老若男女が抱える腰痛の原因とその予防法とは?

2024.04.30

誰しも一度は悩まされたことがある腰痛。日本では3,000万人もの人々が腰痛を抱えていると言われています。老若男女問わず発症する可能性がある腰痛の中でも、今回は患者数も多い腰椎椎間板ヘルニアについて、その原因や予防法をご紹介します!

今回お話をお聞きした人

森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部 理学療法学科

助教/理学療法士 中田 光海 先生

北海道大学 医学部保健学科理学療法学専攻卒業後、同大学大学院保健科学院にて修士号(保健科学)を取得。慢性腰痛を抱える人の体幹筋の機能に着目し、痛みの理解や適切な治療法の検討を研究している。なかでも非特異的腰痛(原因が特定できない腰痛)が専門。

自覚症状のある身体の不調では1位!

厚生労働省が全国20万世帯以上を対象に2022年に行った国民生活基礎調査では、病気やけが等の自覚症状のある人の中で、肩こりを抑えて、男女ともに腰痛と答えた人が最も多い結果となっています。これだけの人が悩まされている腰痛。その原因は一体何なのでしょうか?

腰椎椎間板ヘルニアとは?

現代ではCTMRIなどの画像診断機器の進化により、約8割の腰痛については原因が特定できるようになったと言われています。その原因が特定できた腰痛の中の代表的な疾患として、腰椎椎間板ヘルニアがあります。椎間板は人間の背骨にあり、骨と骨の間のクッションの役目をしています。椎間板の中には髄核があり、線維輪という組織に囲まれています。卵で言うと黄身が髄核で、白身が線維輪のようなイメージです。そこに、何らかの要因で腰に負荷がかかることで、線維輪に覆われていた腰椎の髄核が飛び出してしまうことを腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。「ヘルニア」が「脱出、突出」という意味なのでわかりやすいですね。脊椎の周りには多くの神経が通っているため、ヘルニアにより神経が圧迫されてしまうと足のしびれ等の症状も出てきます。

椎椎間板ヘルニアの原因は?

先ほどの図でもわかるように、椎間板は背骨に対して前側(お腹側)についているため、やはり前かがみの動作を繰り返すことで、後ろ側(背中側)に飛び出しやすくなります。したがって、デスクワークよりは、前かがみになって重い荷物を持ったりするような身体を使う仕事の方のほうが発症リスクは高くなります。また、そういった動作の他にも喫煙をすると20%ほど椎間板ヘルニアを発症リスクが上がると言われています。これは、椎間板は血管がない組織のため、周りの血管組織から栄養を吸収します。喫煙をすることで血管が収縮したり、細くなったりすることで、椎間板が栄養を吸収しづらくなり、栄養不良の状態になってしまうのです。加えて、肥満になると椎間板に負荷をかけやすくなるので、普段から食生活に気を付けることは大事です。生活習慣だけでなく、20歳以下で発症する人の30%ほどは、家族でもヘルニアの方がいるというデータがあります。これは椎間板の脆弱性は遺伝的な要素が強いためです。もし家族に椎間板ヘルニアを患っている方がいる場合は、少し注意したほうがいいかもしれないですね。

腰椎椎間板ヘルニアになると手術が必要?

一度腰椎椎間板ヘルニアになってしまうと手術が必要なのでは?と思っている方も多いかもしれませんが、実は約7割の方が3カ月以内に自然治癒しているのです。腰椎椎間板ヘルニアと診断されたら、すぐ手術となることは少ないということがわかります。主な治療方法としては、どの程度の重症度かによって異なりますが、3カ月以上経っても自然治癒せず、下肢の痺れなど神経症状もあり、痛みが強い場合や、発症後すぐでも神経が圧迫されていることで筋力低下が著しい場合は手術をすることが多いです。一方で発症後すぐで症状が腰痛のみの場合は、薬で痛みを抑えつつストレッチをして筋肉を柔らかくしたり、腰椎に負担がかかりにくい身体を作るための筋力トレーニングなどの指導を受けたりして様子を見ます。

予防のために気を付けること、オススメのストレッチ

仕事や家事、スポーツなどでどうしても前かがみの動作が多くなってしまう人もいると思います。でも少しの心がけで腰椎への負荷を軽減することができます。それは、「背中を丸めるのではなく、股関節や膝を使ってスクワットをするイメージで動かす」ということ。また重い荷物を持つことが多い場合は、荷物と身体の距離をできるだけ近くして、股関節や膝を使って持ち上げることを意識してみましょう。また、太ももの裏の筋肉が硬いと腰に負荷がかかりやすくなるため、太ももの裏を伸ばすストレッチがおすすめ。立った状態で、腰の高さくらいの台(机など)に片足を乗せるだけです。この時、背筋をまっすぐに保つようにしましょう。すると腰や背中を丸めずに、太ももの裏を伸ばすことができます。是非やってみてください!

最後に中田先生からメッセージ

「腰痛なんてよくあること」と放っておく方もいるかと思います。しかし、腰痛だけでなく痺れなども出てきている人は、足首や足の指の筋力が低下していることも多く、いざ手術となっても術後の回復が遅くなるなどの影響もあります。数週間経っても改善しない腰痛がある場合には、マッサージなどで様子を見ず、早めに整形外科を受診するようにしてください!

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