【人間ドックのススメ】100 年時代を元気に生きるコツ 

2024.04.24

日本人の平均寿命は医療発達の背景から伸び続けており、「人生 100 年時代」といわれる近年では100 歳まで生きる長寿者も珍しくありません。寿命が延びるのは喜ばしいことですが、一方で介護や病気のリスクも上がります。生活の質(QOL)を保ちながら長生きするために、今日から取り組めることについて、森ノ宮医療大学の青木学長にお話を伺いました。

今回お話をお聞きした人 

森ノ宮医療大学学長/医師 青木 元邦 先生
大阪大学医学部卒、医学博士。専門は循環器学、老年病医学、分子生物学。大阪大学医学部附属病院、米国ハーバード大学医学部ブリガム&ウイメンズ病院などに勤務後、大阪大学大学院医学系研究科准教授、森ノ宮医療大学保健医療学部教授を経て、2021年4月より現職。

人間ドック、なぜ重要? 健康診断との違いは?

ーー青木先生、健康に長生きするために、私たちが今からできることはありますか?

運動やバランスの良い食事を心がけることも重要ですが、私は「人間ドック」の受診をおすすめしています。人間ドックを受けたことはありますか?

ーーまだ受けたことはないですね。年に 1 度は健康診断があるので、人間ドックまでは受ける必要がないと思っていました。どんな違いがあるのでしょうか。

人間ドックと一般健康診断の違いは色々ありますが、そもそも得られる効果が違います。法律に基づいて義務付けられている健康診断は基本的なメニューにとどまり、その効果は「最低限の健康状態の把握」のみです。

一方で人間ドックは、まだ無自覚の状態から病気のリスクあるいは癌など病気そのものを見つけることを目的としています。人間ドックは主要な検査がパックになっているので、無症状で健康診断の結果が優秀な方も気軽に受診していただきたいです。

医師がすすめる「受けるべき検査」とは? 

ーー人間ドックは健康診断よりも、さらに多くのオプションを選べますよね。どういう基準で選べばいいでしょうか。

人間ドックの利点は、「自覚症状がない段階での早期発見」です。婦人科系や消化器系の癌は早期発見によって完治の可能性がぐっと高まるので、早期発見の意義は大きく、数ある検査の中でも特に有用です。乳がんや子宮頸がんの検査は35歳から、胃がんや大腸がんの検査は40歳から受けることをおすすめします。子宮がんは閉経後の罹患率が高いですが、若い方もゼロではないので、早めに検査を受けると安心です。

ーーなるほど。がんは自覚症状がないままに進行する病の代表格ですよね。ほかのがんを見つける検査もありますか?

採血でできる「腫瘍マーカー検査」があります。確定には画像検査などが必要になりますが、肺がんや男性特有の前立腺がんなど、見つけにくい疾患の発見も期待できます。

ーーほかにも人間ドックで調べられる、危険な疾患はありますか?

日本人の死因の上位を占める脳血管疾患の危険性も「脳ドック」で調べることができます。脳血管の様子を確認できる頭部 MRI 検査により、「脳動脈瘤」の有無を通して、若い方にも起こりえる「くも膜下出血」のリスクがわかります。

ーーたまに 30 代でも、くも膜下出血になる人がいますよね…。年齢問わず、突発的に起こる疾患のリスク検査はメリットが大きそうです。

まずは自分の傾向を知るために人間ドックを受けてみよう 

ーー人間ドックはどのくらいの頻度で受けるべきでしょうか?

基本的には年に 1 回の検査を推奨しますが、まずは受けてみて、その結果とご自身の年齢を加味して決めてもいいと思います。病気が見つからなかったとしても、リスクもわかるので、次はいつ、どの検査を受けるべきかの方針が立てられます。

ーー健康診断でも太りすぎ、高血圧などの大まかな傾向はわかりますが、人間ドックだとさらに項目が細かく、リスクも判明しやすいのですね。

そうですね。最後は 1 人の医師が全検査を照らし合わせて、総合的に全身状態を判断するのですが、検査項目が多いと傾向もわかりやすくなります。

ーー結果項目の中で、特に注目すべき数値はありますか?

まずは血液検査でわかる「中性脂肪」や「LDL コレステロール値」。これが高いと動脈硬化のリスクが高まります。逆に善い脂質(善玉コレステロール)も存在し、長寿家系の人では「HDL コレステロール値」が高いこともあります。また血糖検査項目の「HbA1c」は大変有用です。直近 1~2 カ月の血糖の平均がわかる数値で、これが高いと糖尿病の前段階あるいは糖尿病であるとわかります。

ーー人間ドックの結果項目には、自分の傾向を知るヒントが詰まっているのですね。本日はありがとうございました。

まとめ 

「人生 100 年時代」の恩恵を享受するためには、生活習慣の管理に加えて人間ドックを受け、自覚症状がない段階で病気を見つけ早期に対応することが大切です。病気のリスクは家族の病歴でも推測できますが、環境要因も大きいため「自分は大丈夫だ」と軽視せず、定期的に検査を受けるようにしましょう。

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