門家「医療ソーシャルワーカー」の仕事って?【コラボ企画】

身近な医療職には医師や看護師、薬剤師などがありますが、実は医療といっても分野ごとに様々な職業があり、全て合わせると20種類以上あります。今回はその中でも、治療に伴って生じる生活上の困りごとに対応する「医療ソーシャルワーカー」をご紹介します!

今回お話をお伺いした人

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院
地域医療総合窓口 あったかサポートセンター 医療福祉相談グループ副部長
医療ソーシャルワーカー/本家 裕子さん

大阪大学人間科学部卒業後、社会福祉法人ロータス福祉会にてソーシャルワーカーとして従事しながら社会福祉士を取得。京都の独立型ホスピスを経て、堺市立総合医療センターにて医療ソーシャルワーカーとして従事しながら大阪大学大学院人間科学研究科修士課程を修了。2003年7月より現職。2007年に精神保健福祉士を取得。

医療ソーシャルワーカーってどんなお仕事?

職種名としてソーシャルワーカーという呼称が使われていますが、主に「社会福祉士(『精神保健福祉士』の場合も)」という資格をもつ人を指します。
その中でも医療機関で働くソーシャルワーカーを、「医療ソーシャルワーカー」といい、主に医療福祉に関連する相談援助を行っています
相談援助というとイメージが付きづらいですが、入院や通院に伴う患者さんのさまざまな悩み・問題に対して、社会保障などの制度や施設などの社会資源を活用し解決・軽減を図り、治療と生活の両立を支えるのが、医療ソーシャルワーカーの役割です。
具体的な支援としては、
●退院支援
●社会資源・制度の活用援助
●経済的問題の解決、調整援助
●受診・受療援助
●心理的・社会的な問題の解決、調整援助
などが挙げられます。

日本生命病院は急性期(※1)病院という性質上、一定期間で退院されていくケースがほとんどで、退院支援(※2)が全体の4割程度を占め1番多いそう。
高齢の方には介護保険の利用をサポートしたり、ケアマネジャーとともに家庭での生活サポートを調整したり、退院後も医療が必要な方は訪問看護の導入を調整したり、といった内容です。
退院の前にリハビリ施設に移るケースや、様々な理由で自宅での生活が難しい場合は入所施設に入られるケースもあるので、そういった施設への入所に向けたお手伝いも行います。

※1 病気により急激に健康が失われた状態を指し、発症後約14日以内が急性期の目安
※2 患者さんが不安なく自宅に帰るためのサポート

また、病棟を担当しない医療ソーシャルワーカーの場合、退院支援が少ない分、医療費など経済的問題(高額療養費制度や傷病手当金の申請など)の解決支援や社会資源(難病申請、肝炎の医療費助成、介護保険申請など)の利用支援の比重が増えます。緩和ケアチームや認知症ケアチーム、倫理コンサルテーションチーム、虐待対策チームなど、院内のさまざまな医療チームに参画する役割も担います。

この仕事のやりがい

入院患者さんは、病状が改善し退院するというケースばかりではなく、回復が見込めず最期に家に帰りたい、といったケースもあります。そういった場合は様々なリスクを踏まえながら調整しますが、場合によっては帰宅当日や、翌日に亡くなるケースがあります。それでも、ご家族から

「最期に帰る事ができてよかった」

と言われると、大変な調整だったとしても、報われる気持ちになるそう。
また逆に、食事もできない状態だった方が食べられるようになったり、明日まで持ちこたえられるかどうか、という状況だった方が1週間以上すごされたりなど、多種多様な事例があり、毎日が驚きと発見の連続だそうです。

コミュニケーションがすべての業務の基盤

本家さんいわく、業務には次の3つのコミュニケーションがあるそう。
●患者さん、ご家族とのコミュニケーション
●院内でのコミュニケーション
●関係機関とのコミュニケーション
このうち、患者さんやご家族とのコミュニケーションは特に重要です。
様々な制度を説明するだけであれば誰でもできますが、それを患者さんやそのご家族のさまざまな事情に応じた伝え方で説明するコミュニケーションスキルが求められます。

たとえば、日本生命病院は急性期病院という性質上、患者さんが入院を希望されていても、一定の段階を過ぎると次の所へ移っていただく必要が出てきます。そういった際に、いかに状況を理解し納得いただいた上で妥協点を探すか、ここが難しいところであり腕の見せ所でもあります。
また院内では、毎朝のミーティング(カンファレンス)などで、主治医や病棟の各医療職種の方に患者さんやご家族の状況・考えを情報提供し、それぞれの現場で最適な判断が下せるようにしています。
さまざまな職種が集まっている場所だからこそ、それぞれの専門性を最大限活かせるよう、意識的にコミュニケーションを取ることが大切だと本家さんは語ります。

地域への貢献を目指して

日本生命病院には9名の医療ソーシャルワーカーが在籍しているため、今後はこのリソースを最大限活用して、地域の医療にさらなる貢献をしたいと考えているそう。例えばがんのサロンを他院と共同開催したり、制度を紹介する冊子を作ったりして、通院・入院をされている方以外にもアプローチをしていく予定とのこと。
医療ソーシャルワーカーは問題が起きてから対応することが多いですが、予防的に知っておいた方が良い知識や制度はたくさんあるため、広く周知していくのも公益財団法人としての日本生命病院の役目である、とのことでした。

まとめ

今回取材を行い感じたのは、こういった制度はなかなか知る機会がないので、もしかすると知らず知らずのうちに損をしてしまっているかもしれないこと。そんな時に、本家さんのような専門の方に相談できる体制があるのは、とても心強いですね。
みなさんの身の周りにも、多くのソーシャルワーカーがいらっしゃるはず。何か困っていることがある場合、一人で抱え込まず積極的に相談してみてはいかがでしょうか。

公益財団法人 日本生命済生会 日本生命病院

1924年7月、財団法人「日本生命済生会」設立。日本生命本館内に事務所を設置して診療を開始。1931年6月、名門緒方病院の土地・建物を継承し、大阪市西区新町に「日生病院」を開院(当初は24床で開始)。2018年4月30日、大阪市西区江之子島に新築移転。病院名称を「日生病院」から「日本生命病院」に変更し、現在に至る。

所在地|〒550-0006大阪市西区江之子島2丁目1番54号
病床数|一般350床
診療科|
循環器内科、消化器内科、内分泌・代謝内科、呼吸器・免疫内科、血液・化学療法内科、脳神経内科、腎臓内科、消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、心臓血管外科、産婦人科、小児科、神経科・精神科、脳神経外科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成再建外科、放射線診断・IVR科、放射線治療科、麻酔・緩和医療科、リハビリテーション科、救急総合診療科、検査診断科、病理診断科、予防診療科
診療センター|
救急総合診療センター、がん治療センター、女性骨盤底センター、糖尿病・内分泌センター、消化器内視鏡センター、血液浄化センター、脳機能センター、乾癬センター、ニッセイ予防医学センター
その他|
病院機能評価認定病院(3rdG:Ver.2.0)
ジャパンインターナショナルホスピタルズ(JIH)推奨病院
卒後臨床研修評価機構(JCEP)認定病院
人間ドック・健診施設機能評価認定病院(Ver.4.0)
DPC対象病院
大阪府がん診療拠点病院
地域医療支援病院

<日本生命病院 公式WEBサイト>

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