【鍼灸編】つら~い肩こりの治療法

筆者は今年38歳になりますが、働き出していつの頃からか、ひどい肩こりに悩まされています。毎日パソコンの画面を見続ける仕事で、気づけば画面と顔がくっつきそうな距離になっていることも多々…。こんな姿勢が続くと、肩こりも慢性化するのは当たり前ですね。ストレッチをしても、お風呂に入っても改善しないこの肩こり、直す方法がないのか鍼灸学科の大川先生にお話しを聞いてきました。

今回お話しをお伺いした人

森ノ宮医療大学 医療技術学部 鍼灸学科 講師/大川 祐世 先生
森ノ宮医療大学大学院 保健医療学研究科 博士後期課程修了、博士(医療科学)。専門は臨床鍼灸学。愛媛県立中央病院漢方内科にて鍼灸師として研鑽を積み、2017年4月に森ノ宮医療大学入職、2021年4月より現職。

肩こりの原因って?

実は肩こりは様々な要素が複合的に絡み合って症状が出ていることが多く、明確な原因が見つからないことも少なくありません。このような肩こりを「本態性肩こり」と言います。正確な数字は示されていませんが、かなり多くの患者さんがこの本態性肩こりではないかと思われます。
統計学的には、肩こり患者さんには以下のような特徴があると言われています。
・いわゆる働き盛りの方に多い
・女性に多い
・職場でのストレスが高い方に多い
・VDT(visual display terminal)作業者に多い
・睡眠時間が短い方に多い

ちなみに最近プレゼンティーズムという言葉が注目されています。欠勤には至っていないものの健康問題によって労働生産性が低下している状態のことです。肩こりはこのプレゼンティーズムの主要な要因と考えられており、肩こりによって一人当たり年間約45,000円の経済損失がある、という試算もあります。ですので、○○(筆者)さんが全快すると森ノ宮医療大学の労働力は大きく向上すると考えられますね(笑)

肩こりの治療方法は?(鍼灸)

いきなり身も蓋もない話で申し訳ないのですが、現在の医療界では肩こりの標準的な治療方法は存在しません。慢性的な痛みの診療において、しっかりと検証された科学的根拠に基づいて標準的(安全で、有効で、コストに見合った)な治療をオススメしてくれる、「慢性疼痛診療ガイドライン」というものがあります。その中に肩こりに関する章が設けられているのですが、残念ながらまだそこにはどの治療法も推奨されていないのが現状です。
ただし、これはどの治療も肩こりに効かないということではなくて、まだ科学的な検証が十分に足りていないということだとご理解ください。鍼灸の場合も同じで、肩こりで鍼灸治療を受けられた患者さんが良くなられる様子は普段臨床をしているとたくさん目にするのですが、まだその効果の科学的な検証が十分ではありません。
ただそれでは今回の話が終わってしまうので、鍼灸ではどうアプローチするか、お話ししますね。

注)鍼灸は、同じ疾患でも施術者や対象者によってアプローチが異なるのが特徴です。そのため今回は<大川先生が治療するのであれば>という前提でのお話しになることをご理解ください。

まず肩こりが起きるメカニズムはいくつか考えられているのですが、一つには患部の循環不全が挙げられます。鍼を刺すとその周辺の血流が改善することが明らかにされていますので、これを応用して患部に直接鍼を打ったり、打った鍼に電気を通したりして血流改善を促すアプローチを行います。また同時に、患部から少し離れたところに鍼をすることもあります。鍼灸ならではのアプローチと言えますが、例えば肩こりに対しては手や腕に鍼を打つことが多いです。

なお今後、実際に鍼を打つことにより、どれくらい肩こりが軽減できるのかを研究していく予定です。研究が終了すれば、論文にまとめて発表しようと思いますので、楽しみにしていてください。

話は変わりますが、厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」によると、疾患の罹患率第1位は男女とも腰痛ですが、2位は肩こりだそうです。その中で、痛みを放置している人の割合は、腰痛が22%に対して肩こりは37%と「何をすればよいのかわからない」方が多いというデータも出ています。またこの調査では、腰痛では病院・クリニックなどに相談する方が多いのですが、肩こりの場合には、いわゆる鍼灸院や接骨院に通う方が相対的に多いということも示されています。
このことから、鍼灸はまだまだ肩こり(もちろん腰痛も)でお困りの方にお力添えをすることができる、と思っています。

まとめ

悩む人が多いにもかかわらず、その治療法や原因までもがはっきりしていない肩こり。日頃から生活習慣に気を配り、肩こりにならないよう心掛けるとともに、
そして…先生の研究が肩こりの新たな治療法につながり、私を含め一人でも多くの方がこの辛さから解放されることを願い…大川先生がんばってください!(できるかぎりの大声)

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