「子どもは授かりもの」といわれるように、妊娠や出産は奇跡の連続です。みなさんは実際に妊娠できる確率はどれくらいかご存じですか。
年齢や体質によって大きく変わるものの、いまや夫婦の約4.4組に1組が不妊治療を経験しています。「子どもがほしいと思えばすぐに授かれる」と考えてしまいがちですが、実際には思ったよりも低いのが現実です。
そこで今回は、なかなか子どもを授からずに悩む方々の希望となる「不妊治療」について、大阪急性期・総合医療センターの先生方にお話を伺いました。
今回お話をお伺いした人
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地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター
(写真右)生殖医療センター 副部長/久保田 哲 先生
大阪大学医学部医学科卒業。通院患者さんが1日でも早く妊娠出産に至るように日々奮闘中。日本生殖医療学会生殖医療専門医。
(写真左)生殖医療センター 培養室室長/辻 優大 先生
近畿大学大学院 農学研究科 バイオサイエンス専攻 博士後期課程修了(農学博士)。日本卵子学会認定 生殖補助医療胚培養士。
どこからが「不妊」?
不妊とは、健康な男女が妊娠を希望して1年以上性生活を続けているにも関わらず、妊娠しない状態。以前は「2年以上」という定義でしたが、現在は期間が短縮され、より早い段階から不妊治療を受けられるようになりました。
-健康でも不妊になりやすい要因
不妊になりやすい原因は、男性と女性で異なります。
男性:喫煙者
女性:35歳以上、肥満(BMI※25以上)、喫煙者
※BMI:[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]
タバコは卵子や精子の質を低下させるため、妊娠には大きな影響があります。また、特に女性は年齢が高くなるほど妊娠率が下がり、数ヶ月の違いでも妊娠の確率は変わるほど重要です。![]()
不妊治療の内容は?
不妊治療は、主に次の3つのステップで行います。
①タイミング法
基礎体温や尿検査、超音波検査などで医師が排卵日を予測し、最も妊娠しやすいタイミングで性交渉を行う方法です。通院は月2~3日程度、妊娠成功率は1回あたり約5%。最大で半年続けて妊娠しない場合は、次のステップへ進みます。
②人工授精
男性から採取した精液から運動性の高い精子を選び、女性の排卵に合わせて子宮内に直接注入する方法です。処置は数分で終わり、痛みはほとんどありません。通院は月3~4日程度、妊娠成功率は1回あたり約5~10%。最大で半年続けて妊娠しない場合は、次のステップへと進みます。
③体外受精
採取した卵子と精子を体外で受精させ、できた受精卵を育てて、良好なものを子宮へ戻します。卵子を採取する「採卵」という処置は麻酔を使って行うため、ほぼ1日を要します。加えて、処置以外でも月に3~4回の通院が必要となるため、時間的な負担が大きい治療です。妊娠成功率は採卵1回あたり約20%となります。
↓↓<動画>受精卵ができる様子↓↓
-培養室を見学させていただきました!
培養室では、顕微鏡を使いながら受精卵を作り、子宮内と同じような環境に調整された培養装置で育てていきます。「タイムラプスインキュベーター」と呼ばれるこの装置は、受精卵観察用のカメラを搭載しており、10分ごとに受精卵の様子を断層撮影します。これにより、受精卵を観察するたびに外に出す必要がなくなったそうです。
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(受精卵を作っていきます) (タイムラプスインキュベーター)
↓↓<動画>タイムラプスインキュベーターで見られる受精卵の様子↓↓
気になる費用…どれぐらいかかる?
2022年4月から不妊治療が保険適用となり、タイミング法や人工授精、体外受精も自己負担は治療費の約3割になりました。ただし、保険適用には年齢※や回数に制限があるのでご注意を!
※この年齢は治療開始時の女性の年齢を指します。
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-保険適用後の患者さんの動向は?
