数年前にテレビドラマでも取り上げられ、注目を集めた診療放射線技師。放射線というと怖そう...というイメージを持っておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、厳重な管理と安全対策を行っているので、安心して働くことができます。放射線を用いて病気の診断・治療に携わり、患者さんの命を救う診療放射線技師の仕事内容に迫ります!
今回お話をお聞きした人
森ノ宮医療大学 医療技術学部 診療放射線学科
講師/診療放射線技師 渡邊 翔太 先生
金沢大学医学部保健学科・放射線技術科学専攻卒業、金沢大学医薬保健学総合研究科で博士号(保健学)を取得。近畿大学病院中央放射線部、近畿大学高度先端総合医療センター PET分子イメージング部で診療放射線技師として勤務し、2024年4月より現職。
研究内容:X線CT画像の画質評価、撮影および画像再構成方法の最適化
診療放射線技師の仕事内容って?
診療放射線技師の仕事は、診断分野と治療分野に分かれています。
まず診断分野では、患者さんに対して一般X線撮影※、X線CT※2、MRI※3、X線透視※4、核医学検査※5などの画像検査を行います。画像検査を行うためには医師のオーダーが必要ですが、患者さんの疾患に合わせて検査方法を検討する際に診療放射線技師の意見が求められることも多いそう。また近年では、手術前に撮影した画像データを組み合わせて臓器や血管の位置関係が分かる立体的な3次元画像を作成することも、診療放射線技師の重要な仕事です。患者さんの疾患に合わせて医師が知りたい情報を含んだ3次元画像を作成する必要があるため、診療放射線技師の力量が試されます。1つの画像を作成するためにかかる時間は2~30分程度で、多い時には1日に20件もの画像を作成することも!
治療分野では、がんに対する放射線治療を実施します。放射線治療では皮膚を切開したり臓器を傷つけたりする必要がないため、外科的手術や化学療法に耐えられない高齢者でも適用できる場合があります。放射線照射により皮膚炎や疲労感、消化器症状などの副作用が起こる可能性があるため、適切な位置と放射線の照射量を見極める診療放射線技師の役割は非常に重要です。治療分野は専門性が高く、放射線治療用装置を備えている病院は限られているため、診断分野と比較して関わる技師の数は少ないのが特徴です。
※一般撮影装置を用いて胸や腹部・骨などの画像を撮影する方法。短時間で済む点がメリット。
※2 CT(コンピュータ断層撮影)装置を使用し、身体を輪切りにした画像を撮影する方法。骨や血管、組織、内臓の状態の詳細を可視化できる。
※3 X線ではなく磁気と電波を用いるMRI(磁気共鳴画像)装置を使用して撮影する方法。脳や血管など水分が多い部位の撮影が得意。
※4体内に造影剤を取り込み、X線を用いて連続で撮影する方法。リアルタイムで臓器や器官の様子を確認できるのが特徴。
※5 放射線医薬品を体内に取り込み、臓器による代謝の働きを撮影する方法。一定時間撮影を行うため、疾患の経過を観察できるほか通常の撮影では可視化できない初期の疾患を発見できることも!
こんな魅力があります!
カメラマンが被写体や環境によってカメラの設定を変えるのと同様に、診療放射線技師が画像撮影を行う時も、患者さんの体格や状態によって機器の設定や撮影方法を工夫する必要があります。その努力が実り、自分のイメージ通りの画像を撮影できた時にはやりがいを感じられます。また、患者さんの中には画像撮影に慣れていない方や放射線への不安を感じておられる方も多くいらっしゃいますので、撮影時に適切な声かけをして不安を取り除くことも診療放射線技師の大切な仕事の一つです。患者さんにとってより楽に短時間で撮影を終えることができ、患者さんから「ありがとう」と言っていただけると、この仕事に就いてよかったと実感できるそう。
乳がんの発見に効果的なマンモグラフィー検査は、その特性上女性技師が担当することがほとんどということもあり、診療放射線技師は女性のニーズが高まっている仕事です。育児休暇や時短勤務など女性の働きやすさに配慮して福利厚生が整っている病院も多いですし、専門職であるため他施設に移ってもこれまでの経験を活かして働くことができます。
診療放射線技師に向いている人って?
診療放射線技師は他の医療職や患者さんと関わることが多く、コミュニケーションが得意な方に向いている職業です。例えば手術室で医師・看護師・臨床工学技士・臨床検査技師と一緒に手術を行うとき、全ての業務が各専門職に振り分けられているわけではなく、どの職種が行ってもよい作業が必ずあります。そのような場面で、他職種と積極的にコミュニケーションを取り協力して作業を行うことで、手術時間が短縮され患者さんにとってベストな治療につながります。
また医療は日々進化しているため、新しい装置や薬剤が開発されると診療放射線技師も一から勉強して新たな方法に対応する必要があります。そのため、働き始めてからも勉強を苦にせず、新たな知識を習得し仕事に活かす過程を楽しめる人にも向いています。
まとめ
近年、体内に注入された放射性医薬品への臓器による代謝のはたらきを画像で見ることで腫瘍を検出できるPET検査をはじめとした核医学検査の発展や、半導体を活用して高画質の画像を撮影できるフォトンカウンティグCTの開発など、診療放射線技師が関わる医療分野は急速に進化を遂げています。最新医療についていくために勉強するのは大変そうですが、渡邊先生によると「そこも診療放射線技師の楽しいところです」とのこと。
最新の高度医療を支える診療放射線技師に、今後も注目です!