見逃さないで!気づきにくい「子どもの耳のトラブル」

2025.06.20

大人と比較すると、子どもの耳はトラブルがつきもの。私には4歳の娘がおり、軽い風邪だと思って小児科を受診した際、「耳にも症状があるから耳鼻科も受診した方が良い」と言われ、そこではじめて異変に気付くこともあります。特にこれから季節的に多くなるプールでの耳のトラブルは、よく聞く方も多いのではないでしょうか?「子どもの耳はなぜトラブルが多いの?」「いち早く気づいてあげられる方法は?」など、さまざまな子どもの耳に関する症状について、それらを防ぐ方法も含めてお伝えします!

今回お話をお伺いした人

森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部言語聴覚学科 講師/言語聴覚士 舘 幸枝 先生
北海道医療大学大学院 心理科学研究科 言語聴覚学専攻 修士課程修了(修士)。20年近い臨床経験を経て、2024年4月より森ノ宮医療大学へ入職。聴覚障害を中心に授業を担当。また、現在も複数の病院で回復期領域や外来領域(成人・小児・構音・聴覚)の言語聴覚療法を行う。

まずは耳の構造を知りましょう!

記事中に黄色箇所の専門用語が出てきますので、耳の構造も含め知っておきましょう。

トラブルその1:中耳炎

子どもの耳のトラブルで一番多い中耳炎は、中耳の鼓室に菌が入り炎症し水(ひどい場合は膿)がたまることで、耳の中に痛みが出たり聞こえが悪くなったりする病気です。冒頭にもありましたが、プールに入って一番なりやすいのも中耳炎です。水が中耳の中へ入ることで、中耳炎になると思われている方も多いのではないでしょうか?実は中耳まで水が届くことは稀であり、日頃子どもたちが何気なく行う「鼻をすする」ことが要因の一つなのです。プールに入り急な体温の変化が起こることで鼻水が出やすくなり、鼻をすすることが続くと細菌やウイルスもいっしょに体内に入ることで中耳炎になることがあります。

~中耳炎が子どもに多い理由①~

子どもの耳は細菌やウイルスが侵入しやすい構造になっています。大人の耳管は細く長く、鼻とは斜めになっているのに対し、子どもの耳管は発達途中ゆえ太く短く、鼻と水平であるため、鼻をすすると中耳へ菌が入りやすくなっているのです。

~中耳炎が子どもに多い理由②~

子どもは鼻をうまくかむことができず、吸ってしまうことがほとんどです。鼻水は本来細菌やウイルスなど、汚れを流し出す役目をしているため、それができず鼻をすすってしまうと中耳へ入る可能性が高まります。また、間違った方法で鼻をかんでも、耳管から中耳に圧力がかかるため、中耳炎になるリスクは高まります。

~正しい鼻のかみ方~

・片方ずつかむ
・ゆっくりと細かく回数をわけてかむ
・圧を大きくかけずにかむ(鼻息をやわらかく奥から出すイメージ)

~余談:水が耳に入ったときの対処法~

水が入った耳を下にして温かいタオルを当て横になるのが効果的。そうすると、自然に流れていくか乾くことが多いです。綿棒でうまく吸い取れることは少ないため、過度に刺激するのはやめておきましょう。

ただし、子どもの中耳炎には痛みがない場合も多く、子どもからの訴えはほとんどないため、以下のような様子が見られる場合は、中耳炎を疑いすぐに耳鼻科を受診した方が良いでしょう。
・耳を触る頻度が多い
・テレビに近づく/テレビの音量を大きくする
・呼んでも返事をしない
・耳から分泌物が出る

トラブルその2:外耳炎

子どもは好奇心旺盛なので、遊び感覚で必要以上に耳の穴を触ったり、気になって綿棒でこすりすぎたりしてつく、外耳道の小さな傷から炎症が生じることがあります。これを外耳炎といいます。外耳炎は痛みの他に、発赤が見られることも多いため、中耳炎よりは周りの大人が気づきやすくなります。

トラブルその3:外耳道異物

乳児に多いケースですが、食べてはいけないものを口に入れてしまった…という話を聞いたことはありませんか?耳でも同じことがあります。ビーズや種、小石、豆類などの丸いものをつい耳に入れてしまうのです。はじめは無症状なので周りの大人は気づきにくく、放置し耳から分泌物が出てきたときにようやく気付くことに…。また、夏になるとキャンプや虫取りなど、虫に触れる機会が多くなると思います。そのようなとき、子どもはいろいろなことに夢中になって気づかないこともあり、稀ですが小さい虫が耳の中に入り込んでしまうこともあるのです。できる限り、外でも子どもの行動をしっかりと見ておく必要がありますね。

トラブルその4:心因性難聴

心因性難聴は、精神的ストレスが原因です。子どもの中でも学童期のお子さんがなりやすく、きっかけはさまざまですが人間関係・いじめ・家庭環境・引越しなどにより発症するケースが多いです。急に両耳に表れますが、心因性難聴は「聞こえ」を左右する器官には異常がないため、日常会話には支障が少ないのが特徴。ただし、聴力検査では聞こえず難聴が認められる結果が出ます。また同時に、耳鳴りやめまいの症状が現れることもあります。

~保護者の方が気をつけること~

子どもの耳のトラブルは、早めに気づき早期治療へ導くことが大切です。特に自分で痛みを訴えることができない乳幼児は、普段から注意してみてあげた方が良いでしょう。また心因性の症状は、親に心配をかけたくない、嫌われたくない気持ちで、一人で抱え込むお子さんがなりやすい傾向にあるため、普段から些細なことでもコミュニケーションをとることを心がけましょう。

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