これまで費用面で不妊治療をあきらめていた方も、保険適用となったことで、特に体外受精に進む方が大幅に増加したそうです。下のグラフは、体外受精で誕生した子どもの数を年別に示しています。この経過からも、保険適用後(2022年以降)に体外受精を希望する方が増えていることが分かりますね。2023年には8人に1人の割合で体外受精の子どもが産まれたそうです!![]()
※日本産科婦人科学会より(棒グラフの色別は体外受精方法の違いを示しています)
病院選びのポイント
不妊治療を始める際、どの病院を選ぶかはとても大切です。ここでは、総合病院とクリニックの違いを中心に、選び方のポイントをお伝えします。
・通いやすさ
不妊治療は月に何度も通うことが多いため、夫婦共働きの場合は特に自宅や職場からのアクセスの良さが重要です。また、クリニックの方が夜間や土日・祝日に診察を行っているところが多く、平日や日中に通院が難しい方におすすめです。
・合併症のリスク
持病があっても、妊娠をあきらめる必要はありません。ただし、その場合は総合病院の方が、他の診療科と連携して治療にあたれるため、より安心して治療が受けられます。
・通院時の環境
総合病院では、産婦人科で不妊治療を行っていたり、産婦人科と隣接して不妊外来が設置されていたりします。子どもができずに悩んでいる方にとっては、妊婦さんの姿や赤ちゃんの泣き声が心の負担になることもあるため、そのような環境を避けられる病院を選ぶと良いでしょう。
不妊治療は「夫婦ふたりの共同作業」
不妊治療はどうしても女性の負担が大きくなりがちです。そのため、男性のサポートもとても大切です。例えば、病院に付き添ったり、「大丈夫?」「いつもありがとう」と声をかけたりと、思いやりのあるコミュニケーションが支えになります。子どもは夫婦2人の協力があってこそ授かれるもの。先生方も「しっかりコミュニケーションがとれている夫婦ほど治療がうまくいくケースが多い」と話しています。お互いを思いやり、気持ちを伝え合うことを忘れずに進めていきましょう。![]()
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター
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1955年1月、11の診療科、病床数330の「大阪府立病院」として開院。2003年10月、病院名を「大阪府立急性期・総合医療センター」に変更。2006年4月、地方独立行政法人大阪府立病院機構設立に伴い、大阪府から事業移行し、現在に至る。各種センターの開設等、高度な専門医療が提供できる環境を整え、多様化するニーズに応えている。2010年からは森ノ宮医療大学と連携協定を締結し、高度な医療・医学教育を共有し、保健医療・看護・健康増進・福祉等にかかわる地域課題に積極的に取り組んでいる。
所在地 | 大阪市住吉区万代東3丁目1番56号
病床数 | 865床
診療科 | 総合内科・感染症科、呼吸器内科、消化器内科、心臓内科、糖尿病内分泌内科、腎臓・高血圧内科、脳神経内科、免疫リウマチ科、血液・腫瘍内科、小児科、新生児科、精神科、皮膚科、消化器外科、乳腺外科、小児外科、呼吸器外科、心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、産科、婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、形成外科、歯科口腔外科
急性期医療部門 | 救急センター(TCU)、脳卒中センター(SCU)、心臓血管センター(CCU)、救急初期診療センター(ER部)、小児医療センター(NICU・GCU)、四肢外傷治療センター
高度医療センター | 腫瘍センター、消化器内視鏡センター、肝がん治療センター、糖尿病・生活習慣病センター、腎移植センター、大阪難病医療情報センター、パーキンソン病治療センター、関節リウマチ・バイオサポートセンター、乳がん治療・乳房再建センター、低侵襲心血管治療センター、人工関節センター、子宮筋腫治療センター、子宮脱治療センター、前立腺がん治療センター、IVRセンター、PET核医学センター、遺伝診療センター、生殖医療センター、総合リハビリテーションセンター
<大阪急性期・総合医療センター公式WEBサイト>
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【この記事を書いた人】
コーヒーソムリエ
コーヒーがあるとき~(^^)ないとき~(_ _)の生粋の大阪人。保幼小の教員免許をもつ子ども大好きフルタイムワーママ。
