睡眠は人生を良くするカギ⁉“いい睡眠”のために必要なことって?

ヒトは人生の約1/3の時間を睡眠にあてています。そして残り2/3の時間をいかに有意義に過ごせるかもこの睡眠にかかっていると言っても過言ではありません。睡眠には「疲労回復」はもちろん、「記憶の定着・整理」の効果もあることから、アメリカでは国民の睡眠の質の向上=国力の向上という考えのもと、日本より随分早くから睡眠を重要視してきた歴史があります。近年は日本でも企業の健康経営の施策の一つとして、従業員のパフォーマンス向上を目的に睡眠改善に取り組む企業も増えています。今回は私たちの人生を良くするカギとも言える睡眠に迫ってみたいと思います!

<今回お話をお聞きした人>

森ノ宮医療大学 医療技術学部 臨床工学科

教授/臨床工学技士、看護師  藤江 建朗 先生

大阪電気通信大学医療福祉工学部卒業。大阪電気通信大学大学院で博士号(工学)、社会福祉法人大阪暁明館大阪暁明館病院などで臨床工学技士として勤務し、呼吸療法業務、睡眠医療、心臓カテーテル業務に従事。(一社)大阪府臨床工学技士会呼吸担当理事、(公社)日本臨床工学技士会代議員、(一社)日本呼吸療法医学会代議員。

研究内容:生体信号を利用した睡眠状態の推定に関する研究、人工呼吸器の性能評価、医療安全評価など

 

”いい睡眠”って何?

まず年齢によって必要な睡眠時間と睡眠の内容が変わってきます。寝床に入っている間の深睡眠(=ノンレム睡眠、深い眠り)の時間が年齢と伴に徐々に減少してきます。「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」といった悩みは若い方より、中高年以上の方に多いのはこのためです。寝床に入っていても眠れていない時間が多くなるため、ストレスを感じるのです。主観的にいい睡眠とは、「起きたときによく眠れた、疲労感がとれた」と感じることを指しますが、これは客観的にもいい睡眠がとれていることとイコールではありません。客観的にみていい睡眠をはかるには、身体にたくさんのセンサーをつけて、検査する必要があります。主観的にも客観的にもいい睡眠をとれるのがベストですが、客観的にいい睡眠を日常的に計測するのはなかなか難しいため、必要な量と質を知って、それを意識しながら睡眠をとってみましょう。

引用:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」p.8

睡眠が妨げられる要因を取り除きましょう!

睡眠が途切れてしまう状態には2種類あり、自分でも目が覚めたと自覚するものと、脳だけ起きてしまうものがあります。睡眠が度々途切れると、その分だけ睡眠時間が短くなります。原因としては、騒音やストレス、アルコールの摂りすぎ、部屋が暑いなどがあります。これから夏を迎えますが、寝るときは冷房をつけて布団をかけて寝るのがオススメです。

<いい睡眠をとるためのポイント>

① 午前中に日光を浴びる

② 寝る前にデジタル機器を使用しない

③ 暑すぎず寒すぎない温度に

④ リラックスできる寝衣・寝具で寝る

⑤ 寝る直前以外の時間に適度な運動をする

⑥ 朝食をとり、夜食は避ける

⑦ カフェイン、アルコールは摂りすぎない

⑧ 禁煙に努める

参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023

睡眠障害として代表的な睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠障害は、正しくは睡眠関連疾患と呼ばれています。よく知られたものでは、睡眠時無呼吸症候群があります。睡眠時無呼吸症候群とは、その名の通り眠っているときに呼吸が止まったり、呼吸が浅くなってしまう病気です。患者さんの約7~8割が男性です。これはなぜかというと、女性ホルモンが関係しているようです。上気道(鼻から喉までの気道)周りは硬いもので支えられていないため、寝ると筋肉の緩みと重力で落ちてきやすい状態になります。その上気道の周りを支える筋肉を女性ホルモンが支えているのではと言われています。したがって、女性でも閉経後は女性ホルモンが減少するため、発症する方が増える傾向にあります。また現代人はあごの骨が小さくなってきていることもあり、子どもや若い方でも下顎が小さかったり、後退している場合は舌が収まりきらないため、発症する可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群になってしまった場合、対処療法としてCPAP(シーパップ:持続的気道陽圧)という治療を行います。肥満が原因の方は栄養指導を受けるなど並行して減量にも取り組みます。CPAPは就寝時に、鼻マスクをつけて機械から一定の風(圧力)を送りつづけることで、気道を確保して無呼吸状態にならないようにするという治療法です。睡眠時無呼吸症候群によって何度も脳が覚醒してしまうと、血圧が上がりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。したがって、睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病につながることもあるため、放っておかずに治療しましょう。

睡眠について悩んだときには

最近は睡眠クリニックなどもできていますが、睡眠に関する悩みは原因によってかかる科が異なります。呼吸器内科や耳鼻咽喉科、麻酔科、歯科口腔外科、脳神経内科、精神科など様々な科に関係があります。最初にどの科を受診しても最終的に睡眠検査を実施しているところを紹介されますので、睡眠に悩みがあり、なかなか解決しない場合は睡眠科を受診してみてください。そこから適切な診療科へ紹介される場合もあり、解決への近道にもつながります。

“いい睡眠”をとることの重要性を理解して、起きている間の生活を充実させるためにもできそうなことから実践していきましょう!

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