大切な家族が亡くなるのは悲しいですが、最後は自分らしい姿で送り出してあげたいですよね。そんな思いに寄り添う取組みとして、近年注目を集めているのが「エンゼルケア」です。エンゼルケアの目的や具体的な内容について、エンゼルケアを研究している看護師の木村先生に伺ってきました!
今回お話をお伺いした人
森ノ宮医療大学 看護学部 看護学科
助教/看護師 木村 淸子先生
そもそもエンゼルケアって何?
エンゼルケアは、故人に対して行う死化粧、保清、感染予防のための処置をさします。亡くなった後にただ死後処置をするだけでなく、できるだけきれいな姿を保ち、着用する衣服や施す化粧でその人らしさを表すことで、尊厳を守ります。
また、故人のご家族にとってもエンゼルケアは大切な役割を果たしています。ご家族の中には死に目に立ち会えなかった、死を予期していなかったなど、様々な要因でショックを受けている方が多くいらっしゃいます。故人の生前の様子をご家族から聴きながら化粧をすること、可能であれば手を拭いてもらうなどエンゼルケアに参加していただくことは、ご家族が故人との思い出を振り返る時間をつくることでもあるため、その方自身の悲嘆のケアにもつながります。実際に、エンゼルケアによって故人の顔が穏やかになっていく様子を見届けたことで救われたというご家族の声も多く上がっています。
エンゼルケアは病院と葬儀会社でどう違う?
エンゼルケアは病院の他に葬儀会社でも行われていますが、役割や内容に大きな違いがあります。
まず病院で行われているエンゼルケアは看護ケアの延長であるため感染予防を目的とした体液・内容物の処理、家族ケアを実施します。故人の生前の姿を保つ化粧や着替えなども行っていますが、エンゼルケアの実施状況は病院で行える範囲によって異なります。またエンゼルケアは保険適用ではないため費用や内容により病院ごとに費用は異なります。
それに対して葬儀会社で行われるエンゼルケアは、故人の尊厳を保つことや、葬儀などの手続きをサポートすることに重きを置いています。ご遺体の腐敗を防ぎ常温で10日~2週間保存できるようにするエンバーミングは葬儀会社でしか行われておらず、化粧や整髪もご家族の要望に寄り添った柔軟な対応をしてもらえることが多いです。また葬儀会社でのエンゼルケアでは葬儀費用とは別に、湯かんやエンバーミングを行う場合10万円以上の費用が発生する可能性があります。
看護師が語る!患者さん・ご家族に知っておいてほしいこと
故人のお見送り準備の段階でご家族からよく言われるのが、「故人が生前何を好きだったのか分からない」という言葉。最近では終活をする人が増えましたが、生前好きなことや趣味を周囲に発信しておくことで自分らしさが伝わる形で送り出してもらえる可能性が高まります。
また、看護師などに相談できる状況をつくっておくことも大事です。患者さんが亡くなった後はすべきことが多く、何がベストか分からなくなることがあります。そんな時、ご家族の意向を汲めるようコミュニケーションを取ることも看護師の仕事の一つなので、気軽に相談してみてください。
まとめ
木村先生によると、「看護師は患者さんが亡くなった後、退院までの時間が限られている中ですべきことが多く、エンゼルケアについてご家族と話す時間を十分に取れないことがある」とのこと。そのため生前に本人やご家族から意向を共有しておくことが大切です。
みなさんも終活の一つとして、自分がどのように見送られたいか、家族をどのように見送りたいか、考えてみませんか?