足が冷えて眠れない…。末端が冷えてつらい…。みなさんはそんな悩みを感じたことはありませんか。特に女性に多く聞かれるこの悩みですが、筆者の職場でも冷え性に悩む人は多く、カイロは2個持ちが当たり前、デスクワーク時はひざ掛けに足温器が必須といったように、冷え対策が欠かせないのだとか。今回は冷え性に悩む皆さんに冷え性改善法をお届けします。
今回お話をお聞きした人
森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 副学科長・講師 / 鍼灸師 辻 涼太先生
2011年4月森ノ宮医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 助手、2017年4月より現職。2023年4月森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 副学科長に就任。
原著論文:
・月経時期による冷え症状尺度と月経随伴症状・QOLとの関係性,Quality of Life Journal15巻1号 Page45-50(2014.09)
・女性の冷え症状に関する因子の検討 冷え・腰痛・月経関連症状尺度の関係性について, 東洋医学とペインクリニック(0287-1726)44巻1号 Page17-24(2014.10)
冷え性とは
冷え性とは身体の一部が冷えやすく、温まりにくい状態のことを指します。私たちの身体は寒さを感じると、血管を収縮させ身体の中心部に血液を集めることで、体内の熱を保とうとします。これにより末端部位の血流が抑えられ冷えやすくなるのですが、通常、温かい場所に行ったり、身体を温めたりすると、血流が回復し末端部位も温まります。しかし、冷え性の人はこの機能が上手く働かないため冷えを感じてしまうのです。冷え性は病気と思われる人も多いですが、実は疾患名はなく、体質や身体症状の1つとして考えられています。「末端冷え性」という言葉をよく聞くように、手足の指先(末端)が冷えることが特徴です。一般的に男性より女性のほうがなりやすく、高齢者では男女ともに半数以上が冷えを感じているといわれています。
冷え性の原因
冷え性の原因は大きく2つ。1つは血管運動性障害を引き起こしている場合です。私たちの身体は血管を拡張・収縮させることで全身に血液を送っています。しかし、この運動性が失われると、血管が拡張・収縮しにくくなったり、収縮した後に元に戻らなくなったりして、十分に血液を送ることができません。2つ目は、筋肉量の低下です。私たちの身体は運動する際、エネルギー産出に必要な酸素を取り込むため筋肉に血液を送ろうとします。この際、血管が拡張し血液量が増えます。また、筋肉は運動時にエネルギー(熱)を発します。筋肉量が減ると血液量や産出エネルギー(熱)が減ってしまいこれが冷えに繋がります。特に女性や高齢者は筋肉量が少ない傾向にあり、これが原因の1つだといわれています。
冷え性を改善しよう!
冷え性を改善するには「冷えない身体をつくること」が大切です。カイロや靴下など、冷えを防ぐ方法ももちろん重要なのですが、これでは根本的な解決には至りません。ここでは冷えない身体をつくるための2つの方法をご紹介します!
【その1】お風呂の時間に簡単にできる!~血管トレーニング~
➀2つの湯桶にお湯(約50℃)と水(約15℃)を用意します。(※熱すぎる場合は、お湯の温度を調整しましょう)
②冷え性の部位(手・足)をお湯に10秒つけます。(我慢できる秒数で)
③次に水に10秒つけます。
➃これを交互に10回行います。
~辻先生からのワンポイントアドバイス~
お湯と水に交互につけることで、血管の拡張・収縮運動を促進させます。これを行うと手足が真っ赤になりますが、これは血流が循環している証拠です。改善には毎日継続して行うことが重要ですので、毎日のお風呂時間にとりいれてみてください。
【その2】普段運動しない人にはこれ!~末端トレーニング~
手の場合
➀手を大きく開きます
②第1、2関節を曲げます。
③その状態で手を握ります。
➃第1、2関節を曲げたまま、手を広げます。
⑤最後に関節をすべて伸ばし➀の状態に戻します。
⑥➀~⑤を手が温まるまで繰り返す
~辻先生からのワンポイントアドバイス~
この運動を行うことで、指先を動かし血流を循環させます。また運動時に発生する熱でさらに手を温めることができます。今回は手先を紹介しましたが、指の曲げ伸ばしは足でも行えます。少し難しいかもしれませんが、ぜひやってみてください。
+α鍼灸師が教える冷え性に効くツボ
冷え性にはツボを温めるのもおすすめ!辻先生に手足の冷えに効くツボを教えてもらいました!
足の冷え性に効く
・照海(しょうかい):内くるぶしの真下
足・手の冷え性に効く
・十宣(じゅっせん)/十横(じゅうおう):両手足の指先のてっぺん
辻先生からのメッセージ
実は、私も手の冷え性に悩まされていた一人だったのですが、今回ご紹介した方法を半年間行い、冷えがなくなりました。同様に、私の担当患者さんもこの方法で冷え性が改善しています。根本的な改善となると、どうしても長期的な継続が必要となりますが、今回ご紹介した方法は簡単に行えるのでぜひ取り入れてみてください。また、東洋医学では「冷えは痛みを引き起こす」といわれており、頭痛や月経不順などの症状も「冷え」が原因となっている可能性があります。冷え性を改善することで、他の身体症状にも良い影響をもたらすだけでなく、睡眠の質が上がったり、仕事に集中できたりと、生活面でもいいことがたくさんあります。今回ご紹介した冷え性改善方法や、日ごろの運動、筋トレを行い、冷えない身体づくりを目指しましょう!