女性の部位別がん罹患者数1位!「乳がん」ってどんながん?

がんは日本人の死亡原因として堂々の第1位となっていて、3人に1人はがんで亡くなると言われている現代。身体中の様々な部位にできるがんですが、部位別がん罹患者数をみると、男性は前立腺がんが1位で、その他にも胃、大腸、肺も罹患者数が多い中、女性では圧倒的に乳がんの罹患者数が多いというデータがでています※。今回はこの「乳がん」について、X線検査など放射線を用いた検査や画像診断に携わる診療放射線技師の西浦先生にお話を伺いました!

※ 厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2019」より

<今回お話をお聞きした人>

森ノ宮医療大学 医療技術学部 診療放射線学科

教授/診療放射線技師 西浦 素子 先生

大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程修了、博士(保健学)。検診マンモグラフィ認定診療放射線技師、ピンクリボンアドバイザー、健康運動実践指導者。20211月より現職。専門は乳腺の医用画像解析。近年は乳腺医療に従事する診療放射線技師の経験と知識をもとに活動の幅を広げ、健康運動指導士と連携して乳がん啓発(ブレスト・アウェアネス)運動に関する研究も進めている。

乳がんとはどういったがんなのか?

 一言でいうと乳房の中にできるがんです。乳房の中のどこにがんができるのかというと、罹患者の大半は乳管の中にある上皮細胞(体や体腔、臓器などの表面を覆う細胞)ががん化する形で発症します。乳がんには色々な分類の仕方がありますが、乳管の中にできるがんでも、乳管の中でとどまっているものと、乳管の壁を破って外にでてしまって、血管やリンパ管をつたって他の部位に転移するもに分けられます。よく早期発見が大事と言われるのは、転移する前の乳管の中にがん細胞がとどまっている状態のときに発見しましょうということなのです。乳がんは女性がかかるがんの中では最も多いですが、死亡率は近年第4位となっており、早く見つかり適切な治療がなされれば、生存率は9割を超えるがんと言われています。また、男性にも乳管は存在するため、男性でも発症する場合があります。

どういう人が発症しやすい?

乳がんの原因は、予防できる可能性があるものとできないものがあります。乳がんは、エストロゲンという月経前に多く分泌される女性ホルモンの作用が原因の1つとも言われています。そのため初潮を早く迎えた方や、閉経年齢の遅い方、妊娠・出産を経験していない方のほうが罹患率が高くなるというデータがあります。要は月経を多く経験している方がリスクが高くなるということです。年齢別の罹患者数としては40代後半から50代前半が多いのですが、最近では60代後半にも多くなっています。

引用:がんの統計2023「年齢階級別がん罹患率推移―乳がん」

それなら閉経後はリスクが下がるのでは?と思う方も多いかもしれませんが、実は閉経後でも肥満の女性は罹患率が高いというデータがあります。これは脂肪の中に、女性にも少量分泌されている男性ホルモンをエストロゲンに変換する酵素が豊富に存在している物質があることが原因とされています。年を重ねるにつれて代謝も落ちて太りやすくなったな…と感じている方も多いかもしれませんが、やはり適度な運動とバランスのいい食事が大事ですね!その他にも、がん家族歴も関連性が高く、お母さんやおばあちゃんが乳がんを経験されている場合、発症率が高い傾向にあります。

乳がんが見つかるパターンって?

乳がんは、なんとなく触ったときにしこりを見つけるというパターンが多いとイメージされる方が多いかもしれませんが、自分で触ってわかるほどの大きさになるまでには、実は10年くらいかかります。また大きさも2㎝ほどにまでなっていることが多いです。ただ、その中には良性の腫瘍も含まれていて、一般的には良性の腫瘍より悪性の腫瘍のほうが硬いと言われています。どんな硬さかというと、拳を握ったときに出っ張る関節(中手指節関節)くらいと言われています。他には、別の検査で胸部のCTを撮ったときに偶然写り込んで発見されたり、体調不良がしばらく続いていて受診したりして発覚する場合もあります。

どんな検診の方法がある?

乳がん検診といえばマンモグラフィを用いるというのはご存知の方も多いかと思います。ただ20代、30代の女性だと乳腺と脂肪の割合において、乳腺の割合がかなり多く、マンモグラフィではがんが写りづらいと難点があります。40代になるとようやくその割合が半々くらいになるため、国としても40代からマンモグラフィを受けることを推奨しているのです。しかし20代、30代の方も検査を受けるに越したことはありません。そこでこの年代の方おすすめしたいのは超音波(エコー)です。痛みもなく、多くの健診施設や人間ドック等で受けることができます。ただし、マンモグラフィとエコーでは見え方が異なるため、ベストなのはマンモグラフィとエコーを上手く組み合わせて受けることです!若い皆さんも是非検討してみてください。

乳がんが見つかった後はどうなる?

  乳がんが見つかった場合、ほとんどの場合最終的には手術によって切除となります。ただし、化学療法を使って少し小さくなってから切除したり、手術の後に内科的な治療や放射線治療を併せて行うことも多いです。切除と言っても、部分切除か全て切除(全摘)にするかはがんの状態によります。全摘というと抵抗がある方が多いと思いますが、現在は医療の技術が進んでいて、部分切除で問題ない場合でも、あえて全摘して、乳房全体を再建するほうが美容的にも綺麗な形で再建できることもあります。しかも現在乳房の再建は保険適用になっています。

「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」のすすめ

乳がん検診に関わらず、日本人はOECD加盟諸国と比べるとマンモグラフィ検診率が低い傾向にあります。忙しかったり、自分はがんにかかることはないだろうと思っていたりする方が多いのだと思います。そこで、現在乳がん予防・早期発見のために推奨されているのが「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」です。自分の乳房の状態に日頃から関心を持つことで、乳房の変化を感じたらすぐに病院に行くという行動を身に着けることを目的としています。

一般社団法人 日本乳癌学会「ブレスト・アウェアネス」について

肥満にならないこと、そして「ブレスト・アウェアネス」を行って乳がんを予防、早期発見していきましょう!

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