【医療の仕事に迫る!】検査データを通じて患者さんを診る!臨床検査技師って?

多くの方に身近な医療職には医師や看護師、薬剤師などがあると思います。実は医療といっても分野ごとに様々な医療職があり、全て合わせると20種類以上あります。今回はその中でも必ずお世話になっているものの、あまり知られていない「臨床検査技師」をご紹介します!

今回お話をお伺いした人

森ノ宮医療大学 医療技術学部 臨床検査学科 

助教/臨床検査技師 松尾 明彦 先生

京都大学医学部附属病院検査部にて6年間勤務した後、現在に至る。

研究内容:腸内細菌目細菌の薬剤耐性機序の解析と新規検査法の開発

臨床検査技師ってどんな仕事?

一言で言うと、患者さんから採取した検査データを医師に正確かつ迅速に伝えることが主な業務です。検査データには様々な種類がありますが、採取の方法は大きく分けて検体検査と生理機能検査(生体検査)に分かれています。検体検査は患者さんから採取した血液、尿、組織などの検体を調べます。一方の生理機能検査は超音波検査、心電図検査、聴力検査、脳波検査など、患者さんの体から直接情報を記録して、体の状態を調べます。臨床検査技師と聞くと、顕微鏡とにらめっこしていて患者さんと直接関わることはないのでは?と思う人もいるかもしれないですが、生理機能検査の多くは直接患者さんと接する検査になっています。これを知るとあのとき検査してくれた人ってもしかして臨床検査技師だったのかも?と思い当たる方もいるかもしれませんね。

実はこんなこともできる臨床検査技師!

病院にかかったときや、健康診断を受けに行ったときなどに採血をすることがあるかと思いますが、この採血も臨床検査技師が行っていることがあります。実は採血は医療職でも医師、看護師、臨床検査技師の3職種のみしか実施することができないんです。臨床検査技師自身が採取した血液などの検体を、臨床検査技師が検査して結果報告するという一連の流れを全て担当することもあります。同じ部署でも細かく作業が分割されており、病院の規模にもよりますが、一つの検査結果を出すまでに25名程度の臨床検査技師が関わっています。

医師のタスクシフト/シェアの影響はある?

医師のタスクシフト/シェアという言葉をご存知でしょうか?医療ニーズが変化・多様化している現代では、医師の負担が増加し、労働時間が長時間化していることが問題となっています。このままでは今後少子化の影響で医療職の担い手が少なくなったとき、医療崩壊が起こることが懸念されます。そのため医師の業務負担を軽くするために、これまで医師の業務とされていたものを他の医療職にタスクシフト/シェアすることが推し進められているのです。これにより臨床検査技師にも元々医師が実施していたいくつかの業務が割り振られました。例えば、超音波検査の際に画像を見やすくする造影剤の注入、便漏れや排便困難など排便障害の際に行う直腸肛門機能検査など9つの行為や検査が近年新たに臨床検査技師の業務範囲となっています。そう考えると臨床検査技師の業務って幅広いですよね!

一日にこんなにたくさんの検査がある!

病院や部署によっても差があるそうですが、松尾先生が勤務していた病院の感染症検査の部署では、 一日平均4050件ほどの検査を行っていたそうです。月曜日や連休明けなどは患者数が多いため、一日70件ほどの検査数になることも…。想像しただけで大変そうですよね!それだけたくさんの検査を行いつつ、患者さんのデータの取り違えなどのミスが起こらないよう細心の注意を払うことと、迅速に結果を出すためのスピードが求められます。臨床検査技師は研究者のようなイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、一つ一つの検体をゆっくりじっくりではなく、手際よく検査していく必要があるんですね。

女性が多い医療職なんです!

厚生労働省が2020年度に実施した「賃金構造基本統計調査」によると、臨床検査技師の男女比はおおよそ37となっており、女性がかなり多い職種ということがわかります。実際に松尾先生が勤めていた病院でもこのくらいの比率だったそう。女性比率が多くても必ずしも女性が働きやすい職場環境とは限りませんが、松尾先生が勤めていた病院では結婚出産などのライフイベントを経験しても、ほぼ全ての女性がそのまま仕事を続けることを選択されていたそうです。総合病院だと臨床検査技師も当直(夜勤)がありますが、当直の頻度が少ない病院を選んだり、クリニックでの勤務を選べば当直もなくなるなど、ライフスタイルに合わせて職場を選べるのが女性にとって働き続けやすいところなのかもしれませんね。

最後に、臨床検査技師のいいところ!

松尾先生は臨床検査技師のいいところ(やりがい)をこう話します。冒頭にも紹介したように、臨床検査技師は検査室で黙々と検体と向き合っているだけでなく、患者さんと直接触れ合うこともできる職業です。何気ない採血の場面でも、患者さんから「ありがとう!」などと言ってもらえた時は嬉しい気持ちになるそうです。また、自分が出した検査結果や所見が医師の参考になって、迅速に患者さんの診断や治療につながったりするのもやりがいの一つになっています。臨床検査技師が行うことができる業務が拡大していることからも、医療における臨床検査技師の役割は今後増加していきそうですね!

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