みなさんは、自分が普段どのように歩いているか意識したことはありますか?実は、「歩く」能力が低下すると健康寿命※が短くなるといわれています。日本は平均寿命世界一ですが、健康寿命との差は約10年もあります。そのため、健康的に過ごせる期間を延ばすことが、今後の私たちにとっての重要な課題となっています。今回は、未来の健康を守るために歩行能力の維持、向上をめざす「Walk Care」をご紹介。さらに、このWalk Careは、現在盛り上がりをみせている大阪・関西万博にも出展されており、いのち輝く未来社会のデザインの取り組みの一つとして、注目を集めています。
※入院や介護を必要とせず、自立して健康的に生活できる期間のこと
大阪・関西万博出展 「Walk Care」
2025年6月17~23日:大阪ヘルスケアパビリオン リボーンチャレンジ みんなで考える未来の街プロジェクト
2025年8月20日:大阪ヘルスケアパビリオン リボーンステージ催事出展
今回お話をお聞きした人
森ノ宮医療大学 インクルーシブ医科学研究所(MINCL) 所長/総合リハビリテーション学部理学療法学科 教授 / 工藤 慎太郎 先生
鈴鹿医療科学大学大学院(SUMS)医療科学研究科 医療科学専攻 博士課程修了(博士)。平成医療専門学院理学療法学科を卒業後、森ノ宮医療大学 理学療法学科講師・准教授を経て2021年より現職。2020年よりインクルーシブ医科学研究所(MINCL) 所長に就任。足部・足関節を中心に運動器理学療法を専門として研究している。特に超音波画像や生体力学的研究手法を駆使し、理学療法の対象となる運動器・スポーツ疾患の病態や理学療法効果の見える化に取り組んでいる。
〈森ノ宮医療大学 インクルーシブ医科学研究所〉https://www.morinomiya-u.ac.jp/mincl/
歩行能力の低下は40代から始まっている?
前述で「歩行」と「健康寿命」には関わりがあると述べましたが、元気に長生きするためには、自分の足で歩ける「歩行能力(歩行速度、歩き出しの力強さ、滑らかさ、リズム、揺れ)」を保つことが大切です。なんと早い人では40代から低下が始まるそう。歩行能力が落ちると、生活の質(QOL)が下がるだけでなく、膝や股関節、足首など下半身への負担が増え、転倒のリスクが高まります。また多くの研究によると、歩行速度の低下は平均余命が短くなることもわかっています。
〈自身の歩き方をチェック!歩行能力が低下しているとこんな歩き方に〉
・歩くスピードが落ちる(※指標:1秒に1m移動できないと要注意)
・リズムが早くなる。小刻みになる。
・歩幅が小さくなる
・安定性が悪くなる。ふらふらする。こけやすくなる。
歩行能力低下の原因
歩行能力が低下してしまう原因は、蹴る力(=地面を押し出す力)が弱まることにあります。私たちは歩くとき、かかとで地面を蹴る(持ち上げる)ことで前に踏み出すことができます。この時、必要となるのがふくらはぎの筋力です。この筋肉が衰えると、足が上手く上がらず、歩幅が狭くなったり、すり足になることでつまずきやすくなったりします。また、足が上がらない分、膝や股関節でその役割を代償するため、無理な負荷がかかり、痛みが生じたり、曲がったりしてしまうのです。
未来の一歩を守るために!自宅で簡単にできる「Walk Care」とは?
では、どうやって自分の歩行能力を計り、改善すればいいのでしょうか。そんな問題を解決すべく開発されたのが「Walk Care」です。Walk Careは、500円玉ほどの小さな計測センサーを膝下につけ歩くことで、歩行を解析、5つの能力(前述)を数値化し、適切なアドバイスを行います。また同時に、その人に合わせたエクササイズを提供することで予防・改善に繋げます。計測にはセンサーが必要ですが、エクササイズは専用のアプリを開きスマートフォンの前で運動をすれば、AIが運動を解析してくれます。また運動中の筋活動も予測できるため、インストラクターがいなくても、エクササイズが正しく行えているかフィードバックしてくれます。
計測センサー
スマートフォンアプリ画面
自分に合ったエクササイズが提供され、インストラクター(画面)と運動を行います。
また、AIがフォームや筋運動を特定し、正しく運動できているかも教えてくれます!
カレンダー機能も搭載されているため、測定結果やエクササイズの履歴も記録できます。
〈Walk Careについて〉
森ノ宮医療大学インクルーシブ医科学研究所、株式会社フォーカスシステムズ、TOPPAN株式会社による共同開発
大阪・関西万博
大阪ヘルスケアパビリオン リボーンチャレンジ みんなで考える未来の街プロジェクト出展(2025年6月17日(火)~23日(月))
大阪ヘルスケアパビリオン リボーンステージ催事出展(2025年8月20日(水))
【体験レポート】歩行能力を計ってみました!
実際にWalk Careを体験!まずは、膝下横にセンサーを装着。計測のためスマートフォンから専用のアプリを開き、10ⅿ程前に全身が映るように設置。そこに向かって歩きます。
通常はこのまま歩いて計測するのですが、大阪・関西万博ではVRゴーグル、VRヘッドセットを装着し、目の前に現れた扉を通過すると測定できる仕様に!5秒も経たないうちに画面に自分の計測結果とアドバイスが表示されました。こんなに簡単に計測できるなんて!最新のテクノロジーってすごいんですね。
その後は、自分に合わせたトレーニングを行いました。インストラクターの動きをまねしてスクワット10回!1回1回「GOOD」などの評価がでるので、フォームも意識しながら楽しく行えます。さて、測定結果は…じゃじゃーん!私は20代なので、それほど問題はないようでしたが、揺れや滑らかさがもうひとつ…。ふくらはぎの筋力を鍛えて、まっすぐ歩けるように意識したいと思います!
工藤先生より~Walk Careの未来~
「Walk Care」の良さは、病院に行かなくても、自宅で計測やエクササイズができることです。今後の1つの展望として、ウェアラブルセンサー※のような役割を担えればと考えています。治療後自宅に戻られた方の健康状態の把握やサポート、また遠隔リハビリといって、地方や海外など遠方の方が治療後、リハビリを必要とする場合に、Walk Careやzoomなどを使い運動支援ができれば、通院の心配をせず、どこでもサポートが可能になります。またもう1つが、企業が行っている健康経営(企業が社員の健康を守る取り組み)への活用です。Walk Careは運動の測定、トレーニングの処方もすべて自動化しているため、大勢の社員の中から本当に治療が必要な方を見つけ出し支援できる1つのツールになると考えています。今後、未来の医療はさらに発展していきます。いくつになっても自分の足で歩ける!そんな将来がやってくるようこれからも支援できればと思います。