私たちの生活を華やかにしてくれる「香り」。香水や柔軟剤、ルームフレグランスなど香りを目的にした商品は多く存在します。そんな話を人としていると、アロマセラピーの話題になることも。しかし実はアロマセラピーって、それらとは全く違うものだとご存知でしたか?この記事ではアロマセラピーの正体、そしてその魅力に迫ります!
今回お話しをお聞きした人
森ノ宮医療大学 看護学部看護学科 教授/ 森 美侑紀 先生
和歌山県立医科大学大学院 医学研究科 博士課程修了、医学博士。専門は基礎統合医療学、細胞分子機能医学。2018年4月より現職。JAAアロマトップインストラクター、看護師、柔道整復師、介護支援専門員、上級食育アドバイザー。プロバスケットボールチーム“大阪エヴェッサ”公認メディカルアロマトレーナーの経験も。好きなアロマオイルはティートリーとレモン。
アロマセラピーとは
香りには、天然のものと人工的に作られたものがあり、アロマセラピーでは枝葉や果物の皮など天然の植物から抽出された精油(オイル)のことを指します。
植物はその育つ環境によって、雨が少ない地域では乾燥に耐え、外敵が多い場所では虫や菌、ウイルスからの加害を防ぎながら生育しなければいけません。そのために植物は、それらの環境に適した成分を生成し身体を守っていますが、この成分は人間の身体にも様々な影響を引き起こします。
当然、人工的につくられた香りには、これらの成分は含まれていないため、アロマセラピーのオイルは全く別物だということが理解いただけるでしょう。
使用の際はディフューザーで気化させたり、直接皮膚に塗布したりすることで、鼻から脳や、肺・皮膚から血液へと成分が届き、効果が表れます。
医療として活用されるアロマセラピー
先述したように植物の身体には、アルデヒド類・オキサイド類・エステル類といった様々な成分が含まれます。実はこれらは、私たちが普段服用している薬にも含まれる成分で、天然の薬と称することができます。そのため使い方に注意は必要ですが、適切に使用すれば傷が早く治ったり、頭痛や呼吸器疾患、変形性膝関節症の改善や生活習慣病・認知症の予防まで、さまざまな効果が期待できます!海外では薬の代わりに処方されることもあるんだとか。
1) 膝関節炎モデルラットに対するEucalylemon精油の有効性の検討. 日本アロマセラピー学会誌 14(1), P24-28. 2015.
ちなみに森先生はもうずっと、花粉症や風邪をひいたこともないそう。
病気になるまで自分の身体に無頓着な人や、簡単に薬を飲む傾向のある人にこそ、病を未然に防ぐ目的で、アロマセラピーを試してほしいとのことです。
お話しの途中、ウインターグリーンの香りを嗅がせていただきましたが、その香りはまんま湿布。ほとんどサリチル酸メチルという、湿布に含まれるのと同じ成分で構成されているためだそうです。さいきん歳のせいか、すぐ身体の節々が痛くなるのでウインターグリーンをこっそり購入しようかな…。
使用上の注意
こんな素敵なアロマセラピーですが、いくつか注意があります。
①人工のものではなく、ちゃんとしたものを選ぶ
精油は大量の植物の組織から、ほんの少しの量しか抽出できないものです。そのため生成には手間と時間がかかるので、それなりの価格がするものです(1ccで10,000円するものも!)。
ところが中には、通常では考えられないような価格で販売されているものもありますが、それらは植物由来ではなく人工的に作られていることがほとんど。
購入の際は次の点に気を付けて選びましょう。
・エッセンシャルオイル、100%精油などの表記があるか
・植物の学名や原材料産地の表記があるか
・成分表が付いているか(メーカーによっては別途取り寄せの場合も)
②禁忌もあります
レモン・オレンジなど柑橘系の精油は、塗布した部分が日光に当たるとシミになりやすいなど、それぞれの精油によって禁忌もあることに注意。また妊娠初期のつわりや痛み、産後鬱などにも効果があるアロマですが、適切な精油を選択しないと逆効果となることも。
分からない場合は専門家の意見を聞くようにしましょう。
③赤ちゃん、子どもに使いたいときは
特に、1歳までの赤ちゃんの肌にはラベンダー、カモミール・ローマンの2種類以外は使用できません。それ以降も使用を控えた方がいい精油があるため、こちらも専門家に相談しながら使用しましょう。
④ペットに使う際は
ペットについてはあまり研究が進んでいないのが実態ですが、猫は肝臓で処理できない成分がある可能性があるそうなので、使用は控えた方がよさそう。犬はアロマトリートメントを行うペットサロンがあったり、ノミ・ダニが減った研究結果もあるそうです。
まとめ
アロマセラピーとは、単に良い香りがするものだと思っている方は多いと思います(僕もその一人でした)。しかし今回お話しを聞き、植物が持つ自然由来のさまざまな効果を得ることができるものだと知り、その魅力に惹かれました。みなさんもぜひ、植物のパワーを試してみてはいかがでしょうか。